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無関心を「関心」に変えていく!産学連携の環境教育の取り組み

普段の職場である水族館から飛び出して、サンシャイン水族館しながわ水族館のスタッフが品川女子学院の中高生の生徒の皆さん35名に、海洋における環境問題の特別講義を実施しました。
生徒たちが考えた、海洋プラスチックゴミ問題を若い世代に伝えるための展示や発信方法についてのプレゼンテーションも行われ、採用されたアイデアは現在開催中のサンシャイン水族館「ゾクゾク深海生物 2022」(1/14~3/6)にて展示中です。

このプロジェクトを担当した、株式会社サンシャインエンタプライズ アクアゲストコミュニケーション部の山本昭さんと笠原穣さんに、産学連携の取り組みについてお話を伺いました。

若い世代と一緒になって、若い世代に向けて発信すること

――まずは、おふたりが所属されている「アクアゲストコミュニケーション部」について、どのような部署なのか教えてください。

山本
水族館の維持管理をする部署になります。具体的には、水槽や生き物の管理をするのですが、そのなかで私は、魚類担当と飼育設備担当の統括という立場で仕事をしています。

笠原
私は生き物の飼育担当で、自身のチームを持ち、水槽に潜水したり給餌したりするなど、現場により近い立場ですね。

――どのようなきっかけで水族館の運営に携わることになったのでしょうか?

山本
私は学生の頃から生き物が好きだったのですが、なかでも水生生物が特に好きだったこともあり、水族館で働くことを選びました。

笠原
私も高校生ぐらいから、水族館で仕事をしてみたい気持ちがありました。海洋系の大学に進み実習に参加したときは、想像していたよりもずっと体力仕事でとても大変で。実は一度そこで諦めかけたのですが、気がついたら嫌なことはすっかり忘れて・・・今、ここにいます(笑)。

――おふたりとも学生時代から、魚や生き物への興味関心があって、今に至るんですね。今回お話を伺うのも、学生向けのプロジェクトになりますが、始めたきっかけはなんでしたか?

笠原
東京・大手町に「3×3Lab Future」という、サステナブルな社会づくりをテーマにした業種業態の垣根を越えたコミュニティスペースがあるのですが、そこでつながりを持った方から、品川女子学院の生徒たちの発想力の凄さを伺ったんです。品川女子学院では、授業の一環でさまざまな企業とのコラボレーションがあり、生徒の皆さんの意欲が非常に高いと。私たちも若い世代の発想力を学びたかったので、何かご一緒できないかと考えたのが最初のきっかけですね。そして、学生の皆さんにも水族館の持つノウハウや実社会とのつながりを通して、環境に関する学びを提供できたらと思いました。


1年3ヶ月のプロジェクトから生まれた、「マンガ」で伝える環境問題

――実際にはどのようなプロジェクトなのですか?

山本
2020年12月にスタートし、2021年3月まで5回にわたって講義とワークを実施しました。
具体的な内容としては、まずは水族館の働きや使命の話から始まり、海洋プラスチックや、生物が網に絡まって負傷してしまうなどの海が抱えているさまざまな問題、そして、サンシャイン水族館は長年「サンゴプロジェクト」を推進しているので、サンゴが置かれている現状と私たちが行っている保全の取り組みについてもお伝えしました。
さらにそれを踏まえて、今、海が抱えている問題を、高校生や中学生という、生徒の皆さんと同じ世代に伝えるにはどうしたらいいかを考えてもらうワークを行いました。

――一方的な講義のみではない、双方向のコミュニケーションがあるプロジェクトだったのですね。どのようなアイデアが生まれましたか?

笠原
プレゼンテーションでは、例えばアプリを活用するなどさまざまなアイデアが発表されました。自分が高校生だった頃を振り返って、これだけの発想は出てこなかったなと驚きましたね。そのなかでひとつ、環境問題を「マンガ」という表現方法を使って発信するアイデアが実際に形になりました。現在サンシャイン水族館で開催中のイベント「ゾクゾク深海生物2022」(1/14~3/6)のなかの、深海ゴミ問題を取り扱うコンテンツに合わせて展示されています。

品川女子学院の皆さんが作成したマンガが展示されています。
実際に深海から回収したプラスチックゴミの展示も。

――アイデアが実現するのはとてもやりがいがありますね。講義を通して、生徒からはどのような反応がありましたか?

山本
講義をしているときは、私達が伝えたいことがちゃんと伝わっているかな?と不安だったのですが、皆さんの反応がとても良くて。ちゃんと伝わっている、受け取ってくれているということを実感できたので、ものすごく嬉しかったです。

笠原
講義を終えた後の質問って、なかなかしづらいですよね。でも品川女子学院の生徒たちは、スライドでわからないところがあれば積極的に質問してくれましたし、ご自身が思っている感想なども率直に伝えてくれました。リモートで講義を行うことも多く、最後のほうは直接お会いして話ができなかったことが残念で。今回、展示が実現したのでこの機会に改めてプロジェクトを終えての生徒たちの意見や感想を聞いてみたいですね。

――SDGsの観点ではいかがでしたか? 

笠原
学生って普段からどれくらいSDGsを意識しているのかも気になって、講義の合間に聞いてみたんです。すると、もはやSDGsはあたりまえで、例えば「ポイ捨てはしない」「リサイクルに注目している」など、各々生活のなかでちゃんと関心を持って取り組みをされていました。大変感心しましたね。
そして自分たちが伝えたいことを水族館に展示する「マンガ」という形で表現するために、一緒に試行錯誤していくやりとりのなかで、より知識や考えを深めていただくことができたのではないかと思っています。

ここをスタートに、学びの場を広げ環境問題の意識を広めていきたい

――今後はどのような展開を考えていらっしゃいますか?

笠原
今回、品川女子学院の皆さんと一緒に、海のゴミ問題を考え、どう伝えていくかの解決策を「マンガ」という形で出していただきました。次は、その先にある「ゴミを削減できる具体的な取り組み」までテーマにしていけたらいいなと思っています。

山本
さらに、今後はサンシャイン水族館の地元・豊島区の学校とも連携できたらと考えていますし、いずれは海に興味のあるすべての皆さんにプログラムを受けていただける機会を作れたら嬉しいです。
というのも、私たちは職業柄、環境問題に敏感であるのですが、まだまだ環境問題は自分とは関係ないものだと思っている人もたくさんいると思うんです。無関心=最大の敵ですから、知ってもらえるきっかけ作りができたらと。

今回テーマにしたゴミ問題は、海洋が抱える問題のほんの一部です。これからも多くの方に向けて、他の問題も伝えていきたいと思っています。サンシャイン水族館が取り組んでいるサンゴ保全の話ももっと深く伝えていきたいですね。環境問題は見る角度によっては全然違うものになってきますから、環境問題全体を総合的に学ぶための「環境教育」に今後も取り組んでいきたいと思います。

小さい頃から生き物が好きで、水族館一直線だったおふたり。
さらに「海」を守る活動を広げていきます!

サンシャインシティ サステナビリティサイトhttps://sunshinecity.jp/file/official/sustainability/