見出し画像

人生をやり直すということ

結局、「ブラッシュアップライフ」を一日で見終えてしまった。

前回、ドラマ前半までの感想等を記録したため、今回は総評をしようと思う。

※以下、ネタバレあります!!!

主人公である麻美は、3周目の人生で日テレの局スタッフとしての人生を終え、4周目で国立大学医学部の研究医としての人生を歩み、麻美人生ラストの5周目でパイロットとしての人生を歩む。

前半と大きく流れが変わるのが4周目の人生で、2人の親友を飛行機の墜落事故によって亡くしてしまうということ知る。

そのため、1~4周目までの人生は、次に人間として生まれ変わるため、少しでも徳を積もうという目的で人生を歩むが、最後の5周目の人生は、友だちを救うために歩もうと決意する。

劇中のセリフで、「今度は自分が納得する人生を歩むためにやり直す」と麻美は言う。

つまり、「来世何に生まれ変わるか」に重きを置くのではなく、「現世が満足できる人生にする」という目的に変更するというものであった。

全体を通じて、家族や恋人は出てくるものの、このドラマのメインは“友情”である。

そこが非常に見やすく、世界観に入り込めることができたポイントだと感じた。

実は、麻美は、5周目の人生に突入する前に、他の人間に生まれ変われるチャンスを得ていた。

にもかかわらず、親友2人を救うため、死なせないために、麻美は5度目の自分の人生をやり直すという決断をする。

4周目の人生では、麻美は親友3人を事故で亡くしてしまうが、「自分一人だけが生き残る世界」と「友だちや家族を残して自分が先に死ぬ世界」では、どちらの方が幸せなのだろうか。

友だちにしろ、家族にしろ、この世では誰かが先に死に、誰かが残され残りの人生を歩んでいくというシステムになっている。

そして、その世界は、現実にそう遠くないうちに自分にもやってくる。

大切な人を遺して自分が死ぬのと大切な人に先立たれるのとでは、どちらが辛いのか。どちらが幸せなのか。

きっと、この先、どちらの立場も経験することになる。

そして、この辛さや悲しみは、必ず誰かが背負わなければならず、たとえ何度人生をやり直すことができても変わらない。

では、満足する、納得できる人生とは何なのだろうか。

何度人生をやり直したら自分の人生に納得できるのだろうか。

誰のために、何のために、今この人生を歩まなければならないのだろうか。

これがこのドラマのテーマであったと思う。

最終話で、飛行機の墜落事故を阻止するために綿密な計画を実行しようとする麻美は、途中予期せぬ出来事が2つほどあったが、結果的に事故は阻止できて、親友2人を死なせずに済むという内容であった。

つまり、結局のところ、人生はすべて“運”でしかないのである。

麻美は何度も人生をやり直したが、最後は巡り合わせによって救われたのである。

しかも、その計画破綻の危機から救った人物たちは、「不倫しようとしている人に仕返しをするため」「事故を見越して止めるため」という、“未練”や“後悔”といった類の感情によって麻美に巡り合う。

案外、この世の“なんとかなっている”出来事は、何回か人生をやり直している人の未練や後悔のおかげで成り立っているのかもしれない。

よく、「この世に未練のある人間はあの世にいけない、成仏できない」などと聞くが、この説は本当なのかもしれない。

また、このドラマを通じて、「自分が経験したことでしか物事を推し量るこことはできない」ということも痛感した。

麻美は前世の記憶や経験値も持ち合わせているため、その能力を駆使して現世をやり過ごすというシーンが何度もあるが、結局、人間は自らが経験したことや身に付けた知識・技術でしか物事に対処することが出来ないのである。
(ただ、人生を何度もやり直すことによって対処できる物事は増えるけど)

こんなことをドラマを見ながら考えて、じゃあ一体、私は現世でどうやって生きていくべきなのだろうか。

その時最善の選択をしたと思っていても、その後の人生で後悔する、といったことは生きていると山ほどある。

「あ~今3回目の人生だな~」などと分かっていればどうにか対処できることもあるが、現実問題、そのようなことはまずあり得ない。

1回目の人生を、たった1回しかない人生を、どう生きるのか。

死ぬまで答えの出ないような問を投げかけられた、そんなドラマであった。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?