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小匙の書室の173 ─三体II 黒暗森林 下─

 遂行される面壁計画。破壁人との心理戦。
 羅輯が放った“呪文”は三体人に何をもたらすのか──。


 〜はじまりに〜

 劉慈欣 著
 三体II 黒暗森林 下

 ⇧上巻の記事はこちらよりご覧ください⇧

 SFにほとんど馴染みがなく、『三体I』はスケールの大きな世界観に圧倒されはしたものの上手く馴染めたか不安だっただけに、『三体II』で感じた面白さは私に衝撃を与えました。
 面壁計画にある面壁者の孤独。それを暴かんとする破壁人。そればかりか人類は三体文明から送られた艦隊とソフォンの壁にも立ち向かわなければならない
 先の展開がまったく読めない。そんな上巻の読後余韻で感じた熱狂冷めやらぬうちに、下巻を読み始めました。


 〜感想のまとめ〜

 ◯まずこれを一番にいわせてほしい。SF小説って、こんなに面白いんですね!!! いや〜それまで未知なる生命体や未来の技術に対し、(特にハードSFとなれば尚のこと)私は「上手く馴染めないんじゃないか?」と不安で、読むのを避けてきたきらいがあるのです。
 しかし三体IIは、それらを払拭してくれたのでした。

 ◯遂行される面壁計画。面壁者と破壁人による心理戦が熱い。面壁者の頭の中で展開される面壁計画を暴き立てる破壁人それによって露わとなる面壁者の思惑。上巻からの興奮がここでもまだ続いている。
 ただ、羅輯の計画だけは物語の終盤まで明瞭にならないのです。だから「彼はいったい何を──どんな呪文を放ったのか」と気になって、ページを捲らせました。

 ◯冬眠からの覚醒。眼前に広がる新時代。SFならではの人類の夢想──最新のテクノロジーにワクワクしないわけがなかった。のみならず、その頃にはすでに当たり前、生活と身近になっている宇宙の壮大なスペクタクルには魅せられた。
 地球上で生活を行う羅輯、宇宙で三体人との戦闘における指揮を握る章北海。
 下巻は主にこの二つのパートが交互に展開されていきます。

 ◯羅輯パートは最初からハラハラさせられた(彼の身を護る史強とのコンビが好きだなあ)。面壁者として油断のならない生活、ある種の不安に立脚した新時代。三体人との戦争に一喜一憂する人類の中、羅輯は愛する妻と娘に再会できるのか。これが見所。
 一方、章北海パートは得体のしれない三体文明や、巡らされる奸計が面白い。とりわけ三体文明が送り込んだ“水滴”のことは忘れられない。未知の生命体ってのは凄いもんですねぇ。
 宇宙生活の趨勢もしっかり描かれているので、他人事に映ることがありませんでした。

 ◯羅輯の放った呪文とは何か? サブタイトルの示す黒暗森林とは?
 肝心要の要素にして最後に提示される呪文の正体。もちろんネタバレを避けるため詳細記述はしませんが、壮大な世界観であろうと“その点”は揺るぎないものなんだなあと、深みに耽溺。そしてサブタイトルの意味には感服。当たり前なんだけど、バチっと決まった瞬間には鳥肌が立ちました。

 ◯迎えた結末。これから、どうなる?
 シリーズは次巻で終結。IIはいちおう綺麗な完結を迎えたけれど、いまだに三体人の危難が去ったわけではありません。最終巻の展開はどう広がり、どうピリオドを打つのか。
 気になることがたくさん。早く読みたいです。


 〜おわりに〜

 良かった……。三体Iで止めてしまう人がいるなら、ひとまず黒暗森林までは読んでほしい。そのくらい、私が味わった体験は素晴らしいものでした。
 上巻の記事の最後で呟いたように、これを読み終えた後では他のSFに対するハードルも乗り越えやすくなった気がします。

 最終巻の文庫は6月発売

 それまでこの余韻を噛み締めていたいと思います。

 ここまでお読みくださりありがとうございました📚

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