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やさぐれ日記 #401〜450

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やさぐれ日記 #450  お賽銭

やさぐれ日記 #450 お賽銭

新年明けましておめでとうございます、とnoteを開いてみたはいいけれど、気がつけばもう27日も終わろうとしている。

2023年は、初っ端から観劇、ライブ、観劇、大雪ともう大層賑やかな始まりで、あと11ヶ月、どんな景色を見てどんな言葉に出会うのだろうと柄にもなく浮き足立っている。

浮き足立っているからだろうか。年が明けて何度か神社に手を合わせたけれど、私としては珍しく、明るく過ごせる年に、と素直

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やさぐれ日記 #449  そんな冬の日

やさぐれ日記 #449 そんな冬の日

布団から出て窓を覗くと、雪の白が一面に街を覆っている、夢を見た。

朝は雪になる、とニュースで言っていたからだろう。

予定の時刻を10分過ぎて窓辺まで這い出ると、薄暗く灰色で、風が酷く冷たそうで、現実みのある微かな雪景色だった。

買い物に行こうと昼過ぎに外に出ると、アパートの階段がカチンコチンに凍っていた。

とんでもない罠。

私は悪いことをしたみたいに真剣に罠を潜り抜けて買い物に行き、また

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やさぐれ日記 #448  落ち葉

やさぐれ日記 #448 落ち葉

今日は風が少しきつくて、運転しているとやたらと落ち葉がフロントガラスに衝突してくる。

少し前を走っている車に合わせて、まるでダンスするかのように秋色の葉がくるくると舞う。

もうすっかり冬だ。

十字路で信号待ちをしていると、道を挟んで正面の同じく信号待ちしている右折路の車たちが、みなウィンカーを光らせている。

不揃いなリズムで点滅する光たちは、暖かいイルミネーションみたいで可愛らしかった。

やさぐれ日記 #447  中途半端な毎日

やさぐれ日記 #447 中途半端な毎日

好きなアイドル目的で買った雑誌をパラパラとめくっていたら、興味深い記事があった。

雑誌とか新聞とか、そういうのって選択していない情報が入ってくるから面白い。

ネットで検索は便利だけど、アクセスした情報に偏るし、アクセスすればするほど勝手に流れてくる情報もそちらに偏っていく。

何だか気付かないうちに、随分偏って固まった脳みそになっている気がする。

それとは関係ないけれど、ここ数日クロスステッ

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やさぐれ日記 #446  一首

やさぐれ日記 #446 一首

たくさん並んだ赤と白のコスチューム。

世の中って否応なしに、クリスマスを知らせてくる。

再来週の、クリスマス会の準備をしていてふと思う。

サンタクロースも今頃、こうやって赤と白の制服を洗濯したりして準備に精を出しているのだろうか。

近頃、短歌に少し興味がある私。

俵万智さんが、短歌の視点って何気なくおやっと気がつくようなこと、みたいに言っていた、気がする。

興味がある割に曖昧で申し訳な

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やさぐれ日記 #445  何のために生きているんだろう

やさぐれ日記 #445 何のために生きているんだろう

やりたいことはやり尽くしたから早く死にたい、と言う人に出会った。

年老いて思うように体が動かせなくなる前に、死んでしまいたいのだと。

体が思うようにいかなくなった長く生きた人たちを見てきたからこそ、そう思うのは自然だよなぁと私の中の一人は合点した。

だけど私の中のもう一人は、それだけじゃないだろうと納得しなかった。

その人は私に、この先生きて何かやりたいことはあるのか、と聞いた。

私はす

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やさぐれ日記 #444 真っ直ぐな道

やさぐれ日記 #444 真っ直ぐな道

真っ直ぐに目の前に伸びる道を見つめながら、このままずっと、ただ真っ直ぐに永遠に、伸び続けてくれればいいのに、と思った。

随分と早くなった日没の光に見惚れながら、コントロールしながらアクセルを踏む。

ハンドルを握っているこの時間は、交通の安全さえ守っていれば、他に何もしなくってもいい。

電話に出なくても、家事をしなくても、仕事をしなくてもいい。

まるで自分だけが世界からくり抜かれてしまったみ

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やさぐれ日記 #443  自惚れ

やさぐれ日記 #443 自惚れ

「メンタル的には一人で生きていけるメンタルです」と答えたら、「それは頼もしいね」と言われた。

だけどでも「それは違う」な、と瞬間的に思った、心の中で。

ここ数年、本当にそう思えるようになったと思っていたけれど、やっぱり精巧な強がりをして、本物そっくりのレプリカを作っていたに過ぎなかったみたいだ。

レプリカはどんなに精巧でも、本物にだけはなれない、絶対に。

今のままではいけないと何処となく感

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やさぐれ日記 #442  ブランチ

やさぐれ日記 #442 ブランチ

キーマカレーを炒めるときの、チリチリとした音が好きだ。

今日のブランチは、冷蔵庫の余り物で作ったキーマカレー、卵とチーズのサラダ、柿とヨーグルトだ。

図らずしもカフェのような食卓になった。

キーマカレーは本当は粉末のルーの方がいいに決まっているが、半分余っていた固形のルーを使う。

祖母がくれたじゃがいもは多くて使いきれなかったから、明日の食卓もじゃがいもだ。

サラダにはペイザンヌドレッシ

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やさぐれ日記 #441  1日

やさぐれ日記 #441 1日

友人にもらった缶のスパークリンワインを呑みながら、TVerでドラマの見逃し配信を観る。

仕事終わりに「最高」な一幕だが、このような過ごし方が「最高」だと言う通説が私を「最高」と思わせるのか、全く違う世界線に産まれていたとしてもこの一幕を「最高」と思うのか、果たしてどちらが正しいのだろう。

調子に乗って缶を減らすが、半分程度でもう顔が火照ってくる。私のアセトアルデヒドは相変わらず貧弱だ。

寄せ

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やさぐれ日記 #440 恋

やさぐれ日記 #440 恋

恋というのは成就するより、破れた方が絶大なインパクトを与えるらしい。

友人が語る大失恋の物語を聴きながら、私は甚く同情し、そしてこの、人の心をこうも揺さぶる恋というものを不思議なものと思った。

30年近く生きていると、それなりに大きな失恋話も幾度か聞いてきたのだが、それを物語る目はいつも同じような目をしている。

寂しげで、奥に怒りを煌めかせて、愛おしげな、そんな目だ。

ひたすら馬鹿をして、

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やさぐれ日記 #439  小さな

やさぐれ日記 #439 小さな

肌寒くて薄暗い灰色の空気。

秋なのか冬なのか、暮れのワンルームはどこか心細い。

朝ご飯に、昨日の鍋の残りを温める。

くつくつと泡のたつ音。

電気ケトルで湯を沸かし、少し高いお茶を入れる。

とぽぽぽぽと湯の溜まる音。

心細さにほんの少し、安らぎを灯してくれる音だ。

灰色の光。今日も空は雲が覆っているらしい。

心細いけれど、きゅっと締め付けられる美しい光だ。

この安らかな音も、美しい

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やさぐれ日記 #438  秋一番

やさぐれ日記 #438 秋一番

その日その日にしか紡げない言葉があると思うのに、気がつけばまた日が空いてしまう。

いつの間にか、随分ぐうたらになってしまった。

今朝のニュースが、今日はこの秋一番の冷え込みです、と言っていた。

この秋一番、っていったいいつからいつのことを、秋と呼んでいるのだろう。

でも実際、肌寒い、というのがとても似合う朝だ。

こういう、その年の冬が顔を覗かせる朝は、肌寒いくらいが一番好きだ、と毎年思う

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やさぐれ日記 #437  台風とパーマ

やさぐれ日記 #437 台風とパーマ

美容院に行こう、と思ったら大雨だった。

しれっと台風が来ていたようだ。

温帯低気圧になったり台風になったり、人間は定義を作るのが本当に好きだ。

低気圧だろうが台風だろうが、雨雲はただ漂っているだけだろうに。

半年近く放置した髪を切って、久々にパーマをかけた。

初めて前髪にもパーマをかけて、出来上がった緩いくるくるの髪型は、何だか猫背が似合いそうなそれだ。

家に着く頃には、少し湿気を含ん

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