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お客様のニーズは1つだけ?~冬の海中を360度撮影~

この『浮力調整器』の開発のきっかけは、『スキューバダイビング』の際の『カメラ撮影の困りごと』からでした。でも、ダイバーだけでなく、他の方々にも役に立つのではないだろうか?
まだまだニーズを限定する段階ではないということで、『他の方々のニーズを知ろう』ということになりました。

様々な業種の方の海中撮影のお困り事は?

会社チームメンバーの発想だけでなく、違う業界の方の着眼点や発想、ニーズを幅広く知ろう。『実はこんなことで困っているが、諦めている』という課題は、お客様はふだん口にしないのではないか?できるだけ素直にお聞かせ願おう。

ということで、宮城県の宮城産業技術総合センターの幹部の方々に浮力調整器を説明し、『これなら、こんな業界でこんな業務に役立ちそう』とご意見やアイデアを頂きました。

海藻の株を植え付けたブロック、ウニから守るために網で囲っています

・・・、数日後、宮城産業技術総合センターから連絡があり『気仙沼水産試験場で海中の様子を普通のカメラで撮影している。課題がありそうなので、聴きに行きませんか?』という話を頂き、水産試験場へ。水産試験場では、試験室を見学させて頂きました。実験用の水槽がたくさん並んでいます。
その中でウニの水槽がありました。ウニが海藻を食べ尽くす『磯焼け』が問題になっており、水槽で様々な試験しています。
この時、ニーズとして出てきたのが『カメラを沈めて、藻場のウニの個体数を数えられないか?』というもの。現状はダイバーが潜って数えているがコストが高い、また船上から箱メガネを使うと透明度悪いと確認が難しい、などコストや労力がかかっている。これを360度カメラを浮力調整しながらうまく沈めていけば、個体数調査に使えるのでは?という発想です。まずは実験的に水槽のウニを360度カメラを沈めて撮影し、個体数を数えられるのでは?となり、やってみました。

360度撮影し、ウニの個体数を数えられないか?
360度撮影から切出した画像

既存のカウンターアプリで大雑把に数えてくれた。完ぺきでなくても、素早く試して、お客様の声を聴いて、次にまた改善する。深く考え、じっくり考えることが苦手になってきたおじさんは、ちょっと作って、ちょっと試して、ちょっと改善する、その動きがデザイン思考。『新規事業開発研修』の成果です(笑)
個体数の確認ができそうだということを、後日、試験場にご報告。

既存のアプリでナンバリング

お客様も仮説を立案

その後、しばらくして水産試験場から、メールが来ました。
『海中にブロックを投入する、ブロックは上面を4つに分けて、それぞれ形状を変え、海藻の株を植え付ける。形状によって生育状況の差を見る実験。その海中投入、設置を撮影してほしい』というもの。ウニに食べられないように海藻の株を網で囲んだ実験用のブロックです。
360度カメラTHETAならカメラアングルを気にせず撮影できるので、船上から投入して記録できそうだ、と実施することになりました。
ただですね、1つだけビビる事が。それは『真冬の海』ということ。
雪や雨が降ったら、と挫けそうなりますが、プールでの体験ダイビングでは検証の役に立たなかったリベンジ、頑張ろうと鼓舞して、いざ冬の海へ。

お客様の検証へのお役立ち

当日は漁師さんも漁に出ない荒れた日。検証参加者は水産試験場や漁協だけではなく、大学関係者など幅広い。
海藻の株を植えたブロックは1m四方のコンクリート、厚さ約25cm、重量1トン、かなりの作業になります。

☟をクリックすると、海藻の株植えの360度画像が見れます。

このブロックを積んだ船は大きいので、カメラを投入しづらい。ということで小型ボートに乗って撮影です。ロープでブロックを投入している船に小型ボートを近づけるのですが、うねりと強風で、ボートは揺れる。そのため短時間での撮影となりました。
THETAに水中ハウジング、浮力調整器、オモリをセットし透明なストラップを付けてゆっくり降ろしていきます。
ブロックを置いた海底は3m程度の深さ。タイマーをセットし静止画撮影、撮り漏らしがないように動画も撮影しました。

撮影結果

浮力調整をしてゆっくりとカメラを降下させ、動画に適した映像が撮れたのですが、改善点(うねりへの対応、シャッターモードの設定)もありました。
水中映像の様子はこんな感じです☟

お客様は自身の課題についてどう評価したか、お客様の声をご紹介します。①現状のカメラでは水中の撮影ができなかったが、360度カメラで全体が写り、ブロック部分の撮り逃がしがなかった。
②とてもきれいに写っていたので驚いた、レポートに使えるので有難い。
③ブロックの投入作業と荒天で慌ただしかったが、天気が良い日に落ち着いて撮影すれば、更に良い映像が撮れそう。
④潜水してウニの移植や海中造林作業をする時、浮力調整器が使える。
⑤活動内容を漁業者が小学生に発表するので、この映像を使用しよう。

まとめ

感謝の言葉も頂き、またダイバーとは違うニーズも見えてきました。潜らずに船上からの海中撮影、海中/海底の状況把握のため広範囲での撮影、など業務上のニーズです。それまでレジャーでの用途やアイデアが多かったのですが、ニーズを幅広く捉え検証することを学んだ1日でした。
(ハ、ハ、ハクション!)

writer M.I.

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