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創作

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短編小説や掌編小説や詩、短歌のまとめ
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#詩

すべてが可視化されたとき

すべてが可視化されたとき

僕らの目玉は脳になった
すべてが可視化されたとき
僕らの目玉は指にもなった
すべてが可視化されたとき

すべては明瞭になった
すべては公正になった
それは素晴らしいことじゃないか
かつて目玉だった口が言った

だけど、目玉は脳じゃない
目玉は指折り数えはしない
目玉が喋ったりするはずもない
君の目玉をよく見てごらん

見えないところにあるものを
1でも10でも5でもあるものを
あのとき僕らは失った

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君にはそれしかできない

君にはそれしかできない

出来事はいつも否応なく起きる。
いいことも悪いことも、
ネガティブな感情も、
認めたくないことも、
起きるべくして起きる。
君の知らないどこかで。
君の身の回りで。
君の心の中で。

たとえば君が、
君の知らない間につくられ、
この世に訪れたように。
君がいつか
まだ準備もできてないのに
旅立たなきゃいけないように。

この世界に何かが起きて、
君はそれに対処して、
また何か起きて、
また何か対処

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胡蝶

胡蝶


森の奥には国があり
其処には人の住む場所ありき
人の住む場の何処には
誰にも知られぬ森ありき
森の中を彷徨ひし者
怪しき胡蝶の羽根を見つけむ
汝の願ひを叶へ給ふ
我に叶へられしことあらば

森彷徨ひし若き騎士
一羽の蝶を見つけたり
羽根黄金色に輝きし
妖しき蝶は囁けり
汝の望み叶へ給ふ
我に叶へられしことあらば
騎士笑み浮かべ答へたり
ならば我、力を求めむ

蝶答ふ、汝に力
与へるは適わざれど

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ソネット五首

ソネット五首

ソネットが好きなんです。ソネットとは、14行の詩。詳しくは知らないのですが、細かいルールがあるのだそうです。元々はイタリアで始まった詩型ですが、ワーズワースも、ボードレールも、リルケも、皆ソネットを詠んでいます。

日本だと、立原道造が有名ですね。他にも、中原中也や石川啄木も詠んでいます。あと、谷川俊太郎も。

で、そういったおすすめのソネットを紹介するのもいいのですが、それはまた別の機会にして、

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詩 箱

詩 箱

箱がある。
ただの箱である。
そこらじゅうにあり、
誰でも中を覗ける箱である。
なぜなら、それは
箱だから。
もしも開けてはならない箱が
あるとするなら、
それは恐らく、
もはや箱ではない別の
何か別のものだろう。

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