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四角形の発明とフレームの影響力

都市にいると、目に入る図形のほとんどが四角形。四角形こそ都市の象徴といってもいいくらいです。
一方、自然にあふれた田園地域には、そもそも直線がほとんどなく、四角形を目にすることはありません。

『四角形の歴史』


四角形はいかに誕生したのかを、アーティストの視点で考えたのが赤瀬川原平さん。『四角形の歴史』という本を書いています。

「こどもの哲学 大人の絵本」と題され、赤瀬川さんの思考が、ドローイングとともに記されています。10分もあれば読めてしまいますが、あたりまえすぎて誰も考えようとしなかった四角形について思考を深めています。

絵の歴史をみると、風景画が登場したのは印象派のころ、それまでは人物画のおまけとして風景が描かれた。これは、四角いキャンバスや板に絵を描くようになったため、人物だけ描くと余白ができてしまい、埋めるものが必要になったことによる。
ここから赤瀬川さんは、四角形の歴史を考え始めました。自然界には存在しない四角形、人間はいかに生み出したのか。

赤瀬川さんはアーティストならではの発想を展開しますが、それは是非本を読んでいただければと思います。

居住の空間のための四角形


私は住居を作るにあたって四角形が発明されたのではと思います。
縄文時代(前14,000年頃)には竪穴式住居が作られました。木で骨組みを組んでいて、ここに四角形が登場しています。
前8,000年頃、中東や北アフリカでは、泥レンガを使ったアドベと呼ばれる住居が作られています。このレンガは四角く型どっています。
ある程度の空間の住居を組むには、四角形にしないと安定しないということなのだと思います。

そして、現代、高層建築の立ち並ぶ都市は、四角に溢れています。


フレームの魔術


赤瀬川さんが四角形の歴史を考えるきっかけとなった四角いフレーム、これが人間に大きな影響を与えてきました。フレームに余白があると、画家は風景を描いて埋めたくなってしまう。
フレームはいろいろな場面に姿を現しています。試験の穴埋め問題もその一つ、フレームを埋めることが求められます。さらに経営戦略のような場面でも、フレームワークが重宝がられ、埋めれば戦略ができると思ってしまうのです。

しかし、フレームで把握できるのは社会のごく一部。突然、新興感染症が蔓延するといったことは、フレームの外の直線ではない世界。フレームに過度に依存すると、社会の急速な変化に対応できなくなってしまいます。


余白が生む強さ


日本画をはじめとする日本の芸術には、フレームを感じさせないものが多い。屏風絵、能舞台、茶室、いずれもも四角い空間ではあるものの、無限の宇宙を感じます。それは、本質的なことだけ存在し、後は余白になっていることからきていると思います。
余白があることで、鑑賞者は、それぞれの経験をもとに自由に感じ取ることができます。

戦略も同様に、本質的なことだけ残してあとは余白にしておく。フレームに囚われることなく、社会の変化に柔軟に対応できる強さをもつことができるのです。


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