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M&A 売却のタイミングとは

お世話になります。
スタートアップスクエア株式会社の恵島です。

いつもTwitterでは毎日自身の経験に基づいた出口戦略・経営論を発信しております。

本日は以前開催したプライベートセミナーの書き起こし+解説記事となります。

テーマは

『M&A 売却のタイミングとは?』

です。

具体的にM&A 売却を検討している方や、まだ検討はしていないが興味がある方に是非見ていただきたい内容です。

以下、約6000文字の文字起こしと12分の動画になります。

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セミナー動画



以下、書き起こし+解説になります。

1.M&A 売却の最適なタイミングとは?


①自分が抜けても会社を成長させ続けられる役員が育った時

M&A 売却のタイミングは私の経験から話すと役員の成長度合いですね

私が抜けても会社を成長させ続けられるくらい役員が育った時が、私が会社を売るタイミングでした。

元々、IPOやM&A売却を頭に入れて経営をしていました。
それもオーナー社長が会社から抜けるという形を想定していました。

そのため、私が抜けても問題なく会社が回るように、大きな裁量を与えることで役員の成長を促進させられる組織をつくっていました

私の場合だと当時は既にマレーシアに移住していましたが、3人の役員に経営を任せることにしました。

任せるとはどれぐらい任せるかというと、彼らの給料も彼らが決めるし、事業や採用の戦略も会社経営に必要なことは全て任せていました。大きな裁量を与えることで、役員陣の成長を促進させました。

しかし、経営における全ての裁量を与えてすぐに1.5億円あった営業利益がゼロになりました。
そこで感じたことは、まだまだ当時の役員陣が経営するには経験も知識も足りなかったんだろうな、ということです。

そこで私が、「もう一度戻って私が経営をして立て直す」と話した時に一人の役員が「もう1年間だけやらせてくれ」と言ってきたんですよね。
私がM&A売却をした後に社長を任せようと思っていた役員でした。

彼からは「自分たちのやり方が悪かった。もう一度やらせてくれ」と言われまして、かなり本気の顔をしていたのでもう1回やらせることにしました

自分が戻れば1.5億くらいはすぐ戻るイメージがありました。
何が悪かったのかも分かっていましたし。

ただ、彼の本気度を買い、もう一度役員陣に社長権限を渡して次年度に突入しました。すると次年度には1.5億円の利益まで戻ったんですよ。

そこで感じたことが、当時の役員陣は1年で0から1.5億円の利益まで戻した、私は数年間の積み上げで1.5億円の利益をつくった、私が戻るより役員陣に経営を任せた方が今後の成長曲線が上がるだろうと。

私が抜けても成長し続けられる組織という、まさにM&A売却をするのに理想な組織状態になっているタイミングでした。

理想の売却タイミングだと考えられるようになったタイミングで、自分が会社を去る方法を考えました。そして、次に考えたのが会社の売却です。

会社の売却を深掘りして調べると、「MBO」という形を知りました。
これなら、私がファンドとして再投資することで私も間接的に株主として彼らの成長を見守れるということで、この形を取りました。

そして、私が抜けても自走できる役員陣がいるとはいえ、まだまだ経営の経験値は少ないので、安心できないところもありました。
そのため、プロの経営者としてファンドを入れました

会社を売ることを考えた際にやってよかったことは、自分がいなくても安心して会社を任せられる状況を作ることを常に考えながら経営をしていたこと役員陣の成長度合いに敏感になりそのタイミングを逃さなかったこと、でしょうか。

また、オーナー社長が卒業するとなった時に、より社内での団結力が強まった感覚もありましたね。これも組織として強くなっていたからだと思います。

自分が抜けても会社を成長させ続けられる役員が育った時が会社売却に最適なタイミング。
そのためには、役員の成長のために大きな裁量を与えること、失敗しても新たなチャンスを与えること、役員の成長具合を敏感に察知することが大切。

②成長曲線を描けて利益が出ている時


実際にM&A売却をして、「その売り方が良かったのかどうか」という振り返りがありますが、最近ファイナンシャルアドバイザーをしていて、やはり会社を売るタイミングはすごく重要だな感じています。

私は会社の組織がしっかり出来ていて、かつ利益が1億5000~2億弱くらい出ていたので、非常に良い企業価値をつけていただき売却をすることができました。

しかし、ただ「利益が出ている」というだけではなく、「成長曲線を描けている状態で利益が出ている」ことが大切だなと思います。

私の場合は、一度利益が下がっていて、そこからV字回復している状態だったので非常に良かったんですよね。売上が今後も伸びていく見立てが立つかどうかは売値に大きく影響しますから。

また、当時は500億円くらいの市場規模のうち20億円くらいしか取れていませんでした。そして、競合を潰し切ったタイミングでもありました。

利益計画の成長が右肩上がりに進んでいて、大きなマーケット狙っているということを誤らないことが重要だなと感じています。

上昇トレンドの状態で利益が出ていて、これから更なる成長の見立てがつく状態であること。
また、大きなマーケット狙っており、競合と比較した際に明確な優位性を持っている状態であると良い。

③手残り5億円以上の売却ができる時


私がM&A売却をした時は、営業利益が1.7億円程度の時でした。
それぐらいの金額がついていると企業価値で12億円くらいになります。
そうすると税後で7~8億円くらいが入ってきます。

ここで私が非常に良かったなと考えているのが、手残りの金額です。
手残りが5億円未満だとちょっと寂しいなと感じてしまったんですよね。
毎年1500万ずつなくなると考えると、35年弱で無くなってしまう。

当時41才だったので、76歳くらいで貯金が尽きる計画になるんですよね。

貯金が尽きるまでに別のビジネスをするんだろうとは思っていたのですが、
自分が元気に生きていそうな年齢の時に、M&A売却により得られた資金が底をつくことが確実になっていることが分かると心細い感じがしてしまいました。

M&A売却をした時のご自身の年齢にもよりますが、個人的には最低5億円以上の手残りが残るような売却は重要かなと思いました。

また、手残りが5億円を超えると利率の全く異なるプライベートバンカーが付いてきて、尚且つそこから情報が入ってきます。ここで得られる情報は一部の人しか知り得ないもので非常に貴重です。

5億円を超える手残りが得られると、このようなオプションがついてくるという点も大きなメリットでだと思います。

M&A売却をした時の年齢にもよるが、最低5億円の手残りが残る程度の売値がつくタイミングが、今後の生活を考えた際に安心できるライン。
また、手残り5億円を超えると利率の異なるプライベートバンカーが付く

■売却スケジュール。意思決定から着金までの計画遂行


M&A売却をやったことがある人とない人で一番ギャップがあるのは、スタートしてから終わるまでの期間が長いということです。

どれくらいの期間がかかるのかを認識した上で、M&A売却の意思決定をすることが大切です。

10億円規模のM&A売却だと、やると意思決定してから終わるまで1年間ぐらいかかります。

M&A売却の意思決定をしてからディールが終わるまでの1年間は基本的には売上が計画を下回ってはいけません。事業計画の達成が必達となります。
特に売上の急激な減少や、売上顧客の上位10社に大きな変化などは絶対に避けなくてはいけません

買い手心理になると、デューデリジェンスが始まってから当初計画していた目標売上の未達月が出ると心配になりますよね。

デューデリジェンスは、その会社が未来に利益が取れるかを見ています。

未達月が出ると、「この会社の売上計画は何のあてにもならない」と思われてしまいます。そうなると売却額にも大きな影響が出ます

1年間事業計画の達成に耐えられる状況を作ることが大切ですし、逆を言うと先1年間計画の達成が怪しい状況で意思決定をすることは避けたいですね。

1年間事業計画の達成に耐えられるタイミングでのM&A売却の意思決定が望ましい。特に売上の急激な減少や、売上顧客の上位10社に大きな変化などは絶対に避けたい

2.業績が右肩上がりの時もう少し時間をかけて「さらに高い価格で売却したい」という欲は出なかったか?


■現金の価値。今と将来の価格を比較する。


性格なのか分かりませんが、私は「出来るだけ高値での売却を目指す」というよりは、自分の必要な金額を出来るだけ早いタイミングで確実に現金化できれば良いという思考でした。

仮に出来るだけを高値で売却することを優先した結果、50歳になって20億円を得られるとします。一方で、40歳の時に売却すると得られる金額は10億になってしまう。

という状況に対して、私が考えることは、50歳での20億売却の方が金額は2倍高いが、40歳での10億売却の方が5倍ぐらいの価値があるように感じていました。

70才を超えて金銭的な心配をせず自由に生きられる人は比較的多くいます。

40年間勤めて資産運用も計画的にしていたという人は結構な資産を持っていることがあります。でも70歳になって数十億円持っていても楽しくなさそうだなと私は思ってしまったんですよね。

40歳から金銭的な心配をせずに自由に生きられる人は少ないと思います。
私はそこに対して大きな価値を感じました。

その意味では「今得られる現金の価値」と「将来得られるであろう現金の価値」を比較することが大切です。

それも単純な金額差ではなく、「そのお金」が「その時」にあることで「何が出来るか」という価値も考えて比較することですね。

利益が出ているから相手が欲しがる、利益が出ていると手放せない、という状況になりがちなので難しいところではあると思います。

しかし、経験の短い経営者なら手放せないかもしれませんが、経営歴が10年以上になると、今の利益が向こう3年続くと考える人が少ないと思います。

直近の約10年を考えると様々な危機がありましたからね。

例えば、リーマンショック、東日本大震災、コロナなど、自分たちの力ではどうにもできない危機的状況はいつでも訪れるということを考えると、売却の条件が揃っているのであれば、利益が出ている相手が欲しがっている時に売ろうと考えることが自然です。

「今得られる現金の価値」と「将来得られるであろう現金の価値」を比較することが大切です。それも単純な金額差ではなく、「そのお金」「その時」にあることで「何が出来るか」という価値も考えて比較すること。

今の利益が向こう3年続くと考える人の方が少ない。直近の約10年を考えると様々な危機があったはず。

3.そうなると、業績のトップラインの判断は難しくないですか?


■運と自助努力。後悔しない目標設定と計画


やはりこのようなものは運が半分だと思います。
しかし、半分は自助努力でできるためそこに集中するんです。

自分がコントロールできるところはコントロールするために努力をする、運に任せなくてはいけないところは運に任せるという感じでしょうか。

外部環境が100%穏やかであり、事業成長において懸念がないところで売ることは誰しも出来ないことだと思います。

自分がコントロールできる状況の範囲内で、「このような条件になったら売る」と考えるしかありません

その後に外部環境の変化があり、仮に悪い方向に進んでしまったとしても、自分のできる範囲のことをしたからそれで良いと考えることです。

知人に上場した日が9.11の日で未だに株価が上がらないという人がいます。
そのような外部環境の悪い変化を考えると何もできないですからね。

どのような状態になった時に、どのような金額で、どのような目的のために売るかを決めておくこと、そしてそのために自分ができることは最大限することが大切ですね。

そうすると後悔することがないんですよね。
売却するタイミングが良かったか悪かったのかを決めるのは経営者です。
経営者が過去を振り返って決めることなんです。

良い悪いの判断基準は何かと考えると、後悔しないかどうかだと思っています。

そして、後悔しないとは何かと考えると、あらかじめ自分がコントロールできるところに対してはやれることやり切りましょうということです。

誰かが、あと2~3年待ったら3倍の値段で売れたのにと言うかもしれませんが、それに対してどう考えるかは当事者だけです。

自分の中では何が起こっても「こうすれば良かった」と言わないと心に決めるんです。そして、あのタイミングが最高だったと自信を持って言えるくらいの準備をすると言うことです。

■自分がコントロールできるところはコントロールするために最大限の努力をするあのタイミングが最高だったと自信を持って言えるくらいの準備をする
■M&Aが良いか悪いかを決めるのは経営者。自分の中では何が起こっても「こうすれば良かった」と言わないと心に決める

4. 最後に


ここまで動画と文章読んでいただきありがとうございました。
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そして、最後に恵島に聞いてみたい質問大募集します。
経営のこと、個人のキャリアプランのこと何でもウェルカムです。
お気軽にメッセージお待ちしております。


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