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映画『レボリューション 米国議会に挑んだ女性たち』

2019年/製作国:アメリカ/上映時間:87分 ドキュメンタリー
原題
 Knock Down the House



予告編


本編


レビュー

 2018年のアメリカ合衆国選挙において、史上最年少の女性下院議員が誕生した伝説の選挙戦がありました。
 この物語は、労働者階級から出馬した4人の女性新人候補者の選挙戦(予備選)を追うドキュメンタリー作品です。

 ・アレクサンドリア・オカシオ=コルテス(以下AOC。ニューヨーク州下院)
 金融危機のさなかに家族を襲った悲劇(父の死)を契機に、実家の差し押さえを回避するためにバーテンダーとして1日18時間働くことを余儀なくされる。弟の推薦により、立候補者に名を連ねる機会を得る。
 労働環境の改善、医療制度の改善等、労働者階級の人々の生活改善のために立ち上がります。

 ・ポーラ・ジーン・スウェアレンジン(ウェストバージニア州上院)
 現職議員と企業の癒着により故郷の貴重な自然は破壊され、水質汚染までもが蔓延。石炭産業が及ぼす環境汚染を止めるため、そして友人や家族が苦しむ現状を変えるために立ち上がります。

 ・コーリ・ブッシュ(ミズーリ州下院)
 丸腰の黒人男性が警官に射殺された事件を機に、何世紀も続く理不尽な現実を変えるべく立ち上がります。

 ・エイミー・ヴィレラ(ネバダ州下院)
 娘が保険に加入出来ていなかったため、緊急医療が必要な状況にも関わらず担当医師が治療を拒否・・・。医療により確実に救えたはずの家族の命を失い、アメリカの理不尽な医療制度を変えるべく立ち上がります。

 4人の新人女性候補者は、現職に居座る「企業から献金もらいまくりの操り人形最低人間達(例えばAOCの一騎打ちの相手は、ニューヨーク在住ですらないにも関わらず、その汚いやり口で長年現職に居座り続け、1期につき300万ドルもの献金を受け取っています)」から、街や人々を守るために、ほとんど使命感だけで立候補してゆきます(また立候補の理由が何れも人間として当たり前の、しかも最低限の権利しか求めていないことが観ていてとても切なかったです)。
 そして4人とも胸に熱い想いを秘めており、政治家としての資質がどうこういう前に、まずもって人として応援したくなります。
 というか、企業から多額の献金をもらっていない時点で、間違いなく現職よりもまともな立候補者であると断言出来るわけです。

 現在の日本においては、政治は政治家が考えるものだと思い込んでいる人が多いように思いますけれども、それは大きな間違いで、政治とは本来、考えることの出来る年齢に至った全ての人が、自分や家族のために、そして他者のために考え続けてゆくべきものです。
 また、政治の話をすると「じゃあお前が立候補すれば」とか、「選挙で一票を入れる権利しかないだろ」とか、「じゃあどうしたらいいのか教えて~」などという残念な見解を、恥ずかしげもなく威張って言う人がいますけれども、政治に関しては、まずは自分の頭で考えたり調べたりして意見を持つことが、大人として最低限必要なスキルの一つではないかと思いますし、自分の考えも持たずにどうしたら良いのかを直ぐに他人に聞くというのは、一人の大人としての自覚が無いように思います。
 ちなみに選挙で一票を入れる以外にも、私たちが政治に関わることは可能ですし、むしろ選挙よりも日々の生活の中にこそ、政治的に大切な行為が存在しているのではないでしょうか。
 また、たとえ関わりたくないと思っていたとしても関わらざるを得ないのが政治というものです。

 例えば日用品の買い物。
 どのようなお店で、どのような企業の、どのような製品を購入するかが、政治に深く関わっています。
 なぜなら企業から政治家への献金は、献金を行う企業に潤沢な資金があるから可能となっている行為ですし、その資金の出どころは、企業が購入者へ商品を販売するなどして上げた利益から捻出したものだからです。
 しかしそうであるならば、逆に言えば献金問題への解決策はシンプルだということがわかります。要は自分の支持しない政党に対し献金を行う企業には利益を与えないよう心掛け、その資金源を元から断てば良いだけなのですから。
 ただ、そういったことを考えながら買い物をしている人は今のところ少数派であるため、問題はなかなか改善しないわけです。
 そのようなわけですから、投票権(選択する権利)というものが実は選挙の一票だけではなく、日常の至る所にあるということに気付くことが、実はとても大切なことであり、政治を(自分たちの生活環境を)良くしてゆくためには不可欠な事柄であるということがわかります。
 それから日用品に限らず何かを購入する際には、自分の支払ったお金がどこに流れ、どのような企業理念を持つ、どういった企業を潤すことに繋がるのかということを、常日頃からしっかりと意識し、コツコツと行動することが大切なのではないでしょうか。
 そしてそういう日々の小さな判断や決断の積み重ねこそが、実は最も重要な政治的行為であり、そういった人々の行為の集積が、その国の政治の方向性を決定づけることになっているということを、私達一人一人が常に頭の片隅に置いて、丁寧に生活してゆくことが大切なのではないかと思います。

 多くの人が「自分も政治家の一人である」という意識をしっかりと持ちながら生きてゆくことが出来たなら、社会は必ずより良い方向へと変化してゆくはずです。
 『レボリューション 米国議会に挑んだ女性たち』には、それが決して理想論などではないということが、しっかりと刻印されていました。

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