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軌跡と未来、ロックへのエール - Base Ball Bear LIVE IN LIVE 17才から17年やってますツアー @なんばHatch -

 文化祭への出演を目指し、17才でバンドを結成してから17年が経ったBase Ball Bear。青春の象徴としての「17才」を歌いつづけてきた彼らが、これまでの道をどう歩み、これからどこへ行くのか。それが明確に示されたライブだった。私は「16才から11年追いかけています」なファンなので、好きすぎるあまり彼らのことを冷静な目で見られる自信はないのだけれど、とにかく熱量だけ置いておきたくてキーボードを叩いている。

 待ち時間のBGMには、17年前の名曲がずらり。私は開演20分くらい前に会場に入ったのだが、その時に流れていたのは椎名林檎&松崎ナオカバーの“木綿のハンカチーフ”。そこから中村一義の“キャノンボール”、SUPERCARの“Strobolights”と続き、そしてナンバーガールの“Num-Heavymetallic(の叫びの部分)”→“Num-Ami-Dabutz”! 選曲はスタッフさんとのことだったのだが、ベボベファンからすればエモ必至。周りにいる人々の会話の端々からも「ナンバガ」の単語が多く聞こえてくる(ちなみにNum-Heavymetallicの叫びの部分が流れた時、会場のざわめきが一度止まった。隣にいた女子ふたり組が「ほりくん(Dr.堀之内大介)が舞台裏から叫んでるんかと思った!」と言っていて笑ってしまった。ありえなくない(笑))。

 定刻の17時を少しすぎてようやく客電が落ち、彼らのSEであるXTCの“Making Plans For Nigel”が流れはじめた。「17才から17年やってますツアー」の大阪公演のはじまりだ。

 1曲目は予想通り、“17才”で幕を開けた。ツアータイトルに「17才」を掲げていることもあり、アルバム・『十七歳』から多くの曲が披露されることが事前に告知されていたのだ。12年前の曲だがその時をまったく感じさせない瑞々しさである。イントロのギターの「ジャカジャーン!」が鳴った瞬間に、もう胸がいっぱいになってしまう。何回聴いても、その青さと輝きに鳥肌が止まらなくなる1曲である。

前髪で隠した心を さぁ、開いて
君の事に気付いてる人がきっといるから
ひとりじゃない感動 覚えたことはないか?
名前呼んで笑い合う事に 意味なんていらない
- 17才

 改めて、歌詞のここをいいなぁと思う。10代の頃、ずっとお守りのように目に焼き付けていた部分だ。あの頃って、どうしてあんなに「自分は孤独だ」と思っていたんだろう。もう10代の自分を思い出すことも難しくなってきたけれど、ベボベはずっと私の寂しさに寄り添い続けてくれていたんだなぁと感じる。

 続く“試される”は先月末発売の1st EP『ポラリス』から。2016年に前ギターの湯浅将平が脱退してから、試行錯誤を重ねてきたベボベ。2018年の頭までは名だたるギタリスト(the telephones・石毛輝、ex.DOPING PANDA・フルカワユタカ、POLYSICS・ハヤシ、田渕ひさ子、キリンジ・弓木英梨乃)をサポートに迎えライブを行なってきたが、2018年中頃から後半にかけては3人体制で2本ツアーを回った(通称『3人映えツアー』)。その経験から生まれてきたであろう楽曲は、シンプルかつソリッドで「スリーピースだからこそ」響いてくる。

 “ヘヴンズドアー・ガールズ”(これも10代の頃のお守りの曲)〜“抱きしめたい”〜“Flame”と、『十七歳』と『ポラリス』の曲が混じり合いながらライブは進んでいく。曲終わりにステージが暗転し、関根史織(Ba)がベースから楽器を持ち替えると“Transfer Girl”のイントロが流れだす。彼女が持ち替えた楽器はチャップマンスティックと呼ばれるもので、ごく簡単に言ってしまえばギターとベースが合体したようなものである。3人映えツアーがはじまった頃から、彼女の武器のひとつとして導入されている。「ギターロックの限界」に挑み、さまざまな実験を行なった3.5thアルバムの曲だからこそ、この武器が映えていた。

↑チャップマンスティック。不思議な見た目。
そして史織ちゃんかわいい。

 “FUTATSU NO SEKAI”(めっちゃレア曲では?)〜“初恋”(やると思ってなくてテンション爆上がり)からの、中盤“青い春.虚無”〜“PARK”の流れからは体温が一気に上昇! “青い春〜”は何度聴いてもヒリヒリ感のたまらないロックチューン。個人的に、この日はこの曲を聴きにきたと言っても過言ではないくらい。やってくれて心の中で思わずガッツポーズ。そして“PARK”は音源でも十分そのかっこよさを発揮していたけれど、これがライブ映えしすぎてたまらなかった! 小出祐介(Vo&Gt)のマシンガンのようなラップと攻撃力高めのリズム隊の音が、私たちのこぶしをどんどん突き上げさせていく。

 (たぶん)、ここでこの日3度目のMC。やっぱり触れないわけがない、「ナンバーガール再結成」の話へ。「なんかもう、ロックがまたきたな……みたいな感じしなかった? 俺が言いたいこと、わかる?」と尋ねるこいちゃん(ただのファンだからもう普段呼んでるように呼ばして)に、「あのね、私はすごくわかるから……。もう、ただごとじゃない」と感慨深げに胸を押さえる史織ちゃん。彼らは高校生の頃、解散直前のナンバーガールのZepp Tokyo公演をメンバーで観に行っている。あまりにもアツくなり、ライブ後にみんなで観覧車に乗って「いつか俺たちもここで!」と誓ったというくらい、純粋にファンである。奇しくも、彼らがバンド活動をしてきた17年間は、ナンバーガールが解散して復活するまでの期間と同じで。ほりくんの言葉を借りるなら、「ナンバーガールと共存したことがなかった」。けれどこの度の復活により、ナンバガベボベが同時に存在する世界ができあがったのだ。

 「バンドを17年やってるとさ、『ずっと聴いてきました!』とか言ってくれる若いバンドマン-それこそこの間対バンしたキュウソのオカザワくん-とか、ラジオのDJの子とかがいて。そうやって聴いてくれてた子たちが音楽をやったり、音楽を伝える側になってたりするわけじゃん。すごくうれしい話で。でも俺たちも同じように、俺たちの前には偉大なるロックの先人がいてさ、そういう人たちの前では僕たちもキッズなわけですよ」。こいちゃんの語りに熱っぽさを感じて、こちら側の胸もアツくなってくる。「ナンバーガールが再結成して、止まってたロック時計が動き出してきたなって感じがして。俺たちもまだまだバンドを続けていきたいなと思ったし。なんか、今後ともロックをよろしくお願いします!」。ロックバンドのフロントマンから、この日この言葉が聞けたこと。記念のように感じられた。かっこよすぎるでしょう。

 そしてライブも終盤戦。EP・『ポラリス』から、表題曲“ポラリス”。メンバー3人でBase Ball Bearというバンドをやっていくこと。その決意表明だ。歌詞にも「3」にまつわるキーワードがたくさん散りばめられている。けれど、いままでの4人体制をなかったことにしてしまうのではなく、過去曲に出てきた単語やメロディを使うことで過去の4人と現在の3人を結んでいるように思える。しかもこの曲、3人がそれぞれボーカルを取るパートがあるのだが、ラスサビでは3人がハモって閉じられ、最後まで彼らの強い絆を感じることができる。

 ここから、“星がほしい”(超レア曲! 大興奮!)〜“LOVE MATHMATICS”(3人だけでこの曲をやるのは、毎度ながらすごくて驚く)〜“The Cut”(こいちゃんの肺活量とピッキング技術に惚れ惚れ)と怒涛のアガり曲が繰り広げられていく。思い思いに踊りまくる観客たち。思わず目線をステージから客席に移せば、みんなのキラキラした目が見えた。

 そして本編ラスト。「すべてのロックバンドは!」というこいちゃんの掛け声からはじまったのは“ドラマチック”! この演出に胸打たれ、思わず視界が湿り気を帯びる。彼らの軌跡と未来に、彼らに憧れた後輩たちに、彼らが背中を追った先人たちに贈られた祝福とエールだった。

時がチクタク 止められそうにない 涙が止まらない
今 君がいて俺がいる風景 思い出に変わって
また出会えそうで 一度きりのドラマ
さぁ、熱くなれるだけ 熱くなればいい
- ドラマチック

 一度はけたメンバーが、拍手の中アンコールのためステージに戻ってくる。アンコールは「友達が結婚した時につくったんですが、式がまさかの親類のみで誘われなくて(笑)、今日お焚き上げができれば」と“協奏曲”がはじまる。聴くたびに、「こんな恋愛がしたい……。そして願わくば、こんな風に好きな人と夫婦になりたい……」と思ってしまう曲だ。

酔った君が外しだした 二重三重の仮面には吹き出した
そんな君がまだ背負ってる 重い荷物は僕に支えさせて
迷うことがあっても 何度でも言うから
忘れないでね 君が好き
- 協奏曲

 この曲をつくった時のこいちゃんは22〜23歳。その年齢でこの歌詞が!?と驚いてしまうほどの深みを感じさせる。34歳の彼が歌うと、より一層大人の色気と海のような寛大さが漂う。頭の芯がじんわりとして、胸がいっぱいになる。

 曲が終わり立ち去ると、引き続き会場からは惜しむように拍手が鳴り響く。私もその拍手に自分の手を重ねると、再びメンバーがステージに! 「それじゃあ、少年みたいに」というこいちゃんの言葉に、ほりくんの「ジェッジェジェッジェジェネレーション!!!」の叫び声がつづき、彼らの初期曲“夕方ジェネレーション”が! うれしすぎて、思わず「うわぁああああ〜!」と大きな声を上げてしまう(※ ひとりで観に行ってます)。久しぶりに聞くこいちゃんの「ギター俺!」からのギターソロも、また一段と少年のように音が弾けていて、まばゆい夕方がステージの上で描かれていく。

 MCでもあったように、後輩バンドにとっては偉大な先輩でも、ロックの先人の前では「キッズ」なBase Ball Bear。大人の顔も少年の面影も魅せながら変わりゆく3人を、これからもずっと変わらず見ていたいと思った一夜だった。最高でした。本当に本当に、ありがとう!

※ MCは「大意(雰囲気)です」。ご了承ください。

【セットリスト】
01.17才
02.試される
03.ヘヴンズドアー・ガールズ
04.抱きしめたい
05.Flame
06.Transfer Girl
07.FUTATSU NO SEKAI
08.初恋
09.青い春、虚無
10.PARK
11.ポラリス
12.星がほしい
13.LOVE MATHEMATICS
14.The Cut
15.ドラマチック
EN.
16.協奏曲
WEN.
17.夕方ジェネレーション

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