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詩歌ビオトープ

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歌人や俳人、詩人の分布図を作るプロジェクト
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2023年4月の記事一覧

詩歌ビオトープ015: 前川佐美雄

詩歌ビオトープ015: 前川佐美雄

詩歌ビオトープ15人目は前川佐美雄です。

この人は1903年に奈良県で生まれました。高校卒業と同時に「心の花」に入会、佐佐木信綱に師事します。高校卒業後は東洋大学に入学、卒業後は奈良に戻りましたが、文学を志して再び上京、「心の花」の編集・選歌に関わりました。

「アララギ」の写生歌を批判し、土屋文明と論争をしたこともあったのだとか。その一方でマルクス主義に共鳴し、活動もしていたそうです。

処女

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詩歌の分類フォーマットver.2.0

詩歌の分類フォーマットver.2.0

先日、詩歌ビオトープの分類がこのままじゃ多分ダメなんだろうなあ、という話をしましたが、分類に使えそうなのをふと思い出しました。

それは、萩原朔太郎の「詩の原理」です。

僕はこの本がすごく好きで、ほんとに、これが無料で誰でも読めるなんて幸せだなあと思うのです。

萩原朔太郎って、かなりの理論派ですよね。で、この本以外にも結構哲学的エッセイのようなものをたくさん書いています。

この『詩の原理』は

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詩歌ビオトープ014: 吉野秀雄

詩歌ビオトープ014: 吉野秀雄

詩歌ビオトープ14人目は吉野秀雄です。

この人は1902年に群馬県で生まれました。生家は有名な商家だったそうです。

高校生の頃に正岡子規や長塚節の影響を受け、慶應義塾大学に入学、しかし、肺結核を患って中退することになりました。

その頃から短歌を始め、會津八一の『南京新唱』に傾倒、後には家に押しかけて門人になったそうです。會津八一は弟子を取らなかったそうですが、この人はそんな會津八一の弟子とし

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赤が過疎ってる件

赤が過疎ってる件

さて、順調に読み進めているプロジェクト詩歌ビオトープですが、ひとつ問題があります。

今の時点の分布を見てみましょう。ジャンッ

もうお分かりでしょう。

赤がいない!

あと、左側が混雑しすぎですよね。

うーん、そうなのか。僕は実は、短歌は結構赤の人が多くなると予想していたのですが、ならないですね。

まだ時代が古いからでしょうか。それとも、やっぱり全集という性格上の問題なのかなあ。

自然詠

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詩歌ビオトープ013: 吉田正俊

詩歌ビオトープ013: 吉田正俊

はい、というわけで、詩歌ビオトープ13人目です。今回は吉田正俊を取り上げます。

この人は1902年に福井県で生まれました。東京帝国大学法学部を卒業後、現在のいすゞ自動車に入社、出世して専務取締役にまでなったそうです。

大学卒業後の1925年、土屋文明に師事して「アララギ」に入会、後に選者、発行人にもなりました。

歌集は40歳のときに「天沼」を刊行。この歌集は同時代の歌人たちに大きな影響を与え

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詩歌ビオトープ012: 五味保義

詩歌ビオトープ012: 五味保義

はい。というわけで詩歌ビオトープ12人目は五味保義です。

この人は1901年に長野県で生まれました。その後、京都帝大を卒業、島木赤彦に師事して「アララギ」の同人となります。赤彦の死後は斎藤茂吉や土屋文明に師事し、「アララギ」の中興と戦後の発行に尽力しました。特に戦後はこの人の自宅が「アララギ」の発行所となっていたそうです。

歌人として活動する傍ら、教師や万葉集の研究者としても活躍していたとのこ

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詩歌ビオトープ011: 明石海人

詩歌ビオトープ011: 明石海人

はい、詩歌ビオトープ11人目です。今日取り上げるのは、明石海人です。

この人は1901年生まれ、1939年に亡くなりました。画家を志望して上京したものの、ハンセン病になったため断念、長島愛生園に入院し、そこで短歌を始めたそうです。

改造社が一般に公募した「新万葉集」に11首が選ばれたことで大きな注目を集めましたが、その2年後に亡くなりました。

死後刊行されたのが「白描」という歌集で、この歌集

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詩歌ビオトープ010: 結城哀草果

詩歌ビオトープ010: 結城哀草果

はい、ということで、詩歌ビオトープ10人目になりました。

この人は1893年生まれ、1974年に亡くなりました。山形県に生まれ、生涯をこの地で過ごした人です。山形を代表する文人として知られているそうです。

土岐哀果の影響を受けて作歌を始めたとのことで、哀草果の号は哀果から来ているのですね。その後斎藤茂吉に師事します。晩年の歌にこんなのがありました。

さて、今回もネタ本は昭和文学全集35です。

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短歌や俳句の引用問題

短歌や俳句の引用問題

最近「詩歌ビオトープ」という企画を始めて、いろんな歌人を取り上げているわけですが、その中で気になっている問題がありました。それが著作権です。

明治に生まれの人の場合は大抵著作権が切れていることが多いので何も問題ありませんが、現代に近づくにつれ長生きした人やご存命の人が増えてくる。となると、その人の作品を取り上げたくても、全文を上げると引用の範囲を超えてしまう。つまり、その人の作品を挙げながら書い

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詩歌ビオトープ009: 土屋文明

詩歌ビオトープ009: 土屋文明

はい。詩歌ビオトープ9人目は土屋文明です。

土屋文明は1890年生まれ、1990年に亡くなりました。100歳で亡くなったって、すごいですね。

高校生の頃から作歌を始めて伊藤左千夫の「アララギ」に参加。東大に入学後は芥川龍之介らが始めた同人誌「新思潮」にも参加していました。

大学卒業後は「アララギ」の中心人物となります。1930年以降は斎藤茂吉の跡を継いで「アララギ」の編集責任者となり、戦後「

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詩歌ビオトープ008: 釈迢空

詩歌ビオトープ008: 釈迢空

はい、ということで8人目、釈迢空です。

この人は1887年生まれ、1953年に亡くなりました。大阪府出身で、本名は折口信夫です。民俗学者として有名ですね。

高校生の頃から短歌を始め、上京して國學院大学に入学、根岸短歌会に出入りするようになりました。大学卒業後は中学校の教師となる傍ら、アララギの同人として歌壇でも活躍します。そうして國學院大学の教授、慶應義塾大学の講師となりました。その頃、アララ

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