小匙の書室260 ─三体Ⅲ 死神永生 下─
暗黒森林理論。それは宇宙の本質。
過酷な運命を背負いながら、それでも人類のために歩み続けてきた程心。
迎える新紀元、新たな脅威、迎える終結。
収斂の果てに彼女たちが見る景色は──。
〜はじまりに〜
劉慈欣 著
三体Ⅲ 死神永生 下
⇩上巻の感想は以下の記事をご覧ください⇩
さて、ついに三部作完結編の掉尾を飾る下巻へ突入しました。
三体、三体Ⅱ、そして三体Ⅲ上で大きく広げてきた、人類と三体人との生き残りをかけた戦い。
巻ごとにそれぞれ違った味わいがあり、(何度も言っていることだけれど)特に三体Ⅱでは「SFはこんなにも面白いジャンルなのか!」と嬉しい発見を得たものです。
その三体Ⅱで綴られた、黒暗森林理論と壮大な宇宙のスケールを引き継いだ三体Ⅲ。
決着をしかとこの目に焼き付けようと、どこか神妙な気持ちでページを捲っていきました。
⚠️上巻の内容を含む感想です。念の為、#ネタバレ タグを設けております⚠️
〜感想のまとめ〜
◯天明が程心に授けるおとぎ話。
それだけで一つの中編小説であり、しかもこの作中作が重要なファクターとして機能することになるのだ。
物語の奥深くに潜んでいる救世のカケラ。それは様々な解釈を生んで社会に渦を呼び、いわゆる世界をあげた謎解きに私の興味をそそられた。
同時に、また新たな計画──掩体計画も始動し、人類が頼るのは科学に即した現実か一人の人間が創ったフィクションか、というのも見所。
◯暗黒森林理論。それに伴う安全通知。これは上巻でも触れられていたことであり、いよいよ本格的な検討が行われるようになる。
おとぎ話の解釈は面白く、不可能だと思われていたことが着実に実現可能領域に踏み込んでいく展開は、興奮を覚えずにはいられなかった。
私は科学技術に明るくないのだが、実際にどこまでが現実的に可能なのだろう……?
◯第四部における、世界の作り込みに感嘆とするばかり。ここへきてまだスケールアップを図るのかと、著者の圧倒的な熱量にやられた。
ここにはSFのロマンが詰まっており、頭の中で想像するのが楽しかった。
そして後半には新たな脅威も登場し、雪崩のような展開に私の思考はショート寸前になった(正直その部分は難しく感じていた……)。
果たして、天明のおとぎ話はどのような効果をもたらすのか──。
◯最近は読書しながらその都度感じ入ったことをメモにしているのだが、五部以降は全くそうしたことができなくなった。
ハードコアSFを愛する著者が綴る、純粋なSFの世界観に圧倒され、ただただページを捲っていくしかなかったのである。
面白さや楽しさは次第に、著者が脳内で描いた世界観に対する『感心』へと形を変え、最後のページを読み終えたとき、私は長く太い息をこぼすのでした。
〜おわりに〜
いや、もう、とにかく凄すぎるとしか言いようがなかった。
三体シリーズを通し、私はSFの面白さと人の限界を越えるような想像力を味わうことができました。
ひとまず、ここまで到達することのできた自分を褒めたい。シリーズはスピオフとして他に二冊ありますが、そちらを読むかは検討中。
とにかく今は、全身を包む余韻を味わっていようと思います。
ここまでお読みくださりありがとうございました📚
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?