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『汝、星のごとく』を読んで

数日前から読み進めていた、
『汝、星のごとく』を読了。

(※ちょっとネタバレ含みます)

前々から読みたくて、
やっと読めた!という感じ。

冒頭、
最後のシーンがプロローグで明かされる。
(『流浪の月』と同じ構成)


そこから、ヒロインの暁海あきみかいという男の子の痛ましい過去が明かされていく。

凪良ゆうさんは、生きづらさを抱えた人の関係性を描くのが抜群にうまいと思う。

そして「普通の呪い」から外れた物語を紡げる人だ。
作中、胸を鷲づかみにされる台詞がたくさん出てきて、そのたび書きとめたくなった。


正解なんてない世界。
全然優しくない世界を暁海たちは泳いでいく。

わたしにとって、愛は優しい形をしていない。どうか元気でいて、幸せでいて、わたし以外を愛さないで、わたしを忘れないで。愛と呪いと祈りは似ている。


たとえば、こんな言葉とか。
愛と呪いと祈りは、確かに似ていて重たくて、誰かを愛してしまったら、ずっと背負っていくしかない。

暁海も櫂も、
幼い頃から親に振りまわされている。
自分の人生よりも先に親のことを考えなければいけない。いつもそれが「当たり前」で、そうしなければ生きていけなかった。
それはいったい何という重さだろう。


ヤングケアラーの問題を正面から書いた物語でもあった。ふたりとも呪いにも似た鎖で身動きがとれなくなっていく。
それでも、お互いの存在を星のように想っている。


「自分を縛る鎖は自分で選ぶ」


これも作中にある言葉。

その呪いにも似た鎖を、
最後に暁海は自分で選ぶ。自分で選ぶためには、選びとれる力が必要なのだ。
小説全編を通して、それを思い知らされる。
自分の人生を支えられる力が必要だということ。


青年の櫂は漫画家で、愛憎の物語であるのと同時に創作の話でもあった。

書くことに一切の忖度をするな。


この台詞も印象的。


親身になってくれる編集者の台詞がすごく良くて、終盤泣けた。

他にも泣ける場面はたくさんあるはずなのに、私にとってはその場面が一番深く胸に刺さった。


創作に対する櫂の台詞や編集者の言葉は、凪良ゆうさんの執筆に対する姿勢でもあるんだろうと思う。

だから、こんなにも心を揺さぶられてしまうのだ。
本当に、最初のエピソードから終盤の展開にいたるまでずっと目を離せなくて、内臓が抉られるような、そんな物語だった。


凪良ゆうさん、『流浪の月』も『わたしの美しい庭』も『滅びの前のシャングリラ』も全部好きだけれど、今回のが一番泣けた…


何度も反芻するように、
読み返してみたいと思う。




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