見出し画像

わたしもこういうものをプレゼントできたらいい

最近料理をするときは、さらしを使っている。
存在は前々から知っていたけど、洗濯物が増えるし、ペーパータオルで代用すればいいやと思ってあまり興味がなかった。
でも使ってみるとすごくよい。
昨日は餃子を作ったので、塩もみしたキャベツの水を、さらしに包んでぎゅーっとしぼった。今まで素手で握って何回かに分けてしぼっていたので、こんな便利なものを何でもっと早く使わなかったんだろうと思った。さらしを広げると細かいキャベツたちがポロッとまとまって取れる。素手でしぼったときのように、手についたものをいちいち集めたり、払ったりしなくてよいので、本当に何で使わなかったんだろうと思う。
別にキャベツをしぼることに特化しているのではなくて、まな板が汚れたときにさらしで都度さっと拭いたりするのがメインだと思われる。今までは、例えばまな板についたピーマンの種を一つずつ手でつまんだり、取りきれなくて流しですすいだりして、たいしたことじゃないと思ってたけど、さらしで一拭きすればストレスなく、さっときれいなまな板になる。すごい地味なことだけど、こういうことが料理が上手くなる第一歩なのではとさえ思っている。さらしって皆さんお使いなのだろうか。さらしマスターの方からすれば、もっと色々な用途があるし、何を今さらという感じだとも思う。

まあ、それでさらしを使うようになったのはきっかけがあって、退職の折に職場の方が贈ってくださったのである。
この方(富田さんとする)は穏やかで可愛らしく、勉強熱心で、料理が得意な素敵な方なのだ。昔一緒に倉庫の片付け作業をすることになったとき、富田さんが連絡用に作成した書類に、「冷えるといけませんので、カイロを持参されるとよいと思います。」と書いてあって、そういう優しいところも好きだ。ちょうど母くらいの年齢で、わたしもこういう女性になれたらいいなあと思っている。

いただいたさらしには、なんと桜の刺繍がしてあった。ピンクの花びらと緑の葉を一針一針縫ってあって、どれだけの時間がかかったんだろうとひたすら恐縮した。
手紙も添えられていた。
「ちょうど退職される頃には桜が満開だと思うので、はじめて桜の刺繍に挑戦してみました。汚れてきたら台拭きとして、その後は雑巾にして使ってみてください。」と達筆な字で書かれてあった。富田さんは可愛らしいけど、男気もあって、多くは語らないその一筆箋にそういうところもぎゅっと詰まっていた。

もちろんこのさらしでキャベツは絞っていない。家宝として生涯大切に守っていく所存だ。でもそれがきっかけで、さらし、使ってみたいなと思うようになった。きっと富田さんなんかはお母様があたりまえに使っていたのを子供の頃から見ていて、でも初めて使ったときわたしのように感動したのかもしれない。最後は雑巾になるまで、台所では欠かさず大切に使ってきたのでしょう。そういうものに想いをこめて、餞別として贈ってくださるなんて、なんて粋な方なんだろう。わたしもこういうものをプレゼントできたらいい。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?