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認知機能検査をほぼ毎日している私が思うこと。

2020年現在、高齢者の6人に1人が認知症患者と言われ、2025年にはその割合が5人に1人へと増加すると言われています。


病院勤務である私は、ほぼ毎日といっていいほど認知機能検査をしています。
認知機能検査といえばHDS-R(改訂長谷川認知症スケール)を思い浮かべる方が多いと思いますが、それだけの評価では正直不十分です。

何故かというと
認知症といっても実はさまざまな種類があり
それぞれ症状、特徴が異なります。
そのためHDS-Rだけでは分析に欠ける所があると私は思います。


認知症の種類

種類はさまざまでよく知られているものから

●アルツハイマー型認知症
認知症の中で最も多いタイプで約60%を占める。
物忘れなど記憶障害から始まり、場所や時間がわからなくなる見当識障害や物取られ妄想、徘徊、抑うつ、意欲低下、易怒性などといった症状が現れるのが特徴。

●脳血管性認知症
脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などにより脳血管が損傷したことで発症。約20%を占める。
「まだら認知症」とも言われ損傷を受けた部位によって症状が異なるため、個人差が大きいのが特徴。

●レビー小体型認知症
主な症状は幻視で、それに伴う妄想も見受けられます。実際には見えていない人や小動物、虫などが見えるようになることが多い。約4%を占める。
アルツハイマー型に比べ記憶障害の程度が軽く注意障害や抑うつ、パーキンソン症状が現れるのが特徴です。

ここまでは日本3大認知症とも言われ
個人的には知っておいて欲しい認知症の種類です。

しかし、まだ他にも

○前頭側頭型認知症
○内分泌代謝系の疾患によるもの
○頭部外傷や脳腫瘍など脳外科系によるもの
○感染症や炎症が関与するもの
○遺伝性のもの
○パーキンソン症候群を伴うもの 

このようにある疾患が起因となって認知症や認知機能の低下を招くことがあり、原因疾患が同時に複数存在することもあります。

また高血圧や糖尿病など生活習慣病もアルツハイマー型認知症や脳血管性認知症の発症に深く関係があるとも言われています。


軽度認知障害(MCI)

軽度認知障害(MCI)とは健常と認知症の中間

認知症の一歩手前と言われる状態です。

日常生活は自立し助けもいらない状態であるが記憶や判断力といった認知機能に軽い低下を認めます。

今、こういったMCIを早期発見し適切な治療や対策を行うことで認知症の発症を遅らせ認知症予防に繋がると注目されています。


認知機能評価はHDS-Rだけでない

ここまで認知症の種類や程度について紹介しましたが、果たして代表的な認知機能評価HDS-Rだけで認知症の評価ができるでしょうか?

実は認知機能評価には他にも種類があり

○ HDS-R
○ Mini-Cog
○ MMSE
○ MoCA-J
○ DASC-21(地域包括における認知症アセスメントシート)
○ ABC-DS(ABC認知症スケール)
○ ADAS(アルツハイマー病評価スケール)
○ CDR(臨床認知症評価尺度)

ざっと挙げてもこんなにたくさん!


この中で是非これは用いて欲しい!
認知機能検査について            それぞれの特徴を紹介します。

✔️HDS-R(改訂長谷川式認知症スケール)
日本で開発された認知機能検査で日本で最も多く実施されている検査。10分〜15分で検査可能。
9項目30点満点で20点以下から認知症の疑いあり。
記憶を評価する項目が多く(即時記憶、短期記憶、ワーキングメモリ)配点が高い。そのためアルツハイマー型認知症では点数が低くなりやすく検出しやすい。

✔️MMSE(ミニメンタルステート検査)
世界で最も多く使われている認知機能検査。
10分〜15分で検査可能。11項目30点満点で23点以下から認知症の疑いあり。最近では27点以下でMCIの疑いとなっています。
HDS-Rに比べて記憶以外の評価も含まれ
読む書く理解するといった言語機能面や構成といった空間認知機能を評価することができる。脳血管性認知症では点数が低くなりやすく検出しやすい。

✔️MoCA-J(MontrealCognitiveAssessment)
日本版として改良されたもので、この検査の特徴はMCIの検出に向いていて25点以下でMCIが疑われます。10分程度で検査可能。また糖尿病患者やパーキンソン病患者の認知機能障害を見出すことも研究発表されています。
MCIの検出ということもありHDS-RやMMSEに比べ難易度は少し高め。
記憶や見当識、言語機能への配点は少なく
遂行機能や注意機能、視空間認知など高次かつ多岐にわたり評価可能となっています。


これらを患者さまの症状に合わせて
上手く組み合わせることで、より詳細な評価ができ認知症の診断に役立つだけではなく
その先のリハビリや対処方法へも重要な情報源となっています。

どれも検査者にとってさほど難しくない検査方法ですので、STだけでなく他職種で用いることが出来ると思います。

もちろんこれらの検査は認知症検出の為のスクリーニング検査ですので、あくまで認知機能評価(低下している機能を評価する)に留まります。確定診断には主治医による脳画像検査や血液検査などが必要ですので注意してください。


この投稿で認知症の事でお困りの方に少しでも役に立てればと思います。

               me;でした。

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