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三島風散文

敷地の裏庭に面したプールでの水浴が終わると、
マーブル模様の入った前掛をした女給仕が、
窓際のテラス席にアイスコーヒーを置いてくれるのは、
ローマから越して来てからの常だった。
グラスの中でカラカラと音を立てる四角い氷たちの音色は
風になびく軒下の風鈴と共鳴し、
ヴァルプルギスの季節が終わり、盛夏の訪れが近い事を示していた。
テーブル上のガリマール版が、熱風にさらわれるかのように、パラパラとめくられると、
胸騒ぎと共に、甘美なる背徳の記憶が回顧され、
飲み終えたアイスコーヒーのグラスにびっしりと付いた水滴が、
夏の太陽に照らされて「ぎらぎら」光っているのを、
後ろめたい気持ちで見つめた。

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