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アンデッド

私が20代の頃に短編映画用に書いたシナリオをnote用に書き起こしたものです。
特に映像などにはせず、コンクールなどにも応募せず、そのまま保管していました。短編とは言えnoteにすると3000文字を超える長文になります。良かったら読んで感想いただければ幸いです。

登場人物
安藤 哲人(23):主人公
中野 舞(21):哲人のバイト先で働く大学生
ゆうじ(26):かいじの仲間
かいじ(26):ゆうじの仲間

1 哲人の家・風呂場
 ユニットバス。手首から血を流して湯船でぐったりする男、安藤哲人。落ちる血。水滴。灰皿代わりにされた便器。湿った本。突然目を開けて湯船から立ち上がる哲人。

2 同・部屋
 タオルで髪を拭き、パンツ一丁のまま部屋に哲人が入ってくる。部屋の中からいったん窓の外を見つめる。走り出す。開いた窓から飛び出し、その勢いでベランダから飛び降りる。

タイトル(アンデッド)

3 哲人の家・部屋
 部屋には薬瓶が転がっている。棚の上に女性(中野舞)の写真が数枚飾られている。哲人が部屋に入ってきて座り、タバコを吸う。タバコを持つ右手からは血が流れておらず、傷跡が少しあるだけ。哲人が携帯電話をチェックして舌打ちして放り投げる。
哲人「また、死ねなかった」
 カレンダーの日付に丸がしてあり「告白」と書かれている。それ以降の日付にはバツが書かれている。
哲人の声「舞ちゃんから返事が来ないまま、一週間が過ぎた」

4 ビル・一室
 ロッカー、机、椅子などがホコリをかぶって置いてあり、使われていない事務所のようなところだという事がわかる。そこに目出し帽を被った怪しげな男2人(ゆうじ・かいじ)がいる。その奥にロープで縛られて口をテープで縛られてい横たわる人影。服装から女性とわかる。
ゆうじ「いつまでこんな事すんだよ」
かいじ「うるせえな。腹減ってんだから話しかけんなよ」
ゆうじ「お前が急にこの女さらってきたから、こんな風になってんだぞ」
かいじ「だって誘拐して借金返そうって言ったのそっちじゃん」
ゆうじ「だからって、もっと金になりそうなのさらってこいよ」
女「・・・」
かいじ「じゃあどうすんだよ。逃すのかよ」
ゆうじ「バカ、んな事したら自首するようなもんじゃねえかよ」
かいじ「わかんねえだろ、まだ顔見られてねえし」
ゆうじ「さらってきて『おいゆうじ!良い女さらってきたぞ!』って言ったのお前だろ」
かいじ「・・・」
ゆうじ「しかも『おい沢田ゆうじ聞いてんのか』ってわざわざフルネームで呼びやがって」
かいじ「・・だったらどうすりゃ良いんだよ!」
 と言って立ち上がる。
ゆうじ「おい!どこ行くんだよ」
かいじ「メシ買ってくんだよ」
ゆうじ「気をつけろよ」
かいじ「わかってるよ!」
 ゆうじを睨みながら部屋を出て行くかいじ。

5 路上
 脇道のようなところをぼーっとして歩く哲人。電柱に頭をぶつける。その場で座り込み、ぶつけた電柱を見ると貼り紙が貼ってある。(黒猫を探しています。3歳。金一封差し上げます)などと書かれている。猫の鳴き声で振り向く哲人。黒猫がいる。立ち上がる哲人。通りの向こうから車が来る。轢かれそうになる猫を助けようと道に飛び出し轢かれる哲人。沈黙。気まずそうにそそくさと逃げる車。倒れている哲人。目を開ける。黒猫が走り出す。それに気づき立ち上がり追いかけて行く。

6 ビル・入口
 入口から目出し帽を被ったかいじが出てくる。横を通る女性がかいじを見てあからさまに避ける。それに気づき、慌てて目出し帽を脱ぎ歩いて行く。黒猫を追いかけてビルに入って行く哲人。

7 ビル・一室
 横たわる女性。目が開いている。なんとか縄が外れないか試しているがダメそう。ゆうじはそれをぼーっと眺めてタバコを吸っている。それをドアの影から覗く哲人。床に落ちている棒を拾って近づく。女性は哲人に気づく。
女性「んー!んー!」
ゆうじ「どうした?」
女性「んー!」
ゆうじ「え?え?」
 女性の目線に気づき振り返るゆうじ。哲人がゆうじの頭を棒で殴る。倒れるゆうじ。
女性「んー!」
哲人「だ、大丈夫ですか?」
 と言いながら女性の口からテープを剥がす。
女性「哲人くん・・・」
 晢人の部屋に貼ってあった写真の女性・中野舞であった。
哲人「ま、舞ちゃん?えー!?」

8 同・外
 かいじがコンビニ袋を持って歩いている。

9 同・一室
 舞の縄が緩んでいる。
哲人「なんでこんな事になってるの?」
舞「わかんない・・・道歩いてたら急に・・・」
哲人「連絡ないから、嫌われてんのかと思ったよ」
舞「・・・ごめんね」
 変な沈黙。どこからか足音が聞こえる。
舞「あ」
哲人「ん?」
 足音が大きくなってくる。慌てる2人。

10 同・廊下
 ビルの廊下を歌いながら歩いているかいじ。いったん立ち止まり目出し帽を被る。

11 同・一室
 入口からかいじが入ってくる。
かいじ「ただいま」
 哲人がゆうじの服とマスクを被っている。舞の口にテープが貼られていて、縄も元に戻っている。
かいじ「ほら、お前の分も買ってきたから食えよ」
哲人「・・・(頷く)」
かいじ「なんだよ!まだ怒ってんのかよ、良い加減にしろよ」
 哲人、手を横に振る。
かいじ「ん?」
 哲人、ノドを指差す。
かいじ「・・・喉が?」
 哲人、手でバツを出す。
かいじ「喉がやられちゃって喋れない?」
 哲人、かいじを指差して何度も頷く。
かいじ「って、さっきまで喋ってたじゃねえかよ」
 慌てる哲人。心配そうに見守る舞。哲人、妙なジェスチャーで説明する。
かいじ「突然?・・・激しい花粉症・・・に?なっちゃった・・・みたい、だ」
 哲人、頷く。
かいじ「・・・」
哲人「・・・」
かいじ「まぁ、しょうがねえか」
 ホッとする哲人と舞。
かいじ「とりあえず食おうぜ」
 哲人、頷いてコンビニ袋から魚の弁当を取り出して膝の上に置き蓋を開ける。箸を取り出し割る。
かいじ「あれ?お前、魚嫌いじゃなかったっけ?」
哲人「・・・」
 哲人、割った橋と弁当をかいじに差し出して、どうぞ食べてとジェスチャーする。
かいじ「・・・ありがとう」
 不思議そうな顔をしながら弁当を食べるかいじ。もうひとつの弁当を取り出し、食べ始める哲人。突然ロッカーが開き、パンツとTシャツのゆうじが手にモップを持って飛び出してくる。思わず立ち上がるかいじ。弁当を吹き出す哲人。
かいじ「・・え・・」
 ゆうじ、一瞬迷うがモップの柄でかいじを殴る。その場に倒れるかいじ。
舞「んー!んー!」
 哲人、目出し帽を外して立ち上がる。恐怖で動けない様子の哲人。ゆうじが哲人に気づき歩み寄ってくる。持っているモップで哲人を殴ると机と椅子に倒れ込む。
舞「んー!んー!」
 ゆうじ、かいじに近づき。
ゆうじ「大丈夫か?」
舞「んー!んー!」
ゆうじ「よし、ここ持て」
 かいじの腕を自分の肩に回すゆうじ。
舞「んー!んー!んー!」
ゆうじ「なんだよ、うるせえな」
 ゆうじが振り返ると哲人が立っている。自分の頭を手で確かめて何ともないのに気づく哲人。
ゆうじ「・・・」
かいじ「どけ!」
 ゆうじの横からかいじが飛び出しバットで哲人の頭を殴る。その場で倒れる哲人。
舞「んー!んー!」
 かいじがゆうじの肩を叩き、2人で舞の方向へ歩き出そうとした瞬間、哲人が再び立ち上がる。
かいじ「え?」
 ゆうじとかいじが顔を見合わせる。ゆうじ、おもむろに懐からナイフを取り出し哲人の腹を刺す。腹から抜いたナイフには血がついている。哲人、不思議そうにゆうじとかいじを見つめた後、自分の服を腹までめくると腹には小さな傷が残っているだけ。
ゆうじ・かいじ「・・・」
舞「んー!」
 逃げ出すゆうじとかいじ。
舞「んー!んー!」
 舞を見つめる哲人。それに気づき恐れる舞。舞に近づき口のガムテープを剥がそうとする。手から縄を抜いてガムテープを自分で剥がす舞。
舞「ひい」
哲人「あの」
舞「いやぁぁ」
哲人「舞ちゃん」
舞「な、なになに」
哲人「返事聞いてなかったからさ」
舞「へ、返事?」
哲人「あの・・こ、告白の」
舞「え、い、今?」
哲人「お願いします!」
 舞の前で右手を差し出して頭を下げる哲人。
舞「あ、あの、ごめんなさい」
 ペコっと頭を下げて部屋から逃げるように出て行く舞。追いかける哲人。床に転がっているバットに足をつまずかせて転ぶ哲人。そのままピクリとも動かない。倒れている哲人の上を黒猫が横切る。

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