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vol.021 ささやきはヒスイ色

ここ数年、毎年春になると、浮世離れした気分にさせてくれるヒスイカズラの花を観に、石垣島の川平にある石垣島サイエンスガーデン(川平ファーム敷地内)へ足を運んでいる。

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Strongylodon macrobotrys と何だか呪文のように長い学名を持つこの植物は、和名をヒスイカズラ、英名をJade Vineといい、原産地はフィリピンで、豆科ストロンギロドン属。現地では絶滅が危惧されている植物で、国際自然保護連合のレッドリストに登録されているそうだ。 

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ドーム型のハウスの枠組みは、一歩その中に足を踏み入れると、人を包み込むような感覚を演出していてる。

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散って落ちた花で青く染まる地面と、重なり合う葉と蔦の合間から漏れる光と、上から垂れ下がるヒスイカズラのその青の世界にのみ込まれる感覚は、まるで水面から光が差し込む海の中の世界のようだ。

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数年前にガーデンを訪れた時は、丁度フランシス・ホジソン・バーネットによる小説『秘密の花園』を読み終えたばかりで、静かな昼下がりに、まるで小説の延長線上に居るかのような不思議な感覚を覚えた。

今年は朝の光の中のヒスイカズラを観たいと思い立ち、竹富島から朝一便のフェリーに乗り、一人石垣島サイエンスガーデンを訪れた。入り口で受付をしてもらうと、「いってらっしゃい」と見送られ、ヒスイカズラのハウスへと向かった。

翡翠色の世界の中に、静かに朝の光が差し込む。

ミツバチの羽がささやく音がポリフォニーで空間を震わせ、時折遠くでこだまする鳥の声が重なる。

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ヒスイカズラの花が散る頃、八重山の長く暑い夏の気配を感じ始める。

石垣島サイエンスガーデン
https://www.passion-jp.com/sciencegardern/


【水野暁子 プロフィール】
写真家。竹富島暮らし。千葉県で生まれ、東京の郊外で育ち、13歳の時にアメリカへ家族で渡米。School of Visual Arts (N.Y.) を卒業後フリーランスの写真家として活動をスタート。1999年に祖父の出身地沖縄を訪問。亜熱帯の自然とそこに暮らす人々に魅せられてその年の冬、ニューヨークから竹富島に移住。現在子育てをしながら撮影活動中。八重山のローカル誌「月刊やいま」にて島の人々を撮影したポートレートシリーズ「南のひと」を連載中。


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