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35/n 作業前編 逆算の「災害とチェンソー」 チェンソー、ソーチェーン(チェンソー用チェーン)、目立ての正しい理解

ソーチェーンサービスジャパン(略: SSJ)です。

SSJは全国向けにソーチェーンのオンライン目立てを事業として行っています。宣伝を兼ねて、タイトルの記事をシリーズ化してnote上に公開することにしました。本記事の内容はXアカウントのhttps://twitter.com/SSJP2023 固定ツイートで先行公開していますが、noteで公開する内容は、Xアカウントで公開中の資料 「4D Sawchain Study」の「 V.1.25」以降の内容となります。

作業前編

 元ソーチェーンメーカーの中の人が、実際の災害発生後に業務で体験した「作業後編」から、災害時のスムーズなチェンソー作業を逆算して、後・中・前の対処法を書いています。加えて総も書くつもりでしたが、後・中・前でそれぞれまとまっているのと、総はそれぞれの団体が決めることなので必要ありませんでした。今回はまさに災害発生当日や翌日、実際にチェンソー作業をしようとした時に想定されることについて解説します。災害時に限らず、チェンソーは所有していても年数回使う程度の方もどうぞご参考に。

エンジンが始動しない

 ほとんど1/nの内容と被ってしまいますが、改めて…

毎年の防災訓練の前に、始動しないエンジンカッターやチェンソーは修理に出す…恐らく全国あるあるだと思います。チェンソーは車やバイクのようにガソリンだけでなく、ガソリンとオイルが混ざった混合ガソリンで動いています。混合燃料は作成や開封後に時間が経つと、変質して正常に爆発できなくなります。作成・開封後の保管期間は夏季では1か月以内、冬で2~3か月以内とは言われますが、変質には揮発や酸化、乳化を招く気密、気温、湿度、直射日光が影響します。なので、地域やその年の天気でまちまちになってしまいます。変質した燃料は臭いが変わるのですが、いざという時に臭いを判別する為に、敢えて変質させる燃料を別で分けておいて練習すると良いかもしれません。

「前回使って本体の中に残ったままの混合燃料」も、時間と共に変質していきます。つまり、期間が開くとエンジンが始動しなくなってしまいます。次回の使用まで期間が開く場合はタンクから燃料を抜いてアイドリングして~…も、繰り返すとキャブの中や燃料ホースの中に僅かに残った「混合燃料のカス」が溜まるので、次回はどうなっているか分かりません。地域の防災倉庫などに年1の始動管理で備蓄しているエンジンカッターやチェンソーも、実際は使う時まで分からないギャンブルな状態になっています(実話)。

1番良いのは定期的に新鮮な燃料を50㎜程度入れて、アイドリング→アクセルを20秒ほど吹かす→燃料切れになるまでアイドリングで放置だと思います。これでいざという時は新鮮な燃料さえあれば良いわけです。エンジンカッターの管理でこれを毎日行っている消防もありますが、混合燃料の作成・開封や、混合用オイルの開封からの使い切りさえ間に合えば、1週間に1度でも良いのでは?と思います。

使う前からソーチェーンの状態が悪い

 またまた、1/nの内容と自作の動画の使い回しなのですが、ソーチェーンは「適宜」の研ぎが必要です。切れないまま使うとチェーンやバー、ドライブスプロケット、クラッチの損耗、燃料やチェーンオイルの消費が指数関数的に増えて行きます。普段からチェンソーを使う林業や造園業でも、機械を作業員同士で共有している事業体では「あの人が使った次の日は目立てから始まるんだよなー!」や「誰だ目立てしないまま片付けたの~!?」も、恐らく未来永劫続くチェンソーあるあるです(=林業&造園では目立てが上手い人に負担が集中しやすい)。
 慣れてくると使わずとも指で触ったり、見るだけでソーチェーンの「適切な目立て」や寿命含めて「ある程度」の判別が効くようになるのですが、意識しないと慣れることはできません。まして、チェンソー作業が本業ではない場合、触れる機会が少ないので、カッターの状態や適切な目立てについて分かる→覚える→実践できるようになるまでどれぐらいの期間が掛かるのかは…???です。林業&造園業のプロユーザーでも個人の目立ての到達点は差があります。安全に切って倒すのとはまた別の話だということです。消防や自衛隊、警察などで、今現在で訓練の後でソーチェーンを使い捨てにしているのか、どのような目立てを行っているのか分かりませんが、この問題は解決しないと思います。ソーチェーンの寿命はカッターの残りとタイストラップの摩耗度合い、リベットの損耗具合=伸びで判断するのですが、適切な目立て、チェーンオイル、張り調整の管理を続けていれば「カッターを上から見た時に三角」になるまで、最終的にカッターが木を切った時の衝撃で吹き飛んでいくまで使えることは使えます(カッターが飛んで行くと身体に刺さることもあるので危ないです)。

カッターの天面に見える白い線がライフサイン

「これだけカッターが小さくなっても木はちゃんと切れます」のサンプルです。

尚、カッターが小さくなるにつれ変化する挙動について気になる方は32/nをどうぞ。

どう作業して良いか分からない

 訓練もやらないよりはやった方が断然良いのですが、訓練と現場では環境に大きな差があります。災害時の作業でも初動、応急対応、復旧、復興とありますが、訓練のみで実際の初動・応急対応をすると「どう作業して良いか分からない。ただ時間は限られている。」となって二次災害に繋がってしまいます。
 以下のリンクは災害訓練の様子です。

以下のリンクは災害現場の様子です。

 どこからどういう作業を始めて良いか「掛かり木処理は怪我・死亡率が高いから危ない」で止まっている私なんかには検討が付きませんが、リンクのような状態を闇雲にチェンソーで切ってしまうとテンションの掛かりがズレて、重なった材が崩れてきたり、足場にしていた材が動く、中に残されていた要救助者の空間が無くなるということが考えられます。全国どこでも災害が発生する可能性があるのですから、

訓練→復旧&復興期で時間が掛かっても良いから経験値を積む→いざという時の初動&応急期に臨む

という体制を県や地方を超えて構築するのがあくまで理想だとは思うのですが…頭が上がらない次第です。

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