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本作りやらかし図鑑1「汚ねぇトンボ」
2021年から文学フリマ東京に参加するようになって今回で6回目だ。文学フリマ香川にも1回参加したので、トータルすると文学フリマへの参加は7回目となる。年数にすると3年め。
文学フリマ参加を始めた理由が「本を作ってみたい」だったので、本作りを始めた歴も同じになる。そろそろ初心者扱いはしてもらえなくなるころだ。
にもかかわらず、今でも本作りの工程で信じられないやらかしをする。私はとても恵まれた環境にいて、夫をはじめとしてSNSでつながったお友達も印刷業界に明るい人が多いのだけれど、今回の文学フリマ東京39の本作りでやらかしたことをXで打ち明けたら、TLがものすごくざわついた。本当にすみません。お騒がせしております。
みんなへの啓蒙活動として、これまでに私がやった2大やらかしをここに記録します。長くなってしまったのでひとつずつ。俺の屍を越えてゆけ。
「その汚ねぇトンボをどけろ」
私は表紙も自分で作っているのだが、作るときは「GIMP」というフリーソフトを使っている。
photoshopに近い感じで、慣れるととても使いやすい。今まで出したすべての本の表紙でお世話になるくらい愛用している。
ただ、このGIMP、弱点もいくつかあって。そのなかでも大きな弱点が『トンボが入れられない』だと思う。
トンボというのは、簡単にいうと、印刷の工程で目印となるマークのこと。印刷データの四隅に重なるカギ括弧みたいなものを見たことがある人はいるかもしれない。印刷物は最初、大きな紙にまとめて印刷されてから指定のサイズに切って整えられる。このマークがその紙を切る際に仕上がりサイズを指定する役目を持つ。
photoshopやillustratorなどではこのトンボ、位置を指定するだけできれいに配置してくれる。GIMPにはその機能がない。正確にいうとあるにはあるが、印刷するときしかトンボを入れられず、データ上でトンボの表示が保存できない。なおかつA4サイズの位置に固定されたトンボしか入れられない。どうしても位置を指定したければ、データの上に自力で線を引くしかない。
というわけでGIMPで表紙を作るとトンボを入れられないのだが、印刷所さんによってはサイズさえちゃんと守って作ってくれればトンボなしのデータでも受け付けて印刷してあげるよ、というところも多い。そのおかげで、トンボなしのデータしか作れない私でもなんとかなっている。
なっていたのだ。なっていたのに。
それは、5冊めの本を作成したときのこと。
5冊めは亡くなった父親との最期の半年をつづったお看取り経験談だった。この本は書き上げるまでにものすごく時間がかかった。本を書くにあたって、父親が亡くなっていくまでをなぞる作業が自分で想像していた何倍もしんどくて、なかなか進められなかったのだ。
印刷所へデータを送る前日も6割くらいしか書けていなかった。もう諦めようかなと考えていたら、夫に「落としたらこ●す」とまっすぐなまなざしで言われたのでビビッて完徹で書きあげた。
書ききってページ数が決まらないと本の厚さが決まらない。本の厚さが決まらないと背表紙の幅も決まらなくて、表紙のサイズも決まらない。
なので当然、表紙も未完成。完徹のまま、表紙作りへと進んだ。表紙データを作ること自体は、5冊めともなれば慣れたものだった。あらかじめデザインを決めていたので確定した表紙サイズに素材を配置して文字をあしらうだけで済んだのは救いだった。
どうにかこうにか、本文も表紙も完成し、印刷所へデータを送り終わったころには締切まで残り2時間を切っていた。
なんとかなった……なんとかなった……
ヘロヘロでベッドに倒れ込んだ。こんなしんどい入稿は二度とゴメンだと思った。
ふと目が覚めた。ベッドに倒れ込んで2時間ちょっと経っていた。まだ寝たいな。でも夜に寝られなくなるかな、そんなことをつらつらと考えながらメールをチェックしたら、先ほどデータを送った印刷所から件名に「至急」とついたメールが届いていた。
一気に目が覚めてメールを開いた。
お世話になっております。●●印刷です。いただいた表紙データの仕上がりサイズ付近に配置されているトンボは、このままですと印刷に出てしまうため、トンボを全て消去したデータを再送してください。
ご返送いただく時間によっては納期が変更となりますのでご了承ください。
なぜか今回、私は表紙画像に自分で手作りしたトンボをつけていた。そしてその手作りトンボの位置がずれていて、表紙サイズの範囲に思いっきり入り込んじゃってるので、このまま印刷したら線が見えちゃいますよ、と。
印刷所さんのメールを要約すると
「その汚ねぇゴミみてぇなトンボをとっととどけやがれ」
と、いわれたわけだ。『わけだ』、じゃないっ。
大慌てでデータを開き、汚ねぇゴミみてぇなトンボを消して表紙画像を作り、送りなおした(平謝りで)。少しして「修正データは問題ありませんでした、これで進めます」と返信が届き、ようやっとひと息つけた。
この話をSNSに投稿したあと、「手作りトンボ野郎」という大変不名誉なディスりを受けた。だけど事実だからなにもいえなかった。
教訓
何年経とうが何回やろうが、しょせんは人様にモノづくりをお願いしているド素人であることを忘れてはいけない。そんなド素人は「良かれと思って」余計なことをしてはいけない。絶対に。
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