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【2022年】6月に出会った本/映画/場所

暑さに負けてほぼ家で過ごしていた6月。今回は遠出をせずに、読書友だちが近所に立ち上げた文学サロンに遊びに行ってみました。

6月に出会ったものたちを感想とともにご紹介します。

『モノからモノが生まれる』 ブルーノ・ムナーリ

デザインについての企画設計論。前半の企画の話から後半では成功/失敗を含めたプロダクトデザインの事例などを紹介している。多数のイラストや写真とそれに組み合わせた覚書のような文章から感覚的な話かと思いきや、ものすごく論理的。

『私たちは学習している 行動と環境の統一的理解に向けて』 澤 幸祐

この本の「学習」は学校などで行われる勉強のようなものではなく、生きていく中での適応としての「学習」を指す。
多数の実験や理論の他に数式まで出てきて、かなり複雑な部分もあったが、「相手が何を考えているのかを理解するのは難しいが、相手を取り巻く環境や刺激をよく観察すればその行動について理解する手がかりになる」という考えに惹かれ読了。

『赤い魚の夫婦』 グアダルーペ・ネッテル

メキシコの女性作家による不穏で幻想的な短編集。鑑賞魚、虫、猫、菌、蛇…それぞれの生物を飼った人間の心の揺れ動きにその生物の生態が重なっていく。どの話も人間関係の「別れ」というダメージの強い出来事に向かい進むけど、掛け合わせに感情移入しにくい生物を選んでいるのが面白い。

『消失の惑星』 ジュリア・フィリップス

ロシアのカムチャッカ半島を舞台に、幼い姉妹の誘拐事件から始まる13章の連作短編集。各章で主人公(女性)が変わり、彼女たちは年齢も背景も違う上、必ずしも冒頭の幼い姉妹と関係する人物ではない。共通するのは「幼い姉妹が消えた事件があったことを知っている」ということ。姉妹が消えたように彼女たちの人生からも何かが喪失し、そして常に心は痛んでいる。各章ごとに良かったが、終盤に大きなうねりが入る全体的な構成も好きだった。

『美しいってなんだろう?』 矢萩 多聞/つた

装丁家の矢萩多聞さんと小学生の娘さん(つたさん)が「美しいってなんだろう?」について一緒に考えてみた本。ネパールのカトマンドゥ(カトマンズ)の街、川、壁、庭、石、文字…それらがどんなに美しいのかを伝えてくれる。優しい文章もとても好きだし、読んでいてしあわせな気持ちになった。

『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』 小原 晩

歌人である小原晩さんのエッセイ。SNSでフォローしている読書家さんの最新の購入本がUPされ、見た瞬間に「これは良さそう」と購入。東京での暮らしを書いた20編、関西に来てからの日々のことを3編が収録されている。ユニークさと生きていく感がたまらなく、やはり好みだった。

『往復書簡 ひとりになること 花をおくるよ』 植本 一子/滝口 悠生

写真家・文筆家の植本さんと小説家・滝口さんが2021年の11月から2022年の4月までの往復書簡。話題はなにかを書くこと、誰かと生きること、周囲のひとと関わること、子どもが成長していくこと、ひとりになることなど多岐に渡る。優しさや思いやりの底にある一貫したさびしさみたいなものも感じて惹き込まれた。巻末のライター武田砂鉄さんによる寄稿「それぞれなんとかやっていて」も沁みる。

漫画

『ベルリン うわの空』香山 哲

ドイツ・ベルリンでの暮らしをつづったコミックエッセイ。独特の絵柄がどこか異世界感を感じさせる。異なる文化を体験し、異なる背景を持った人々と出会い、「初めて買った果物の味がちょっと苦手でも世界がすこし身近になっていく気もして嬉しいです」という香山さんの世界の捉え方と寛容さが素敵。

映画

『ベイビー・ブローカー』 監督 是枝 裕和

2022年 韓国

劇場で鑑賞。赤ちゃんポストに預けられた赤ん坊を正規の養子縁組を待てない家庭に高額で売るブローカーの男2人。彼らと赤ん坊を捨てた女性、赤ん坊、養護施設から脱走した少年が「赤ちゃんを売る」ために車で旅をし、女刑事2人がそれを追う。
それぞれの思惑がありつつも、皆本能的に優しい。現実社会の冷たい雨から濡れないための「傘」を持たない彼らが集まり家族のように旅をする中で変化し、常に誰かが誰かを守っていて、守られている。出てくる韓国の俳優さんたちが良くて他の作品も観たくなった。

『パラサイト 半地下の家族』 監督 ポン・ジュノ

2019年 韓国

Netflixで鑑賞。『ベイビー・ブローカー』を観たことで、話題になっても観ていなかった本作を遂に観た。(皆が食べたいって言っていたチャパグリってこれか!)スキルはあるが全員失業中の半地下住宅に暮らす貧しい一家の長男が高台に住む金持ち一家に雇われたことをきっかけに、その家を侵食していく。
事前にストーリーを知らずに観たのでこういう話だったのかという純粋な驚きと、テンポのよい展開に集中して入り込めた。映画の全体のキーが「匂い」なのが良かった。

『タクシー運転手 約束は海を越えて』 監督チャン・フン

2017年 韓国

Netflixで鑑賞。1980年5月に韓国でおこり、多数の民間死傷者を出した「光州事件」。政府に隠されていたその実態を現場で撮影し世界に伝えたドイツ人記者と、彼をその事件の現場まで送り届けたタクシー運転手の実話をベースに作成された映画。
「光州事件」はこの映画を観たのを機に少し調べてみた。先の『パラサイト』を観たときにも思ったが(どの国の作品でもそうだが、特に韓国のコンテンツに触れる機会がとても多くなったので)韓国の歴史や社会的な背景を知っていればもっと作品を感じる深度が変わるんだろうなと思う。
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ひとりソン・ガンホ祭り。ベイビーブローカーもパラサイトもこれも3作全てソン・ガンホは「車を運転する役」だった。

場所

文学サロン 梅酒づくり

6月頭、読書友だちが立ち上げたオフラインの文学サロンへ初めて遊びに行った。
このサロンではメンバーが企画したテーマ型読書会以外にも毎週末いろんな企画が開催されている。

今回は、年始にnoteに書いた【2022年】今年やりたいことリスト100の中に「果実酒またはシロップを漬ける」をあげていたので、「梅酒づくり」企画に参加。
世代も仕事も違うけど「本が好き」だけが共通している友人たちと会えて2年ぶりに“雑談”できたのがとても楽しかった。

梅酒も1年後の開封企画が楽しみ。

2種類の梅(和歌山産と群馬産)、2種類(日本酒とホワイトリカー)のお酒



以上、6月に出会ったものたちでした。




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