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好きな映画を聞かれたとき、寧ろ答えない作品/ 『裁かるゝジャンヌ』

皆さんこんにちは。
8月もそろそろおしまいですね。

振り返ってみると今月は、劇場鑑賞12本、自宅鑑賞37本と個人的には映画生活が充実していた印象です。(8/27現在)




今回の文章のタイトルは、『好きな映画を聞かれたとき、寧ろ答えない作品』ですが、皆さんにはそんなような作品がありますでしょうか。

私にとって、『裁かるゝジャンヌ』という作品はそれほどまで大切な映画です。

カール・テオドア・ドライヤーの1928年の作品。
無声映画の最高傑作と名高いため、既にご覧になっている方も多いと思いますが、ご存知の通りこの作品は決して明るいものではありません。炎のような作品だと思っています。そして、私はこの"炎"に強く心を動かされた。

そんな『裁かるゝジャンヌ』を、今月中頃に初めて劇場で鑑賞する機会に恵まれました。

早稲田松竹の「奇跡の映画 カール・テオドア・ドライヤー セレクション」です。私はこの上映会の、『奇跡』『裁かるゝジャンヌ』2本立てを観に行きました。

2022年8月/ マチルダ撮影
2022年8月/ マチルダ撮影 

この作品を言葉にするのは憚られるほど、辛くて、苦しくて、悲しくて、けれど圧倒的な強さを持った、本当に本当に素晴らしい作品です。

無声映画が上映されること自体、近年では非常に稀だと思います。私自身、サイレントの劇場鑑賞は初めての経験でした。音の無い(厳密に言えば楽器の演奏はあります)作品が流れる大スクリーンと、あちらこちらからすすり泣きが聞こえる劇場は、なんとも不思議な空間と化していました。




冒頭でも綴りました通り、本作は私にとって「好きな映画を聞かれたとき、寧ろ答えない作品」です。

その心は恐らく、この圧倒的な "映画の力" を持った作品を前に、自分が無力であることを痛感しているからだと思います。

動かされた心を違うベクトルに向けることも、作品の奥深くまで潜り込むことも、言葉にすることさえも出来ません。こんなに素晴らしい作品が目の前にあるのに、ただただ圧倒されるだけで、私は何も出来ない。悔しくて悲しくて堪りません。

ドライヤーが紡いだ奇跡をいつか自分の言葉で愛せるように、そう願いながら日々を生きていきたいと思っています。


ありがとうございました。


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