劇場の床を再利用。池袋駅東口グリーン大通りにストリートファニチャーが出現!
池袋駅東口のメインストリート「グリーン大通り」に、2021年10月から期間限定で、ベンチなどのストリートファニチャーを設置する取り組みが実験的に行われています。ファニチャー(家具)に使われた材料の一部は、サンシャイン劇場の舞台の板材を再利用した木材。
このプロジェクトに携わる、株式会社サンシャインシティ・ビルマネジメント 工事部の君田明穂さん、株式会社サンシャイン劇場の土屋雄亮さん、株式会社サンシャインシティ まちづくり推進部の中川沙紀さんと倉林真弓さんに、取り組みについてお話を伺いました。
破棄する予定の廃材を、まちの憩いの場に
――サンシャイン劇場の舞台で使用していた床板を再利用した家具を「グリーン大通り」に設置することになった経緯を教えてください。
倉林
池袋駅東口の「グリーン大通り」で2017年から実施している、賑わい創出を目的とし、まちをリビングのように居心地の良い空間にする“まちなかリビング”プロジェクト『IKEBUKURO LIVING LOOP(イケブクロリビングループ)』という取り組みがあるのですが、2020年よりサンシャインシティも企画運営チームとして参画しています。そのなかで、これからはイベントのように一時的な賑わいだけでなく、日常的に人が賑わう空間を創出していきたいという思いから、歩道に家具を設置するという社会実験を行ってみることにしました。
屋外ですので、家具の頑丈さなど安全性を確保することはもちろん、歩道の形状に合わせ、より魅力的なものにしたいと思い、既製品ではなくオリジナルで作ることに。そしてサンシャインシティ内で出た廃材などが材料に利用できないか、と考え、私から皆さんに相談したのがきっかけです。
君田
相談を受けたタイミングで、ちょうどサンシャイン劇場のリニューアル工事が進行中で。廃材が出ることが決まっており、劇場に確認したところ、二つ返事でOKをいただきました。もともと劇場としても、演者さんやお客様の思い出の詰まった板材をただ廃棄したくない・・・と思っていたこともあり、喜んでいただきました。
倉林
本当にタイミングよく劇場の改修があったんですよね。しかも、グリーン大通りのストリートファニチャーエリアに、劇場の木材を使うことが決まる前から「リビングステージ」というエリア名をつけていたんです!タイミングとネーミングとがぴったりで、とても縁を感じました。
――部署や業務内容の枠を超えてスムーズに連携していますよね。SDGsなど社内の横の連携をどうしたらいいかわからない企業も多いと思うのですが、秘訣みたいなものはありますか?
土屋
今回でいえば、倉林さんが言うならやってみようと納得するように、やはり信頼関係ができているところですね。
君田
何事も総合力。SDGsの取り組みだってそうですよね。だから、違う部署でも会社でも、ふらっと相談にいけるような関係づくりが大切ですね。
再利用は思い出を蘇らせる装置にもなる
――「ストリートファニチャー」の今後の展望はありますか?
倉林
先ほど話したように、もともとは“賑わいを日常化させる”というのが目的。ファニチャーを設置することで、仕事をしたり、ご飯を食べたりお茶をしたりする姿も見られるようになりました。今後はショップやカフェなどと合わせて、更に日常的な賑わいを創出できる仕組みを作れたら、とプロジェクトメンバーとも話しているところなんです。
――まちの方々の反応はいかがですか?
中川
使い方はさまざまなんですけど、いろんな方がそれぞれ思い思いの使い方をしてくださっていて、少しずつ日常の風景として受け入れられているのかなと感じています。
土屋
SNSでも、かつてサンシャイン劇場に出演した演者さんや関係者が、看板を見て知って喜んでくれていたり、一般の方も「今、私はサンシャイン劇場の舞台に立っている!」みたいなことをアップしてくださったりと、サンシャイン劇場という場所への愛情を感じますね。
倉林
劇場の舞台というのがいいですよね。みなさん特別な思いがあって。そういう思いを大切に残していけたらいいな、と改めて気付かされました。そして、池袋の施設の廃材が再利用されていることで、地域の皆さんにはより愛着を持ってご利用いただけたのではないかとも思います。
――実際に再利用に取り組んでみて、意識の変化などはありましたか?
土屋
廃材を廃棄したり特定の人に渡したりするよりも、今回のプロジェクトのようにたくさんの皆さんに使ってもらえる機会を作れたことはすごくいい取り組みだと思いました。
君田
最初、ただ老朽化したからリニューアル工事をするだけではなく、何か世の中の役に立てたら、と考えていたんですよね。そんな中で、舞台の板材の再利用の案が現れて、思いが実現できました。
倉林
檜でできた厚み35mmくらいのとっても立派な板だったんですよね。実際に購入したら大変な金額に・・・!ファニチャーのクオリティもあがりましたし、ほんと良いことづくめでした。今後の活動の可能性も広がりましたよね。
今後のまちづくりへの思い
――みなさんがどのようなまちづくりを考えていらっしゃるのか、お聞かせください。
土屋
劇場での観劇というのはおめかしして来るような、非日常的な雰囲気があります。プロジェクトのキーワードに「日常」が入っていましたが、非日常である劇場が日常を提供できるというのが、今回すごく良かったなと思います。サンシャイン劇場自体をもっといろんな形で知ってもらい、よりファンを増やしていければなっていう思いがありますね。そしてまた、まちの皆さんと一緒に何かできたらと思っています。
中川
池袋ってさまざまな目的で訪れるお客様がいらっしゃると思うんです。ですので、非日常も日常も両方が楽しめるまちというのは素敵ですよね。いろいろな人がさまざまなシーンで、小さなお子さまからご高齢の方まで、生涯を通して楽しめるまちになったらいいなと思います。
君田
劇場も43年、サンシャインシティも43年。古いことが悪いのではなく、歴史を誇れるようなまちづくりを目指したいです。経年“劣化”ではなく経年“美化”ですね。
倉林
まちづくりは1人ではできないので、結局大切なのは「人」。色々な人と交わったり繋がったり、そこにいる人たちが面白いと思うことが大切ですよね。サンシャインシティのサステナビリティの合言葉でもある「何か面白いこと、ある。これからもずっと。」をこれからも体現していきたいです。