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距離感

人との距離感って大事だよな。
離れすぎてもダメだし、近づきすぎてもダメなときもある。
実際の体の距離感もあるし、気持ちの距離感もある。
人間はその距離感を自然ととってる場合もあるし、
意図的にとってる場合もある。

絶妙な距離感ってのは難しいよね。

それは家族にも言えるし、親子にもいえる。

今は放って置くべきか、それとも近づくべきか。
かまって欲しそうだから、近づくと、「放っておいてよ!」なんて言われたり。逆になんか近寄りがたいオーラだから放っておくと、「寂しかった」って言われたり。

意味がわからない。
女性と子供。わからない。
おじさんは、やはりおじさん同士の距離感が一番わかりやすいのか。
いずれにせよ、人の距離感は、
なんとかディスタンスみたいに何メートルみたいな単位じゃ測れないし、
微妙に変わるってことだな。

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息子が休校になって3ヶ月目。
俺のリモートワークも同じく3ヶ月目。

もう5月になった。

最初の頃は、こんな感じだったんだけど、

あいかわらずYouTubeは見ているが、
今は勉強の時間、今は遊ぶ時間、という設定もなんとなく出来ている。

そして最近は、お互いの距離感にも慣れた。

「パパ、打ち合わせだから」

息子「あいよ」


ってなもんで、その間は部屋に入ってこない。

しかしたまに、ふいに打ち合わせをはじめると、
気になって入ってくる。
おかげで何回か打ち合わせに登場するはめに。
みなさん、その節はご迷惑をお掛けしました。

とはいえ、人間、慣れてくるものである。

お互いが、お互いを尊重した絶妙な距離感が
俺と息子の間で確実に出来上がりつつあった。

そんな矢先。

我々の日常に新たな刺客が。

そう。


オンライン授業。


小学校の話ではない。
息子が通うアートスクールというカルチャースクールが、
ついにオンライン授業になると。

巷で話題のオンライン授業。
俺も息子も初体験なこの仕組みにはたして適応できるのか。

そしてついに、授業当日を迎えた。



午前10時。

いつもなら通うこの時間に、iPadでzoomに接続。

画面の中には先生と、数人の生徒たち。

おお!オンライン飲み会みたいだ!

いや、飲み会ではない。これは授業。

ここまで、息子もビデオ通話は、何度も体感してきたので、
画面越しでのコミュニケーションには慣れている。

しかし、これはれっきとした授業である。

からして、事前に2人で打ち合わせをした。

「おまえさ、パパは一応隣で見てるけど、
普段の授業みたいに、なるべく1人で話したりするんだよ」

息子「わかってるよ。普段、スクール行くときみたいにでしょ?」

「そうそう」

息子「でもさ、どうしてもわかんない時は聞いてもいい?」

「それはいいよ」

そんな感じで。



画面の中で、生徒たちが、思い思いに話している。
先生はみんなが接続に異常がないか確かめている。

先生「〇〇くーん、聞こえるかな〜?」

「はーい!」

ほうほう、オンライン飲み会みたいだ。

先生「〇〇くんは、どうかな〜」

先生が息子に呼びかける。

息子は無言で小さく胸の前でバッチグーをつくる。

先生「〇〇くん〜」

「おい!声出せよ!」(超小声)

息子「え?あ、はーい、はーい、はーい」

先生「お、オッケーだね〜!」

先が思いやられすぎる、、、


みんなも揃い、いよいよ授業開始。
この日は「自画像を折り紙などを使ってコラージュで作る」という課題。

先生は課題を説明する時は全員の音声をミュートして、
みんなが聞きやすい環境にしてくれる。

俺の存在はみんなわかってるし、
他の家も傍に親が付いているようだし、
特に隠れる必要はないのだが、
一応、距離感としては、子供たちだけ、という設定でいこう、
という暗黙な雰囲気もあり、どの家も親は小声。  
そして画面には映らない所で見ている。

俺も、それはそうだと思うから、
息子には画面の外から小声でアドバイスを送っていた。

音声ミュート中に息子が聞いてきた。

息子「パパ、なんでそんな小声?
そして、なんでそんなちょっと離れてる?」
「いや、だって、おまえの授業だからさ」
息子「なに、いないことにしてんの?」
「いや、そんなわけじゃないけど」
息子「じゃ普通に話せば?」
「大丈夫だよ、てか、おまえ、説明聞いとけよ」
息子「大体わかったよ、あれでしょ、自分の絵を書いて、そこに折り紙とか貼っていくっていうさー」
「そうそう、そうだけど、今先生が説明してるから。こっち見ないで画面見とけ」
息子「いやわかってるけど。もう作っていいのかな」
「いや、まっとけよ」
息子「えー、でもさ〜」


先生「あれ?〇〇くん、どうした?」



ミュートが解除され、先生が訪ねてきた。

その時、俺は気づいた。

息子は話すときに、身振り手振りが大きい。

先生は、おそらく、
画面の外をみながら、眉間にシワをよせ、
身振り手振りで話す息子を見て、
あれ?どうしたかな?なんかあったか?
と、心配してくれたのだ、と。

すかさず
「すいませーん、大丈夫です!続けてください〜」
と声を出す。

先生「あ、お父さん!了解でーす!」

「は〜い」

なんじゃ、こりゃ。



その後、作業スタート。
みんな集中してやってる。

やっぱり画面越しとはいえ、
みんなで1つの事をやってる光景っていいよな。

先生のナビゲーションも上手だし、
オンライン授業、いいな。

ただし、

息子「パパ、のり」
「のり?のりがどうした?」(小声)
息子「そこの、のり、とってよ」
「自分でとれ」(小声)
息子「けちだなぁ」
「けち?けちってなんだよ!」(小声)
息子「はぁ?何?聞こえないよ」

「あっ!? けちってなんだよっていってんだよ!!!!」



先生「大丈夫?」


「大丈夫でーす」
息子「大丈夫でーす」


と、何度か先生に気を遣わせた事は
次回の課題だな。

オンライン授業における親子の距離感。
あらたな我が家のスタンダードに
しなければならない。


_____

最後に、
この状況下でも出来る事を模索して、
迅速に対応してくれた先生方に感謝申し上げます。
もちろん、リアルな教室での授業とは違う部分もありましたが、
先生方の熱意、子供たちとの距離感は
いつもと変わらなかったと思います。

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では、また来週!








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