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春の匂いはねずみの記憶

私が小学1年生の時のお話。

ある日朝起きると庭に衣装箱が捨てられていた。

「ねずみがいたのよ」

母は言う。

電気を消すとカリカリカリカリ。

電気を点けるとシーン…

点けたり消したりを繰り返して遂に居場所を特定した母。

衣装箱ごと庭に投げ捨てた。


2日前。

習い事へ行く途中私は側溝でまんまるい小さなグレーのねずみを見つけた。

そっと両手ですくってポケットに入れた。

習い事が終わったのは日もすっかり暮れた頃。

帰り道ポケットに手を入れると噛まれた!!

ねずみって夜行性だからね。

帰宅した私は母に嘘をついた。

明日学校でいるから箱と手袋が欲しいって。

母は箱と手袋を用意してくれた。

手袋をしてポケットのねずみを箱に入れて蓋を閉めた。

私は朝がすごく苦手でその日も何度も起こされてやっと起きて急いで用意して学校へ行った。

………ねずみ。忘れてた。

昼休み学校を抜け出して家へ帰った。

母が用意してくれた発泡スチロールの箱を食いちぎってねずみは箱から脱走していた。


母に聞く。

ねずみ見た?

見たよ。小さくてグレーの可愛いのだったわ。

(それ、私が拾ったやつだ。)

私が拾ったねずみは2日後には自然に帰って行った。

めでたしめでたし。


数年前母と春の夜道を歩いていた。

木が芽吹くいい匂いがするね。

お母さんこの匂いダメなのよ。

どうして?

ねずみを思い出すの。昔ね部屋にねずみがいて外に捨てる時窓を開けたらこの匂いがしてそれからダメなの。この匂いはねずみなの。

(お母さんごめん。そのトラウマの原因私だわ)

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