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仮想現実の根拠が怪しい。量子力学のあやふやな解説 シュミレーション仮説を検証 

シミュレーション仮説(仮想現実)について、ネット上では様々な情報発信をされる方がいます。その解説のなかで、とくにYoutubeでは「この世は仮想現実だった」とする動画が多く、まるで断定口調のような印象を受ける動画が少なくありません。そこで個人的な見解を踏まえて記事にしたいと思います。

一応、私は理系の大卒で、物理学は授業でも多少かじっているので、まったく物理学を知らない人よりは、量子力学について知っていると思います。

「この世は仮想現実」と主張するシュミレーション仮説とは?

シュミレーション仮説をご存じでしょうか?
これは、この世の中のすべてが仮想現実で、VRゲームのように「第三者のコンピューターによって電子的なシュミレーションの世界が構築されており、私たちはその世界の住人である」とされるものです。

世の中の誰であろうと、仮説を発表するのは自由だと思いますので、仮説の存在自体は構わないのですが・・・問題なのは、Youtubeでよく言われるシュミレーション仮説の根拠なのです。

その根拠に出てくる主役が量子力学

Youtubeでさかんに「この世は仮想現実」「シュミレーション仮説」と主張する動画が公開されている

わかりやすい例を出すために、ナオキマンさんの動画を引き合いに出してみます。ナオキマンさんの動画を私は結構好きなので、基本的には様々な動画で彼の主張を肯定的にとらえています。そのため、彼の動画の多くは価値があるものと思っています。

しかし、仮想現実については、「これって根拠として成立するのか?」と思えるものばかり。実は、ナオキマンさんに限らず様々なユーチューバーが、彼とそっくりな「仮想現実とその根拠」の動画を、たくさん公開しているのです。

内容が似ていてまるで金太郎飴状態といったところでしょうか・・・。

そのため、これは彼個人の主張というより、たくさんある主張の代表例として挙げさせていただきました。

問題なのは、仮説にすぎないのに多くのユーチューバーが「断言口調」

ナオキマンさんはサムネイルに「仮想現実!?」とハテナマークがあるだけ良いです。

問題なのは、「シミュレーション仮説は、一つの説、可能性にすぎない」のですが、Youtubeの様々な動画を見渡すと、サムネイルで断言口調なのがズラリなのです。

「世界が仮想現実である証拠」
「この世界は99.9999%仮想現実」
「この世界は既に仮想現実でした」
「地球の文明は異星人が作った仮想現実」
「この世界は仮想現実 決定的証拠」

こんなに「証拠」とか断定口調でいうのだから、さぞすごい根拠でも発見されたのか!?と思って動画を見ると・・・その根拠は「物理でよく知られている量子力学の基礎中の基礎のオンパレード」なのです。

ユーチューバーの語る仮想現実の根拠を知れば知るほど「これ、根拠として少し弱くない?」というものばかりです。

それでは、具体的に良く知られている3つの例を挙げてみましょう。

仮想現実の根拠①「量子力学の2重スリット実験」は正しいのか?

2重スリットの実験はあまりに有名ですね。一応、簡単にいうと人間が観測するときと観測しないときで「量子の軌道が違う」というものです。

■2重スリットの実験
量子を2重スリットに向けて電子銃で放つと、量子の経路を観測するときは2重スリットの向こうのスクリーンに2つの線ができて、量子の経路を観測しないときは波のようなたくさんの模様ができる、というものです。

まるで人に見られているかどうかで、経路を変えるという不思議現象です。

これを知らない人からすれば「スゴイ」という感動を受けると思いますが、その感動の勢いで「仮想現実」を受け入れていいのかは話が別です。量子力学スゴイという印象と仮想現実は別ものです。

要は、人が見ているときと、見ていないときで量子のふるまいが違う、というだけの話。それがゲームのようなシュミレーションの世界に私たちがいるとする説と直接的にどう関係あるというのでしょうか?

2重スリット実験からわかることは、
①「この世にはパラレルワールドがあるかもしれない」
②「世界は無数の世界に分岐されている可能性がある」
③「人が観測するときは粒子、観測していないときは波に過ぎない可能性が高い」

学問としての量子力学の世界では「その可能性が高い」ということであって、断定ではないところがポイントです。

断定していない理由は「コペンハーゲン解釈」と「エヴァレットの多世界解釈」の2つの解釈があるからです。まだ、学問としての量子力学の世界では、どちらかに決着しているわけではありません。

「これが、仮想現実の根拠です」と言われると・・・ちょっと根拠としては飛躍している印象を受けますよね。

仮想現実の根拠②「量子力学・シュレディンガーの猫」は正しいのか?

シュレディンガーの猫とは、量子力学をうまく説明するために猫を題材にした思考実験です。ナオキマンさんの動画内容はこの「シュレディンガーの猫」の説明で物理学的に正確ではありません。正しくはこれから解説します。

これを知るためには、量子のふるまいを知る必要があります。

量子は同じ場所で「そこに量子が存在する」「そこに量子が存在しない」という両方の状態が混在する重ね合わせ状態がある、と物理学的に言われており、これが発見された当初は大論争が巻き起こりました。

それを「んなバカなことありえないだろうが!アホか?」と皮肉ったシュレディンガーさんが、言い出した皮肉を交えた思考実験こそ、「シュレディンガーの猫」なのです。

しかし、この皮肉が実は皮肉ではなく物理学では受け入れざるを得なくなってきたという歴史的経緯があります。

※なお猫のような巨大な物体ではなく、超ミクロの量子の重ね合わせは実在していることが2023年現在は判明しています。世の中の様々な電子デバイスや量子コンピューターにはそれが原理にあるからです。

内容は次の通り。

■ シュレディンガーの猫
① 密閉された箱のなかに、一定時間内で1/2の確率で放射線を出す量子を置きます。

② 上記の放射線を検知する、放射線検知器と毒ガス発生装置をつなぎ、万が一、その放射線を検知すると、毒ガスが出て猫が死ぬからくりになっています。要は、50%の確率で猫が死ぬ環境を作ります。放射線を出すのは量子なので、量子の存在に運命が託されます。

③ 量子は「そこに存在する」「そこに存在しない」という重ね合わせという状態があるので、放射線を出す世界、出さない世界が混在します。

「猫が生きているか死んでいるか、箱を開けるまで決まってない。箱の中では生きている世界と死んでいる世界の両方が存在している」という主張です。

このシュレディンガーの猫の本質は、量子のようなミクロの世界で成立する「重ね合わせ状態」が、マクロにも適応されるのか?という問い・テーマです。

この実験は、重ね合わせの問題と同時に、箱を開ける直前まで世界は決まっておらず、同時に存在するということを主張しています。

これは、私たちには様々な選択肢が残されている、と受け取ることができます。しかし、仮想現実の証拠として、シュレディンガーの猫とどのように関係があるのでしょうか?

シュレディンガーの猫の本質をうやむやにすると、仮想現実の根拠として受け入れてしまいます。ここは気を付けなければなりません。

仮想現実の根拠③ この世の中の物質は数式で表される 

この世の中の物質は数式で示される・・・これは、ナオキマンさんの動画では触れてなかったと思いますが、「仮想現実の大きな根拠」として様々なYoutubeの動画で触れています

ありとあらゆる物理現象が、数式で表される・・・理系にまったくなじみがない方であれば、「世の中のあらゆる物理現象が数式で表される=スゴイ!」と思ってしまうかもしれません。しかし、その勢いで「これは仮想現実の根拠」と思うのは大きな間違いです。

大学が理系出身の人であれば、世の中の物体から素粒子、そして電磁気まで、すべて美しい数式で表されることはみんな知っているので、物理学の基本中の基本の知識で、当たり前のことに過ぎません。

たとえば、「マクロの星と星の引き合う万有引力」や「ミクロの電荷同士の引き合う電界の力」はともに、距離の2乗に反比例する美しい数式で表されます。不思議ですね。まるで創造者がいるかのようです。

ここで、わかることは「まるで創造主がいるかのように、この世の物理現象は美しい数式の法則に則っている」といえるでしょう。

しかし、「この世が数式で記述される=仮想現実の大きな証拠」というのは、あまりに論理が飛躍しすぎています。そこに仮想現実のコンピューターがからむ証拠や、人間がゲームの世界の住人である証拠とはあまりにかけ離れているからです。

物理学の現象と数学がすごい!という勢いで、「やっぱり仮想現実があるんだなー」と思うのは、うまく誘導されているだけであって、根拠としては話が違うと思います。

仮想現実の根拠「イーロンマスク」「ボストロム博士」

また仮想現実でよく出されるのが、イーロンマスク氏やボストロム博士の話です。

オクスフォード大学の哲学者であるボストロム博士は「私たちがシミュレーションの住人である可能性は100%近く」と述べており、物理学者を含めて何人かの学者たちが賛同しました。

それを受けて、イーロンマスク氏はこれを支持し、「この世が仮想現実である確率は99%以上」という結論に達したようです。このイーロンマスク氏の発言をYoutubeではさかんに取り扱いされています。

しかし、「イーロンマスク氏が支持しているから正しい」はちょっといいすぎのように思います。イーロンマスク氏は物理の専門家ではありません。

また、物理学者で支持している人は「ほんのごく一部」であって、「世界的に各国の物理学会」として、一般に認められているわけではありません

また、仮想現実99%以上の説は、もともと「哲学」からつきつめて出てきた仮説、というところは大きなポイントといえるでしょう。

哲学というのは、超有名なゼノンのパラドックスでいう「アキレスと亀」や「飛んでいる矢は止まっている」のように、「足がはやいアキレスは、絶対にその先にいる亀に追いつけない」と主張したり、「空に飛んでいる矢は、実際には止まっていることが証明された」とか、現実では絶対ありえないことを「証明できた」と主張することができる学問です。

このように、超有名な哲学者が主張したからといって、必ずしもそれが正しいとは限らない、というのが哲学です。

また、哲学は、一つの可能性・仮説として追及する側面があるので、それ自体は有意義なことと思います。しかし、哲学者の仮説の主張をもって、ユーチューバーがいうような「物理学で証明された」というのはおかしな話です。

一つの仮説としては面白いですが、物理学をつきつめてシミュレーション仮説がたどり着いたわけでもないのに、まるで量子力学によって証明されたかのような印象を受ける動画が多くあるのはちょっとユーチューバーに踊らされている感じが否めないわけでもありません。

仮想現実・シミュレーション仮説が否定される論文が存在

仮想現実・・・すなわちシミュレーション仮説をコンピューターで実現するのであれば、宇宙の量子をすべて記録するためのビット数が多すぎて論理的に実現不可能という論文が存在します。詳しくは下記をご覧ください。

まぁ、「そらそうだ・・・」と私は思ってしまいます。

だいたい、パソコンのシミュレーションという考え方自体、あまりに人間的であり、大宇宙の崇高な仕組みがたかだか人間が考え出す程度のシステムを組んでいるとは到底思えません。

人間の考えたシステムの延長上に宇宙の仕組みがある?・・・そんなわけん-だろ?と私は思うわけです。

仮想現実の根拠として画期的な証拠があって初めて信憑性が上がる

仮想現実の根拠として、たとえば世界規模の地震のときに、富士山が描画しきれてないで部分的にドット絵になった写真があるとか、チャネリングで「この世は創造主のVRゲームのなかにある」とメッセージを受けたとかそういう証拠がたくさん出てきて、初めて信憑性が上がるといえるでしょう。

あくまで仮説なのであって、「実はこの世は仮想現実だった!」というのはユーチューバーに釣られているに過ぎないと思うのは私だけでしょうか?

スピリチュアル的には「霊界が現実の世界に反映するホログラム」と言われれることがある

スピリチュアル的には、この世とは別次元の霊的な世界があって、その世界に霊的に構築された世界が、時間差でこの世に反映される、と言われることがあります。これを「霊主体従」といいます。

霊主体従は、新興宗教の元祖とよべる大本教の出口王仁三郎によって、説かれた内容ですが、「霊主体従」は、その後の様々な新興宗教に使われるようになりました。(※私は大本教とは一切関係がありません)

これは、霊界が先で、体がその後という意味です。わかりやすい例でいえば、霊界の霊体をヒーリングして清めれば、時間差になって、体が治ってくるという現象のことです。

この「霊界がこの世に反映される」という概念は、私も大きく納得できます。ヒーリングが効く理由もこれで説明できますし、引き寄せの法則も、霊界に出来上がった想念が現実界に反映されることで説明できます。

ちなみに、ここでいう霊界とは、必ずしも死後の世界と同じ場所にあるとは限らず、「この世を反映する元となる霊的な世界」と捉えていただければと思います。

コンピューターの中のシミュレーション仮説には個人的に、100%否定とまではいえないけど、あまり賛同できない部分が多いですが、霊主体従はまさに、この世の真実を伝えている可能性があるように思います。

なお、どんなに〇〇大学教授とか有名人のお墨付きとか出してきても、その根拠がしっかり納得できるものでなければ、真実として受け入れる必要はないと私個人は思います。

アカデミズムの考えが間違っていたり、その姿勢に不備があったりすることは、私のマガジンの体験談を見ていただけましたら理解していただけると思います。

この手の話は向こうの世界の啓示やチャネリングによってはじめて明かされますし、信頼できる能力者の啓示やチャネリングの場合は、量子力学の根拠よりそっちのほうがよほど信頼できそうです。

この話題で何か新しい話があったらまた記事にしたいと思います。

よろしければ、私のブログでマガジンの体験談をご覧いただけましたら幸いです。

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