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医師におすすめの一般書籍

日々臨床に忙殺されていると、インプットが専門分野の実用的内容に偏ってしまいがちですが、あえてインプットを変えてみると思いがけない発見や学びがあり、月並みですが多読の重要性に気づかされます。

今回は最近読んだ本のなかで良書かつ比較的医師に親和性が高い?と思われる一般書籍を5冊ピックアップし、感想がてら紹介していきます。


働き方の損益分岐点


定義されたスペックはコモディティであり、コモディティは限界利益がゼロになるまで下がる運命にある、だから " 差異=ストーリを作れ " というのは瀧本哲史さんの「僕は君たちに武器を配りたい」で出てくる手厳しい指摘ですが、そもそも定義されたスペックがなければ話になりません。

では自分のスペックはどう作っていけばいいのかという疑問に対しておすすめなのが「働き方の損益分岐点」です。
本書の特に面白いところは " ラットレースに巻き込まれない方法 " " 毎日毎日全力でジャンプする働き方 " についての解説で、人生において有限である時間・金・労力をどのような土台(スペック)に変換するべきなのか考えさせてくれます。

医師であれば、キャリアパスや資格・技術の取捨選択、バイト業務の意味と危険性、学会発表と論文発表の違い、など身近な問題に関しても応用が利くのではないでしょうか。
例えば循環器分野では「これからは虚血ではなく不整脈の時代だ」という声もありますが、個人的には革新的技術に身を置くリスクや確立された技術の優位性というものについて考えさせてくれました。


失敗の科学


失敗はなぜ発生するのか、失敗にはどう向き合うべきなのかを航空業界や医療業界などを例に科学的な視点で解説してくれる本です。
この記事で紹介する本のなかでは一番身近な内容かと思います。

学習システムとしてのフィードバックをいかに構築するかというのは本書のテーマの一つですが、組織論だけではなく、個々人レベルの成長においても重要なポイントだと思います。
失敗が文字通り命とりになる業界にいる方であれば、特におすすめです。


天才を殺す凡人


ビジネスにおけるプレイヤーを天才・秀才・凡人に分類し、各プレイヤーの特徴や相互関係をストーリー形式で解説する本です。ストーリー自体はあっさりと読めますが随所にtipsがちりばめられている良書です。

個人的に印象に残ったのは、秀才と凡人の対立関係です。
この本は凡人である主人公の成長ストーリーなのですが、最終的には凡人の唯一の武器である " 自らの言葉(小学生でも理解できる言葉) " を用いて周りの共感を集め、理論武装した秀才と戦うことになります。この物語ではポジティブに描かれていますが、これってコロナ禍に限らず嫌ってほど見る光景じゃないですか? 
数によって担保される正しさの脅威というものを学ぶだけでも十分ためになる本だと思います。


予想どおりに不合理


行動経済学に関する本で、文体がユーモアに富んでいるためか、同分野で有名な「ファスト&スロー」より取っ付きやすい仕上がりになっています。

人間の非合理的な行動原理を科学的裏付けをもって解説した本で、特に他者とのコミュニケーションが多い仕事をしていれば実用性の高い実例に富んでいるかと思います。

個人的に印象に残ったのは下記の文章でした。

 一般に、人は給料のために働くが、そのほかにも仕事から無形の利益を得ている。これは給料と同じようにちゃんと実在し、とても重要なものなのだが、給料とちがってほとんど認識されていない。
(中略)
 多くの人にとって職場はたんなる収入源でなく、意欲や自己肯定の源でもあるのだと思う。

戒めとなる行動原理ですが、実際これが人を動かす道具として用いられている例も結構みるのではないでしょうか。


哲学的な何か、あと科学とか


医療とは科学であり、アクションは科学的裏付けのもと決定するわけですが、そもそも科学的な正しさとはなんなのか、というテーマをわかりやすく解説してくれるのが飲茶さんの「哲学的な何か、あと科学とか」です。

みんな大好きシュレディンガーの猫の話もでてきます。

飲茶さんの本はどれも難解なテーマをわかりやすく解説してくれるのですが、このわかりやすさの根源は文章に恰好をつけたり飾ったりという要素がないからだと思います。これってやろうと思ってもなかなかできないんですよね。

飲茶さんの文章が合う方であれば、哲学史について一気にわかりやすく解説してくれる「14歳からの哲学入門」もおすすめです。

というわけで、デカルトの時代から説明してきた哲学史であるが、ここに終了が宣言される。現在に追いついたから哲学史の説明を終了するのでない。まさにこの現代において哲学2500年の歴史が終了したから、ここで説明を終了するのだ。
すなわち「哲学は死んだ」のである。


感想やおすすめ書籍がありましたら、ご教示いだだければ幸いです。

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