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運動で血糖が下がる理由-糖尿病への効果【Doctor Tのスポーツ・エクササイズ医学】

こんにちはDoctor Tです。最近、暖かい日に半袖で外を走ることが出来、次の日もそのつもりで薄着で外出したら、寒くて…涙…失敗しました。このところ気温の上下が顕著ですね。

しばらくエリートアスリート系の記事が続いたので今回はひさしぶりに病気と運動シリーズにしました。ちょうど糖尿病と運動についてのわかりやすい論文が出されたので、それを参考に糖尿病と運動についてお話します。(Kirwan et al. 2023)

糖尿病は「食べる量>消費量」が主な原因

食べて摂取する糖分が、体を動かしたりして消費する糖分を上回り、体に糖が溜まっている状態を高血糖といいます。自覚はないかもしれませんが、この状態が、体の中で様々な問題を起こしています。これが持続して糖尿病になっていきます。

血糖を下げるのは薬だけではない

大原則として「食べる量を減らし、消費量を増やすこと」が治療になります。そのため、薬だけでなく生活習慣を変えることが第一選択の治療なのです。食べる量を減らすのが食事療法で、消費量を増やすのが運動です。患者さんを見ているとどちらかだけではなかなか上手くいかない印象です。得手不得手があるので、その人によって食事と運動のバランスを調整するのがよいでしょう。

運動の効果を理解するために、まずは血液中の糖分(血糖)の動きを説明します。

インスリンの働きにより、血糖は脳や筋肉などに取り込まれる

シンプルに言うと、糖分が体に入ると膵臓のβ細胞からインスリンの分泌が促されて、筋肉、脳、脂肪組織や肝臓に取り込まれます。糖を消費するというのは、これらの臓器が働くために血管からそれぞれの臓器に取り込むと言い換えることができます。本来であれば、体が必要としてるから食べるので、口から入った糖分は消化され血液中に移動し、血液中から筋肉に取り入れ利用されます。一時的に血糖は上がりますが、速やかに筋肉に移動して血糖は低下します。このようにして血糖はできるだけ一定に保たれます。インスリンについての説明はこちら(糖尿病情報センター)

高血糖が続くと以下のようなことが起き始めます。

血糖が下がりくくなる2パターン

糖尿病の病態である、血糖が下がりにくくなるパターンは大きく2つで、①インスリン自体の出方が悪くなる(インスリン分泌能低下)②インスリンへの反応が悪くなる(インスリン抵抗性)です。つまり、同じだけの糖が体に入ってきても、健康な人のように速やかに血糖を取り込んで利用することが出来なくなるということです。

糖尿病と診断がつくまでの10-20年間、過剰に糖を摂取し上昇した血糖に対して、その分インスリンがたくさん出ていたために、検査値は正常に「見える」(血糖が高くなっていない)ことがあります。しかし、長年インスリンがたくさん出ている環境に体が慣れてしまうとインスリンへの反応が悪くなり、糖尿病を発症するということがあります。インスリンを出す膵臓も疲れ果て、インスリン自体の出も悪くなります。

糖尿病の人の体では、上の①②の片方だけでなく、両方起きていることもあります。

運動はこの2パターンに働きかける

糖尿病の人にとって運動はどんな効果を発揮するか。下記2つが挙げられます。

  1. 筋肉を大きくする、筋肉をたくさん動かすことで糖分をたくさん利用する

  2. 有酸素運動で脂肪を減らしインスリン抵抗性を下げる(インスリンへの反応をよくする)

血液の中の糖(ブドウ糖)はインスリンによって取り出され、筋肉や脳などの細胞に取り込まれます。
こうして血液中の糖は低下します。

筋肉を大きくする筋トレ(strength)

実は骨格筋(内蔵や心臓以外の筋肉)が全身の糖分の80%を消費しているというのは驚きです。そのため、トレーニングによってこの筋肉を大きくするというのは効率のよい消費方法になりますよね。

脂肪を減らす有酸素運動

有酸素運動は筋肉内の脂肪を消費します。脂肪はインスリン抵抗性を悪化させているので、それが減ればインスリン抵抗性が下がる、つまりインスリンへの反応が良くなります。他にもメリットはあります。

運動もこのどちらかより両方やったほうが効果がぐっと上がります!(表紙のような運動は両方の要素が入っています)

おすすめ有酸素運動

HIIT(High Intensity Inteval Training)をご存知でしょうか?文字通り、けっこう強めな強度と弱めの強度の運動を短時間(1分くらい)で繰り返す有酸素運動の方法です。だらだらと動き続ける有酸素運動(Continuous)より効果があるようです。

運動のタイミング

朝より午後、食前より食後がより効果的なようですが、無理をせず自分の体調やスケジュールに合った現実的なプランを立てましょう!

単発の運動効果と定期的な運動効果

一回の運動でももちろん血糖への効果はありますが、48-72時間程度の持続です。これを定期的に続けると当然長期的効果が得られます。運動は、インスリン抵抗性の改善においては効果が出るのが早い効果的な方法の1つで、数日以内に効果を発揮してくるようです。

体重が減る前に血糖への効果は出ている!

最後に運動が好きでない方への朗報です。運動してまだ体重が減っていない段階でも、上で説明したような血糖ヘの効果は確認されています。そして、以前にも話しましたが、すでに運動している人より、今まで運動してなかった人のほうが、同じ量の運動をしたときの変化は大きいこともわかっています!

まとめ

  • 食べる量>消費量が続くことが糖尿病の原因

  • 糖尿病の人は同じ量の糖が体に入ってきても正常な人より血糖が下がりにくい

  • 運動で糖の消費を増やし、インスリン抵抗性を下げることができる

  • 筋トレと有酸素運動、それぞれ別の効果があるので両方やるのがより効果的

  • 単発でも効果はあるが定期的な運動で長期的な効果を目指すのがよい

  • 体重が減る前に血糖への効果は出ている

今回は糖尿病の予防と治療に対しての運動の効果を説明しました。すでに糖尿病になっている方は、血管もダメージを受けていることがあるので、運動を始めるときには主治医に、どの程度の運動をしていいのかを必ず確認しましょう。

運動は必ず安全であって意味があるものです。過ぎたるは及ばざるが如しなので、ぜひ安全に楽しく体を動かしてくださいね。

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