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読書note
以前からタイトルは知ってるけど、
未読の小説はたくさんある。
中山七里さんの『さよならドビュッシー』も
そんな小説だった。
冒頭から、主人公は過酷な運命にさらされる。
就寝中に火事に遭い、なんとか一命を取り留めるものの全身大火傷を負うのだ。
そして祖父と従姉妹も、同じ日に火事で亡くなってしまう。
過酷なリハビリをしながら、
遥はピアニストを目指す。
彼女の先生になる岬という青年とともに。
それだけでも充分読ませるストーリーなのに、
これは本格ミステリなのだ。
次第に遥は命を狙われるようになり、
殺人事件まで起きてしまう。
犯人が誰か気になりつつ、物語は進んでいく。
ピアノが演奏される場面は、ほんとうに音楽が響いてくるよう。
演奏者の熱量が、そのまま直接伝わってくる。
闇を振り払え。
立ち上がって、闘え。
心を揺さぶられるのは、それが岬さん自身の言葉だからだ。岬さん自身の音楽だからだ。人は誰でも強くありたいと願う。それでも予期せぬ不幸や生来の弱さから挫けることがある。そんな時、暗闇から光ある場所に導いてくれるのはすぐ隣から差し伸べてくれる血の通った掌だ。
遥は、
コンサートで聴いた岬の演奏に感銘を受ける。
それは彼女の内面をどんどん作り変えていく。
人は、ここまで強くなれるのだ。どんなに絶望しても、どんなに心が折れても、諦めさえしなければ灰の中から不死鳥が甦るようにまた雄々しく立ち上がることができるのだ。限られた者だけではなく、全ての生きる者の中にその力は宿っているのだ。
そう、きっとあたしのような人間にも。
終盤の展開は、予想していた以上に予想外で、
とても読ませる話だと思った。
最後にタイトルの意味が分かる話が好きなのだけど、これもそういう小説だ。
読了後、
『さよならドビュッシー』に込められていた意味が分かる。
そして、あらためて最初と違う感慨が胸に湧いてくる。
上質なミステリでもあるし、人生観や生き方に関する物語でもある。
何より、探偵役の岬がとても魅力的だ。
続編の『おやすみラフマニノフ』もぜひ読んでみようと思う。
(今から読むのがとても楽しみ)
読みたい小説が見つかると、まるで宝物を見つけたみたいな気持ちになる。
もうしばらく、この世界を楽しめるのがただ嬉しい。
音楽にまつわる小説と言えば、
恩田陸さんの『蜜蜂と遠雷』のスピンオフも出てたから、そちらも少し気になってる……
(『祝祭と予感』だったかな)
読みたい本を読む休日は、至福以外のなにものでもない。
普段は時間がとれない分、
またゆっくり読書を楽しめたらいいと思う。
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