すぱいく

とても口下手だと言われます。でも黙っているだけで色々な事を考えてるつもりです。いろいろ…

すぱいく

とても口下手だと言われます。でも黙っているだけで色々な事を考えてるつもりです。いろいろ夕飯の事飼い猫の事もしもの事もしも風呂場で石鹸で滑ったらとか。

マガジン

  • 蟻酸

    俺たちは他愛もないどうせ下らない理由で死ぬよ。虫達の生き様。昆虫忍法帖。

  • The game

    人生においてテレビゲームをするとは。みんなその覚悟があるのか。

最近の記事

死なない生き物

「私は死なないと思っていた。冗談じゃ無くって。本当にそう思ってた。」 母が語っていて僕も信じていた。どうか馬鹿馬鹿しいと笑ったりしないで。 「拳銃で頭を撃たれたりしない限り私は死なないと思ってた。」 僕自身も信じていた言葉だから。同感する。 いつかはみんな死んでしまうけど。 私は特別に扱われるべきだから死なない。 そうだね。お母さんは特別だから死んだりしないよ。 母の意味する処の死なないとは何なのか。 母の言い分を問えなくなっている今。深く考える、考えざるを得ない。

    • おかんとガンタ

      数ヶ月前 「何かヘルニアって診断されてー。歩いたりすると痛い時があるよー。」 こないだ 「なんか痛くって車運転できそうにないから、病院まで送ってくれない?」 お医者さん 「末期の癌です。それなりの覚悟が必要になってくるかもしれないです。」 あんまりにも突然だったし、心配だったから、母の飼っているフレンチブルドックのガンタを世話する運びとなった。 元来同居猫のスパイクに断りもなしにガンタはウチに来た。 ガンタの狼藉たるや筆舌に難く。 スパイクの贔屓の猫鍋の下に

      • 蟻酸 第18話

        お虹の活躍によって、ゲンジアリの撃退に成功した忍者集団だったが、当のお虹の様子がおかしい。 「はあはあ。マジでむかついた。クソゲンジアリ。団体行動しか能がないくせに…」 「あの。お虹さん?」 「どうせ行列に2時間も3時間も並ぶような連中のくせに…」 「お虹さんってば」 「なにがホットヨガだ。馬鹿にするのもいいかげんに…」 「いかん。まだ興奮が収まらないようだ」 「子供にナス科トウガラシ属がうんたらかんたらとか歌い踊らせるのはやめろ。イラつくんだよ。…ってあれ?私

        • 蟻酸 第17話

          忍術集団に加盟したものの、状況をまったく理解していない「カメレオンのお虹」はシロに尋ねる。 「それでこれはどこに向かっているところなの?」 「一族を滅ぼして、女王をさらっていったゲンジアリの追跡をしている最中なんだ」 「ゲンジアリ。これまた厄介な相手ね」 「ゲンジアリを知っているの?」 「知ってるもなにも有名じゃない。凶悪だって。出会ったら積極的に逃げることが推奨されている連中よ」 「今まで出会わなかった事が奇跡だったんだな」 「集団はとても危険だけど、1匹の戦

        死なない生き物

        マガジン

        • 蟻酸
          18本
        • The game
          10本

        記事

          蟻酸 第16話

          ようやく笑いが収まったシロ、トクジ、ボウ坊の3匹は、各々の忍術を誉めあいながら上機嫌で歩を進めている。その様子を陰から見つめる瞳がある。視線の主は3匹の後を、一定の距離を保ってついてきている様子だった。 「や?そこにいるのは誰だ!?」 「どうしたトクジ?誰かいるのか?」 「カマキリが戻ってきたの?」 しまった。見つかったか。隠れ身には自信があったのだけど。でもあれ?あんな明後日の方向に呼び掛けている?他の虫がいたのか? 「いやなに忍者っぽいかと思って。言ってみただけ

          蟻酸 第16話

          蟻酸 第15話

          シズカは薄暗い自室で黙想している。するとそこに、1匹の兵隊蟻が捕虜を伴い入ってきた。 「シズカちゃん連れてきたよ」 「来客中は女王陛下と呼びなさいと、いつも言っているでしょう」 「あ。そか。女王陛下お連れいたしました」 「はい。ありがとう。外に控えていなさい」 兵隊蟻は去り際に、捕虜の耳元で囁いた。内容は、女王陛下に対して無礼を働いた場合、コンマ2秒で殺すので、そこんとこよろしく、といった内容だった。シズカは捕虜に向き合うと、優しく美しい声で尋ねた。 「あなたはヘ

          蟻酸 第15話

          蟻酸 第14話

          迫りくるカマキリの鎌。トクジ絶体絶命である。 「おほほほほほほ」 次の瞬間。 「忍法「五月雨毒針毛」!」 ボウ坊は身体を震わせると、周囲に大量の毒針を飛散させた。飛散した毒針の数十本が、カマキリの柔らかな腹部に突き刺さった。 「ぎゃあ!」 「ええい玉砕覚悟だ!忍法「力業」!」 シロはカマキリの足に噛み付き、渾身の力で捩じり上げる。思わぬ反撃に一瞬バランスを崩したカマキリの、ノーガードの腹部に更に追い打ちを仕掛けるボウ坊。 「これでも食らえ!忍法「剣山装束」!」

          蟻酸 第14話

          蟻酸 第13話

          チャドクガの幼虫のケムシであるボウ坊を迎え入れ、一行はゲンジアリの追跡を再開した。 「おいあんまり近くを歩くな。棘が刺さるだろ」 「ごめんよトクジさん。気を付けるね」 「急に先輩風を吹かす様になりやがったな。こいつにも俺にも「さん」なんて付けずに名前で呼んで良いからな」 「そうかい?わかったよシロ」 「む…やっぱり俺には「さん」を付けて呼んでくれ」 「大人げないやつだな。俺は「さん」なしで呼んでも良いよ」 「ええっと。それじゃあ、シロさんとトクジで良いんだね?」

          蟻酸 第13話

          蟻酸 第12話

          忍者になったからには、忍術はこれ必要であろう。2匹は道中、お互いの長所に、忍術らしい名称をでっちあげて、正式な忍法にまで昇華させる、という虚無的な作業を開始した。先ずは、シロである。これはもう単純明快に、蟻と言えば 「君のはそうね。忍法「力持ち」とかでいいんじゃないかな」 「えらく適当だな。もう少し捻りが欲しいところだ。欲を言うと」 「うーん、それじゃあ、忍法「いっつも火事場」!」 「うん悪くはない。悪くはないんだが、もっと忍術っぽさがあるとなお良い」 「忍法「鷲の

          蟻酸 第12話

          蟻酸 第11話

          ゲンジアリの話を信用するならば、女王はまだ生きている。今ヘイケアリに必要だったのは、希望であった。女王がいなければ、我々は前に進むことができない。 「情報提供に免じて、釈放してやろう。何処にでも行け、二度とここには戻ってくるなよ」 「触角を無くしてるんだから、もうおしまいだよ。向こうでリスカするから」 「どうぞご自由に」 「ホントにするからね!」 呪いの言葉を吐き続けるゲンジアリを残して、シロ達は元蟻塚に戻った。生き残りのヘイケアリを集めて、女王がゲンジアリの巣に、

          蟻酸 第11話

          蟻酸 第10話

          シズカが叫ぶと、地面が微かに振動を始めた。振動は段々と大きくなって、地響きに変わった。次の瞬間。蟻塚正面入り口から、夜の闇が侵食してきた。ゲンジアリの群れだ。ゲンジアリ達は、皆口々に「あげぽよ」だの「きゃわたん」だの「てんあげ」だのと、心の底から楽し気に、ヘイケアリの虐殺を始めた。ヘイケアリ達は突然の襲撃になすすべなく、次々と体を引き裂かれていった。それでも隊長格のヘイケアリ達は、なんとか兵隊蟻を招集し、上層に繋がる通路に、それぞれの身体を密着させバリケードを張り、敵を待ち構

          蟻酸 第10話

          蟻酸 第9話

          「そこまで極悪な奴らだったのか」 「モンキチョウが言うには、どうやら奴等は、君たちヘイケアリの蟻塚方向に行進していったらしい」 ゲンジアリの悪行を、トクジから又聞いたシロの胸中は、強い不安で埋め尽くされていった。それまで生きてきた中で考えもしなかった「一族の崩壊」を、現実にもたらす可能性がある存在。女王が殺されてしまう。そんな事は絶対にあってはならない。不安は徐々に、同胞を傷つけるゲンジアリへの怒りに変化していった。 「行こうトクジ」 「そうだね。本心はこのまま逃げて

          蟻酸 第9話

          蟻酸 第8話

          ゲンジアリの行進。後にも先にも、一切の生命が残らない、「死の行進」である。この行進に巻き込まれた者は、その場で食料にされた。それだけならば、厳しい自然界の中で必然の事象であり、そこに善悪はない。しかし、ゲンジアリを悪と言わしめるに足る、昆虫界の語り種があった。ある有名インタビュワーのテントウムシが、ゲンジアリに突撃取材を試みる話で。 最初ゲンジアリ達は親し気な感じで、噂に聞く極悪なイメージとかけ離れていたという。テントウムシはそれでも用心の為に、土産と称して、数匹のウジムシ

          蟻酸 第8話

          蟻酸 第7話

          2匹は走った。シロは、途中、体力が尽きて走れなくなったトクジを、顎に咥えて、尚走った。雑務蟻とて、立派な蟻である事には変わりない。トクジ程度の体重を、持ち上げながら走る事など、シロには容易いことだった。日が落ち、暗闇で周囲の様子がわからなくなっても、シロは逃げずにはいられなくなっていた。立ち止まると、暗闇の中から、先程の黒い蟻が、ぬうっと現れて惨殺される。そんな妄念が、シロを支配して突き動かしていた。同様の思いを、トクジも感じている様子で、シロが、ふと足を止めて、触角をセンサ

          蟻酸 第7話

          蟻酸 第6話

          谷底に下る坂の前に、ヘイケアリと思われる蟻が一匹、谷底を向いて佇んでいる。屈強な体格から推測すると、中隊長なのではなかろうか。背後からトクジが声を掛けてみるが反応がない。恐る恐る正面に回って、顔を覗き込むシロとトクジである。 「こっ…これは」 「ぴぴー」 駆け出して逃げようとするトクジの、長い口を掴んで逃亡を阻止しながらシロは、反応のないヘイケアリの容態を観察した。首の付け根辺りに、致命的な欠損があって、流れ出る体液を止めることは不可能に思えた。とりあえずは、どこか安全

          蟻酸 第6話

          蟻酸 第5話

          蟻塚を出た先は、シロが認識を許容できる限界を超えてなお広がっていた。草木がざわめき、乱立している岩々は沈黙を守って、ダンゴムシは徘徊している、けっこうデカくて怖いなあ。急に弱気になってきた事を悟られぬように、シロはトクジにこれから先のプランを尋ねてみた。 「失踪した中隊は、この先の谷に遠征したらしい。兎にも角にもそこの様子を見に行こう」 「お、おう。そうだな」 「そう遠くはないよ。他の虫とトラブったりしなければ。途中で出会っても目を合わせたりすんなよ」 「わかった」

          蟻酸 第5話