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「ぜんぶ運命だったんかい -おじさん社会と女子の一生」(笛美)

笛美さんを知ったのは、「笛美」が「フェミ」からきているなんてことにも気づけないくらいフェミニズムも何も知らなかったとき。検察庁法改正法案に対して民主主義存亡の危機感をびしびしと感じていたけれど、どうしたらいいのか分からなかったとき。さすがに動かなければ、これは政治的な手腕の巧拙の問題という裁量レベルの話ではなくて、人事権を掌握して三権分立を脅かす憲法レベルの問題だという危機感から、ツイッターを始めたり、Choose Life Projectを視聴したり、一市民としてどうにかしなければともやもやしていたとき。「#検察庁法改正法案に反対します」というツイッターデモに出会った。このツイッターデモによって検察庁法改正は阻止された。このツイッターデモを起こした張本人が笛美さんだった。それ以来、彼女のツイッターをフォローすることによって、今度はフェミニズムというものを知るようになった。

今の日本の現実は、おじさん社会=既存の社会=女性は家事育児をして家庭を支える、が大前提。その上で、女性活躍の旗印の下、女性も働きたいのであれば、働かせてあげるから自分でプラスアルファの努力をしてどうにか両立して。結婚も子どもを産む時期も全部自己責任で頑張ってどうにかして。仕事内容は既存の男性社会に合わせて働くこと。専業主婦に支えられて仕事だけやっていればよい男性と同じだけ働くべし。そして価値観も評価軸も既存の男性社会のものに従うほかない。え、無理じゃない?

と、気づくまで、笛美さんは、ほんとに普通に、既存の価値観を疑わず、それにあわせにいくのが当然という行動をしていたことが赤裸々に記されている。飲み会でお酌する、セクハラを笑って流す、男性を持ち上げる、ばりきゃりとして深夜残業・休日出勤が当たり前、そんな生活をしていると結婚できないぞと言われる、なぞの義務感から婚活を頑張る、でも全然響いてこない、アイデンティティなくなる、20代後半になると子どもを産める時間について追い詰められる・・・ こうゆうひと通りを経験し、こんな時期に海外赴任なんてしたら婚期逃すかも…という一抹の不安を抱えつつ30歳を過ぎて仕事の関係でヨーロッパのF国(フィンランドかな?)でインターンに飛んだそう。

そこで目からウロコの経験をする。自分の意見を言う、男女関係なく個人として振る舞う、会議前の事前の根回しなんてない、女性が男性に媚びる必要ない(そんなことしなくていいんだよとその男性に直接言われる)、気乗りしない飲み会にはシンプルに「NO」といえばいい(それで相手は不快になったり理由を詮索したりしてこない)などなど。息がしやすい、生きていて楽。

何かが根本的に違う。社会の構造だ。社会をなす個々人の意識だ。どの国でもジェンダー格差はあるし、この国でも最初からそうだったわけではないはず。でも一人ひとりが、差別はいけないとか、他人を個人として尊重するとか、人にはそれぞれの人生があるのであってこうあるべきという枠はないんだとか、根本的なところを共有していることは間違いない。

日本に戻る前の鬱屈とした気持ち。わかりすぎる。だって知ってしまったから。そして日本がそう簡単に変わらないことは想像に難くないから。でもとりあえずは、当面は、日本で生きるわけで。でもおじさん社会が幅をきかせている限りこの状況は変わらない。だから少しずつでも変化していくようにするため、笛美さんは動き出した。私も、次世代の女性(そして男性も)が同じような苦しみを味わわずにすむようにするため、そしてやっぱり自分たちのためにも我々世代が動かなければならないな、男女問わず一緒に変えていきたいなと思う。



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