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KARTE上場から考える成功要因

先日KARTEを運営するプレイドさんに上場承認がおりました。
おめでとうございます!

弊社サービスを検討するお客様の中に、まれにKARTEさんと比較されるケースがあるためプレイドさんについて気になりつつ、調べる中で徐々にリスペクトの気持ちも芽生えました。

そんな中でプレイドさんの目論見書を調べ上場に至った要因を挙げてたいと思います。

KARTEサービスサイト:https://karte.io/
プレイド コーポレートサイト:https://plaid.co.jp/

目論見書 >
https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/nlsgeu0000053c5d-att/12PLAID-1s.pdf

プレイドさんのボードメンバーはほぼ楽天卒業生で構成。
2011年に創業し、初期はECサイト向けの受託会社だったようです。

2014年7月(4期目)にウェブ接客サービス「KARTE(カルテ)」のコンセプトを発表し 翌年の3月に「KARTE for web」をリリース。

4期目から現在までの売上はこちら。

2016年9月期には787%成長しARR約3億円。
そして毎年急角度で成長し、直近決算の第9期ではARR約40億円。

ARR40億円にたまげました。

SaaSで40億円はどれくらいのものなのかを比較するためこちらから拝借しました。
https://note.com/_funeo/n/n641b21acae76

勿論他の企業もARRが伸びていることは承知しておりますが40億円は上場SaaSのトップ10入りに入ります。2年前でもARR15億であり、上場はすでに見えていたといっても過言ではないでしょう。

KARTEの戦略

上の表を見ると、上場しているSaaSは基本的にHorizontal型でコストカットの価値提供が多く顧客数や利用者数が多いこと、と私は考えています。

「低価格で始められるため、数万社規模で導入」という方針です。

低価格をメリットとしてるので、スタートアップや中小企業から導入してもらい大企業(エンプラ)に進出していくというボトムアップ型です。(これがポイント)

一方、KARTEは逆の戦略でHorizontal型で「高単価×エンタープライズ(大企業)特化」です。顧客は大手ECサイト中心。

目論見書からKARTEの顧客単価(ARPPU)がわかるように作成しました。

※サイト数単位の課金でもあるためARPPUはサイト数で算出

47万円/月。これってめちゃくちゃ高いんですよ。しかも昨年よりあがってるし。笑

年間565万円にもなりますから相応の理由がないと導入ができません。

彼らのサービスを調べていくと、2015年のリリース当初には月額5,000円~の従量課金からとありましたが途中で方針転換をしたようです。
(参考:https://press.plaid.co.jp/data/20150803/)

私はこの「高価格×エンプラ特化」の戦略がなぜハマったかを考えてみました。

結論から言うと

・顧客相手(誰)の

・何の予算で

・どういう課題にfitしたか

が完璧にハマったからだと考えています。

<誰の財布の何の予算か>

KARTEはサイト流入してからのCVRを上げる、広告の効果を上げる役割です。利用する人は大企業のWEBマーケティング職です。彼らは自社のWEBサービス(ECサイトなど)の売上を上げるためのマーケティング予算を持っています。

私の前職オプトでは、大手クライアントのWEBマーケティングを支援しており、月間数千万円の広告予算を持っている顧客が沢山います。仮に2,000万円/月の財布を持っている顧客からすると、月40万円程のマーケティング投資はそこまで高くないことは容易に想像つきます。

これが月間数十万円の広告予算しかない顧客も対象にしていれば、サービス提供金額を落とさなくてはならなかっただろうし、開発や営業、カスタマ―サクセスのリソース・コストも膨らんだでしょう。

この顧客セグメントが功を奏しました。

ただ、これは結果論であり、私は以下のような過程を想像します。

KARTEは広告流入後のサイト施策のため、本来ならサイト改修の開発担当者の予算です。

サイトは外注している、マーケターは広告専門でサイト改善は別部署、内製していてもエンジニアのリソースがない、など自社サイト改修にマーケターがアンタッチャブルなケースがよくあります(大手にありがち)

しかしサイト内の改善がCVRに直結するためマーケターはスピード感を持ってサイトを変えたい課題がありました。

その課題に対してKARTEはサイト開発担当者ではなくCVRを上げる広告補助ツールとしてマーケターを攻め、彼らの広告予算から捻出する戦略をとりました。つまり担当者の財布をずらしたのです。その結果の「ノーコード・ローコード」の機能。目論書内でもこのように書いてあります。

エンジニアや外注による開発を経ずに、実行や検証のサイクルを素早く回すことによるウェブサイトやスマートフォンアプリの差別化などを目的として、「KARTE」を活用する企業が増えています。

誰の・どんな課題に・どのような価値提供をし・どの財布から捻出する、を突き詰めたアプローチが成功したと思っています。

(GoogleやCriteoなどの主流な広告の予算を奪うのではなく、彼らと共存する立ち位置も素晴らしいです。)

<対象者を絞りこみ定着促進>

更に、(これは結果論かもしれませんが)対象者を絞ることでツール導入~定着のハードルをぐっと下げることに成功しました。

一般的にエンプラになるほどSaaSの導入ハードル、導入後にサービス画面を使ってもらえない、使いこなせないといった定着の壁が立ちはだかります。これがエンプラを攻めるにあたり難しいところです。

KARTEはできることが沢山ありすぎて難しい、という声をよく聞きます。マーケティング上級者向けのツールです。しかし私の実体験で、EC事業者のWEBマーケの予算が大きい担当者ほどwebリテラシーが高いことが特徴です。

なぜならECを運営する企業はWEBマーケターの能力が自社売上に直結するため、規模が大きい会社ほど優秀な人材を獲得するからです。

そんな彼らからすると、KARTEを使いこなす知識のハードルはある程度クリアされると思います。また、仮に使えない人でも大手企業ほど広告代理店が周りにいますので代理店に任せればいいのです。

このように利用顧客の導入・定着のハードルも大手企業に絞ることで解消されます。(私のツイートから)

つまりKARTEの戦略は全方位的ではなく「捨てるべくところを捨てる」に振り切ることで成功した、ということが私の理解です。

書けば簡単なのですが、ターゲット・課題・どの財布か、などすべてが合致していないと成功しません。これを見つける・実行するのにどれだけ大変で勇気がいるか・・。

ただし、大手企業サイトを中心とした莫大なトラフィックデータを保持するのでサーバー費用も上がっており売上原価は11.5億円と前年対比45%も増えている、とのことです。

構造上エンプラしか相手にできないため、単価を維持・向上させながら顧客数をいかにあげていくかが勝負でしょう。が、広告業界にいた身としては、まだまだ拡大の余地があるのではないかなと思います。

プレイドさんの上場承認の翌日にYappliさんも上場承認がおり、マーケSaaSがどんどん世の中に発信されると思い楽しみで仕方ありません。

私たちも負けじとPMFのための顧客・課題・提供価値の磨きこみを行い続きたいと思っております。

それでは!

※追記※ 固定資産の敷金及び保証金2.8億円なのに平均年収800万円とあり、それも驚愕しました。笑

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