Fabric Tokyoさんから学ぶ、D2Cのマーケティングや組織づくりへの考察メモ
「D2C」がアツい
(念の為)D2Cとは、「Direct to Consumer」の略で、自社で企画・製造した商品を、自社の販売チャネルで販売するモデルのこと。
海外では創業3~8年のD2Cブランドが、年商150億〜300億まで急成長しているそう。有名なところで Warby ParkerやEverlane、Away、Casperなどが挙げられます。
日本におけるD2Cの代表格であるFabric Tokyoさんが、私の大好きなOMO的な世界観をむちゃくちゃ体現していると感じたので、改めて私の言葉で捉え直しをば。普通に色んな所で書かれてることとそんなに変わらないと思いますが、あくまで解釈の一つとして。
参考)OMO
オンラインとオフラインの融合「Online Merges with Offline(OMO)」とは 日本では昨今、「中国ではモバイルペイメントやシェアエコノミーが普及している」という報道が目立ちますが、その背後には中国のデジタル環境の急激な進化により、社会とそこに住む人々の内面にまで変化が及びつつあります。
Fabric Tokyoさん、東京で店舗を順当に拡大し、最近は大阪にまで進出しました。もともと名前は知っていましたが、正直こんなにセクシーな会社だとは思っていませんでした。下記スライドは眺めるだけで本当に参考になります。
特に大好きなスライドは下記です。
中でも「店舗をテックアプローチで作る」って言葉にしびれます。
1. アクセスデータを元にして、アクセスの多い地域/売れ筋など確認できる
2. その場で買わなくて良いからこそ、店舗の面積は最小限で済み(在庫などを抱える必要がないため)、かつ定員は押し売りをしなくてよく、本気で顧客の役に立つことを考えれば良い
などなど、超面白い(少し解釈も含まれますが)。正直D2Cというと、リアル店舗よりもECが主流なイメージもありますよね。ただ、FabricTokyoさんはリアル・デジタルを融合して一つのブランド体験をうまく作っており、むしろD2Cのサービスの本質は、リアルも含めることなのでは、と感じさせられました。
座組としてはフーマー(参考: https://trillionsmiles.com/future/hema/)とも少し似ていますよね。
フーマーは正しくはEC、ネットスーパーの部類に入ります。24時間注文OK、配達は8:00~21:00の間で、配達時間内に注文すれば、30分以内に届けてくれます。(時間指定もOK)
上海の街中に18、中国全体で約59、ECの倉庫があり、倉庫から3㎞圏内なら配達が可能なんだそうです。(2018年7月現在)
この倉庫ですが、会員店という名前になっていて、フーマーのユーザなら通常のスーパーのように直接行って買い物をすることも可能になっています。これ、どういうことかというと、「ECだと鮮度や品質が不安、というユーザが実際に倉庫に出向いて品質を確認できる」ということなんです。
個人的に、結局ブランドとしての価値が高まる(もう少し私の言葉でいうと、顧客のロイヤルティが高まるきっかけを与える)のはオフラインでの接点だと思っているので、デジタル側でオフラインにリードし、オフラインでガッツリハートをつかみ、デジタル側で関係性を維持していく、という座組がハマりやすいのもいいですよね。
D2Cだからこその店舗のあり方
また、「モノを売らない店舗」という立ち位置も面白いです。
先程の、「その場で買わなくて良いからこそ、店舗の面積は最小限で済み、かつ定員は押し売りをしなくてよく、本気で顧客の役に立つことを考えれば良い」という点につながるからです。下記2点に分解してそれぞれ見てみます。
1. 敷地面積減少による、コスト削減
2. 店員が押し売りしなくて良い、単にお客さんの役に立つことだけ考えられる
1はビジネス的に超面白いですよね。結局店舗が持つべきファンクションは「採寸(・型決め)」と「生地選び」なので、各スーツ×各サイズを置いておく必要がなくなるんです。バリエーションを表示する上では生地だけを置いておけば良いですからね。(&実店舗画像でしか見ていないのですがおしゃれで素敵です。)
ただ個人的に注目しているのは2の側面です。
店舗が「売上責任をもたない」ということですよね。トータルとしてFabricTokyoの売上が高まっていれば良い、という状況を作っているということなので、店舗における採用基準や育成方針、そして定着率もおそらく変わってくるはずです。
D2C店舗の定員は、「営業」ではなく「カスタマーサクセス」と捉えたほうが良い(気がする)
マーケティングの観点上、店舗はロイヤルティを高める最大のポイント。アルバイト等ではなく、おそらく正社員できちんと接客ができる人にならないといけないんですよね。※アルバイトがだめ、というわけではないのですが…
もう少しちゃんとビジネス的に見ると、店舗におけるKPIから見るとよりイメージが付きやすいと思います。下記の部分。
KPIは売上・粗利から、LTVやチャーンに変えなければいけないという壁
※ 余談ですが添付スライドの、箇条書きの一文一文重みがすごいですよね笑 大企業のデジタルトランスフォーメーションを担ってきた身としては全文語れるそうですが、今回は「KPI」に着目。
結局ビジネスの形が、「売り切りのモノ売りモデル」ではなくいわゆるSaaSのThe Modelの考え方と近くなってくるはずなんですよね。トランザクション系のサービスですが、継続・リテンションがビジネスの鍵と捉え、売上を「(単発の)セッション」ではなく、「(長期の)UU」で見ている点は、デジタル化が進む世の中における一つの重要ポイントだと捉えています。
The Model的に捉えると、店員は営業の人ではなくカスタマーサクセス(CS)の人です。「自社」というプロダクトにどうオンボードさせるか、定着させるかがミッションになるので。(超勝手な解釈ですし、デジタル側と役割分担もありますが…)
下記の記事とか見ても分かるのですが、CSって結局プロダクトの司令塔になりうるポジションなんですよね。一番顧客と接しており、継続率・受注率に明確な貢献ができる、というポジション。
参考: 「私を採用するか判断する資料」を作って社長面接ーーReproのカスタマーサクセスに全てを賭けた男の話
https://www.wantedly.com/companies/repro/post_articles/164646?fbclid=IwAR1R6xtNNZMDLw5gP0Fg0oljj0ZpMI8Cu2h1QoNzJps5Ukxz_xkKf5m9rpk
そういった意味で、「会社全体のビジネスを考えて動ける人」が店舗で接客していても、全然オーバースペックにはならない可能性があるんですよね(むしろそういう人が業務定義とかガチでしてみてほしい)。
とはいえ全ては望めないので、(「セッション単位の売上」というわかりやすいKPIではなく、)きちんとリテンションを取れる接客ができる、長期で会社の売上を考え動ける人が必要になります。
そうなると、かなり見えづらい指標を追うことになるので、組織という面では「自立性」や「ビジョンへの共感」とかが大事になりそうですよね。売っている服が好きとかでない分、通常のアパレル会社の採用よりも難しいと思います。
またデジタル前提なので、PDCAを回し、自分たちの業務をアップデートし続ける、という点にアレルギーがないことも大事になってくるはずです。
うん、いろいろ違う気がする。
最後に
個人的に上記で記載した「継続・リテンションがビジネスの鍵と捉え、売上を「単発のセッション」ではなく、「長期のUU」で見る」というSaaS的な発想が、トランザクション系と捉えうるサービスにも展開されていくのはとても嬉しいです。価値提供に対して本質的になるし、結果「会社視点に立ち」「顧客の役に立つこと」がダイレクトに売上につながっていくモデルだからです。人の成長にもつながるし、仕事のやりがいにもつながる、良い座組みだなぁと。
もう少しちゃんと言うと、本来トランザクション系サービスの売上も、パレートの法則的に「80:20」になっているはずなんですよね。
パレートの法則:
経済において全体の数値の大部分は全体を構成するうちの一部の要素が生み出しているという理論であり、80:20の法則、ばらつきの法則とも呼ばれる
重要な一握りの顧客とつながり、如何に良質な関係性を創造・維持していくか(アカウントベースドマーケティング的な発想)が大事になる。この考え方が普及すると、仕事も本質的になり、良い世の中が来る気がするなぁと感じた今日このごろ。
「良い事業・サービスは、良いチームに宿る」と考えている身からすると、仕事が楽しいことは世の中にとって必要なのです。
そんな意味でも、FabricTokyoさんむちゃくちゃファンになりました。頑張ってほしい。全然使わないですがスーツ買うときは絶対お世話になろうと思います。
いつもに増して拙いnoteですみませんm(_ _)m
改めて見るとD2CとかOMOとか、キャッチーなワードばかり並べる感じが頭悪そうですね。
D2C、立ち上がっている会社を面白いと思うものの、誰かが「D2Cはじめました!」と言っていたら立ち上げ期を乗り越えられる気が全くしておらず、そのあたりはぜひいつか成功者に話を聞いてみたい。市場理解・業界としての負、想いなどいろいろないと難しいんだろうなと。
諸々参考: http://yuichiro-mori.com/2018/10/points_of_d2c/
Twitterももしよければ。
なお、OMOについての記事は下記御覧くださいm(_ _)m
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