知っておきたい尺貫法にある様々な単位
四寸といわれても、いまいちピンとこない。
個人的に寸という言葉を聞いてイメージするのは、一寸法師だ。
幼い頃に一度は聞いたことがある昔話だと思うが、一寸法師のサイズは何cmかと聞かれて即答できるだろうか。
正解は約3cmなのだが、寸以外にも様々な長さの単位がある。
今さら聞けない尺貫法ってなぁに?
ほとんどの人が寸、尺といった長さの単位をなんとなく聞いたことがあるはずだ。
その場面は、建築や不動産に関わるときだというイメージも強いだろう。
この一分や一寸といった単位は、尺貫法(しゃっかんほう)と呼ばれる単位によるものだ。
1958年12月31日限りで取引や証明に用いることは禁止されているのだが、一坪のように見聞きする機会もしばしばあるはずだ。
とはいえ、いまいち馴染みのない単位なので、長さやサイズのイメージがしにくいという人も多いだろう。
この日本古来の長さや面積を測る単位である尺貫法は、尺 = 長さ、貫 = 質量と定義され、中国を起源とし古くは大宝律令の頃から使用されていた計量法なのである。
古代中国の王朝だった殷(紀元前1122年頃)の時代の遺跡から物差しが出土していることから、この頃には確立していたと考えられている。
当時の1尺は17.3cmで、これは女性が手を広げたときの親指の先から中指の先まで、または中指から手首までの長さを基準にしていたといわれている。
また、尺はアジアで幅広く使われたのだが、1尺の長さは時代や地域によって異なっていることも特徴である。
尺貫法の歴史
日本には、中国、朝鮮半島を経て単位が伝わったといわれている。
世界最古の木造建築物として知られる世界遺産の法隆寺が完成したのが607年頃で、この頃には尺が使われていたと考えられている。
ちなみに法隆寺を建立したのは、推古天皇の摂政で、遣隋使の派遣、冠位十二階、十七条憲法の制定、仏教の興隆などに尽力した、厩戸皇子(うまやどのおうじ)である。
厩戸皇子と聞いてピンとこない人でも、聖徳太子と聞くと、あぁという声が出るはずだ。
そんな聖徳太子は、実は現代も建築現場で使われている大工道具である、曲尺の単位を1尺(約30.3cm)に統一した人物でもある。
また、長さを測ったり、勾配を出すなど、計算尺のようにも利用できる、差し金を考案したため、大工の神様とも呼ばれていることは意外と知られていない。
その後、701年(大宝1年)に制定された大宝令によって、唐から伝わった、小尺(約29.6cm)、土地の測量に用いる、大尺(小尺の約1.2倍)が単位として定められた。
ところが、時代が変わるにつれて、長さの基準や単位にも同じように変化したという経緯がある。
そして、長さの基準や単位を統一したのは、天下人となった豊臣秀吉である。
日本史で学んだ記憶がある人もいると思うが、豊臣秀吉は租税賦課の基礎条件を明確にすることを目的に、1582年(天正10年)〜1598年(慶長3年)にかけて太閤検地を行う。
この太閤検地は、従来貫高で示されていた田畑を石高、つまり生産高で示すように改めたことから、天正の石直しともいわれている。
豊臣秀吉は、太閤検地尺という物差しを用いて、地方によって違っていた長さの基準を、1寸は約3.03cm、1尺は約30.3cmに統一したのである。
それから、豊臣家が滅亡すると、今度は徳川幕府が度量衡統一に乗り出す。
江戸と京には、重さを測るためにそれぞれ枡座と秤座が置かれるのだが、長さに対して基準を定めることはなかった。
そのため、曲尺、鯨尺、呉服尺といった具合に、職種や地域で異なる尺が使われていた。
そんな長い歴史があるにも関わらず、尺貫法が完全に統一されたのは、1893年(明治26年)のことである。
度量衡法の施行により、1尺が約30.3cmと決められた。
ただし、日本はメートル法の統一と普及を目的に1875年にパリで締結された、メートル条約にも加盟していたため、1958年(昭和33年)の計量法成立のまでは尺とメートルが併用されることになったのである。
日本の長さを測る単位には様々なものがあるのは、こうした若干複雑な歴史があるからである。
ちなみに、建築業界では、未だに尺が用いられている反面、1,000mm(1m)を基本単位とする設計基準である、メートルモジュールも採用されている。
対する、尺モジュールは910mmを基本単位としており、家を建てたい人はこちらの基準を選択することも可能だ。
建築会社、工務店によって取り扱いが異なるので、このあたりも知っておくといいだろう。
長さの単位詳細
ということで、長さの単位について詳しくみていこう。
一分(いちぶ) とは、メートル法で換算すると、約3.03mmになる。
アメリカで使われている長さの単位であるヤードポンド法だと、約0.119インチとなる。
50円玉の穴の直径が4ミリメートルなので、一分はそれよりも小さな長さだというイメージを持っておくといいだろう。
一寸法師の例えを冒頭に書いたが、一寸(いっすん) は、一分の10倍の単位だ。
メートル法で換算すると、約3.03cmになる。
アメリカで使われている長さの単位であるヤードポンド法だと、1インチが約2.54cmなので、一寸は約1.19インチとなる。
寸は親指の長さに由来しているといわれており、親指のほんのわずかな長さという意味がある。
つまり、親指の長さほどだと覚えておくといいだろう。
一尺(いっしゃく)は、一寸の10倍の単位だ。
メートル法で換算すると、約30.3cmになる。
アメリカで使われている長さの単位であるヤードポンド法だと、約1フィートになる。
尺と寸と分の関係を整理すると、1尺 = 10寸 = 100分というわけだ。
一尺は親指と人差し指を広げたときの両指先間の長さが由来しているといわれている。
ちなみに、一尺と1フィートがほぼ同じ大きさなのは、どちらも身体の大きさを元にしているからである。
アメリカのヤードポンド法が足のサイズを由来としており、一尺の由来である親指と人差し指を広げた長さは、足のサイズとほぼ同じになる。
そのため、一尺と1フィートはほぼ同じ長さとなるというわけだ。
一間(いっけん)は、一尺の6倍の単位だ。
メートル法で換算すると、約1.82mになる。
アメリカで使われている長さの単位であるヤードポンド法だと、約5.97フィートになる。
尺や寸に比べるとあまり聞きなれない単位かもしれないが、不動産業界では比較的よく使われる単位だ。
間は坪数にも関わってくる単位で、一間の長さは畳の長辺の長さになる。
畳の短辺は長辺の半分の長さとなっており、畳を2枚並べると約182cmの正方形になる。
この畳2枚分の正方形が、一坪というわけだ。
つまり、一間 × 一間が一坪であり、畳2枚分の広さとなるというイメージを持っておくといいだろう。
まとめ
ここまで読んで、なんとなく尺貫法での単位がわかったと思っていただけたら嬉しい限りだ。
まとめとして、下記の目安も覚えておくと、どこかで役に立つかもしれないので、最後に参考までに載せておく。
五寸:手を広げたときの親指から人差し指の両指先間の長さ(約15cm)
一尺:肘から手首までの長さ(約30cm)
一間:両手を広げたときの長さ(約180cm)
一坪:2畳(3.3㎡)
もちろん、身長や性別によって多少の差はあるのだが、なんとなくのイメージを持つことが大切なので、余裕のある人は記憶の片隅に置いておいてもらいたい。
軽く触れたが、インチとかフィートなど世界に目を向けると、もっと多くの長さの単位が存在する。
このあたりについても、機会をみてまとめていこうと思う。
【Twitterのフォローをお願いします】
株式会社stakは機能拡張・モジュール型IoTデバイス「stak(すたっく)」の企画開発・販売・運営をしている会社。 そのCEOである植田 振一郎のハッタリと嘘の狭間にある本音を届けます。