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ショートストーリー

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2018年11月の記事一覧

感情スイッチ

感情スイッチ

ある日、私は自分の中に「感情スイッチ」というものがあることを発見しました。

それはレバーみたいな形ではなくて、ボタンのような形をしています。

押すとカチっという音がしてONとOFFが切り換わります。

その音はとても小さいので私以外には聴き取ることができませんが、私には確実に聴こえます。

ところで、感情とは電波のような波形を持っています。

例えば、天にも登る幸福の感情は、プラスに大きく振れ

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動物メガネ

動物メガネ

私は博士だ。

プログラムのバグや古い文学資料と睨めっこしているような博士ではないのである。もちろん研究費について頭を悩ませるようなこともないのである。

どちらかと言えば、赤や青や緑色の奇妙な小動物を子供に分け与える博士に近いのである。時々黄色の動物もあげるかもしれぬ。

そんな私(「わたし」ではなく「わたくし」と読む)が開発しているのはとある特殊なメガネである。

見た目はレイバンのサングラス

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ものさし屋さん

ものさし屋さん

まだ僕が小さかった頃、近所の「ものさし屋さん」がこんな話をしてくれた。

「人はね、生まれながらにそれぞれ自分のものさしを持っているんだ。

不思議なことにそのものさしは人の成長に合わせてすくすく成長するんだ。

それから、君に成長期があるように、ものさしにも成長期みたいなものがある。

でも大抵の場合、君の成長が止まっちゃう頃には、ものさしの成長も止まっちゃう。

もちろん完全に止まっちゃうわけ

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A Waiting Man

A Waiting Man

その男はただ待っている。

時刻表のないバスを。そもそも来るか来ないかもわからないバスを。

バス停にはその男しかいない。おそらくこれから先も永遠に一人だろう。

ヘッドライトの明かりを感じる度に男は期待で目を輝かせる。しかし期待はいつも裏切られる。

雨が降ってきた。それもとびきりの大雨だ。びゅうびゅう吹く風に怯えながら、ぼろぼろトタン屋根の下で一人ぽつんと待っている。突然雷が鳴って、男は泣きそ

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