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変わるには「愛」が必要!人事は愛!/小野真吾さん(三井化学株式会社 グローバル人材部 部長)

小野真吾さん プロフィール

2000年、慶應義塾大学法学部卒。三井化学株式会社にて、ICT関連事業の海外営業・マーケティング及びプロダクトマネジャー(戦略策定、事業管理、投融資等)を経験後、人事に異動。組合対応、制度改定、採用責任者、国内外M&A人事責任者、HRビジネスパートナーを経験後、近年ではグローバルなタレントマネジメント、後継者計画の仕組み導入を推進。その他、グローバル人事システム展開、リーダーシッププログラム、各種グローバルポリシーの推進、HRトランスフォーメーション等に従事。
2021年4月よりグローバル人材部長に就任。

こんにちは!スパイスアップ・ジャパン代表の豊田圭一です。

「人事」のHRと「トランスフォーメーション」のXを掛け合わせて「HR-X」と名付けた当チャンネルは、「トランスフォーメーション人材で組織を変革する」をスローガンに、「人事」と「トランスフォーメーション」、つまり「変革」というキーワードで様々な取り組みをしているゲストをお迎えしてお話を伺っていきたいと思います。

今回のゲスト、Mr. Xには三井化学株式会社、グローバル人材部副部長 兼 ヘルスケアHRBPの小野真吾さんをお迎えしました。(*2021年4月1日よりグローバル人材部 部長)
小野さん、今日はよろしくお願いします。

(小野さん)
よろしくお願いします。

(豊田)
まずは簡単に自己紹介をお願いできますか?

(小野さん)
はい、今ご紹介いただきましたように、三井化学という会社で20数年経験しておりまして、前半のキャリアの8年ほどは事業の最前線で飛び回って世界相手に戦っていたのですが、そこから「人ってすごい大事だよね」って思い始めて人事の方に移ってきまして、12、3年人事をやっているという状態ですね。
主に採用とかクロスボーダーの海外企業買収とかやっているうちにグループ会社が増えてきて、その増えた会社を統合しようかということで、グローバル人事というのを今やっているところです。

(豊田)
僕、小野さんの色々な記事とか講演を見たり聞いたりしたのですが、色々なことをやっているじゃないですか!
結構多岐に渡っていてスーパーマンだなって本当に思いました。
新卒以来1つの会社でずっと日本が誇る大手メーカーで働いている小野さんから見て、グローバルという視点で捉えた時、組織や個人を取り巻く環境変化をどのように捉えられていますか?

変わるには「愛」が必要!人事は愛!

(小野さん)
過去20年くらいしか見ていないですけど、20年前と比べても相当変わってきているなって思うんですよね。
まず世界の環境もすごく変わっているし、日本のメーカーがやるビジネスもどんどん変わっていると思ってまして、輸出型モデルからどんどん海外企業買収に変わってきて、オペレーションだけではなく戦略的な部分が海外に出てきたりして、それをマネジメントをしないといけない状態になってきました。
そうなってくると必然的にグローバルに通用するスタンダード的なものを持ち合わせないとマネージできないということになってくるので、組織内のカルチャーも変われば、入ってくる人も変わり、目まぐるしく変わっていると思いますね。

(豊田)
それに伴って、人も会社の雰囲気も変わっていますか?

(小野さん)
変わってきたと思います。
昔は新卒一括主義、終身雇用という概念が強かったと思いますけど、今は外国人が入ってきたり、グループ会社に出向や転籍という形があったり、あとは中途採用なんかも増えましたよね。
多様な経験を持った人をどんどん入れようってことが増えてきていますので、どんどん変わっていると思います。

(豊田)
リーマンショックの後に大赤字になって、そこから「事業ポートフォリオ」や「企業体質」を変える必要があったと伺ったのですが、「HR-X」という当チャンネルも変革というキーワードを1つ掲げているんですけど、まさに変革が迫られたなと思っていて、それに対して会社としてはどう対応したのか、その時小野さんはどんな立場でどんなことをやってらっしゃったのでしょうか?

(小野さん)
はい、リーマンショックの時は創業以来初の赤字で、大赤字だったんですね。
危機感から変わらなれけばいけないということで、社長も変わったのですが、それまでは世間からお公家様って言われていたんですよ。
「石橋を叩いては壊す」という風に企業体質を見られていたのですが、そこから脱却しなきゃいけないので、コアバリューをつくると言って、チャレンジ!ダイバーシティ!ワンチーム!といって、野武士にならなければならないというメッセージが発信されたんです。
ただ1日では変わらないので、裏側では経営企画や事業を新しく変えていかないといけない部門の役員も「とにかくチャレンジするぞ!」ということでクロスボーダーのM&Aなり、新事業をどんどんやっていくぞということで動き出したんですよね。
当時のトランスフォーメーションの中でいくと、事業プロジェクトの方によく入っていて海外事業買収を中心にとにかく大型買収プロジェクトに入っていったというのが自分なりの立ち位置ではありますね。

(豊田)
その時の小野さんの心境はいかがでしたか?
「うわぁ、面白い時代が来た!」って思っていたのか、逆に「大変な時代が来たな」というとどちらだったんですか?

(小野さん)
めちゃめちゃ面白い時代が来たなという感じでしたよね!

(豊田)
出たよ!!(笑)
実際、過去を振り返ると、この時の個人の成長はすごかったんじゃないですか?

(小野さん)
恐らく今までのキャリアの中ではこの3年、4年くらいが最も広がった時代だったと思いますね。

(豊田)
やっぱり逆境で人は育つ、コンフォートゾーンを飛び出るなんて人材育成の仕事でも私はよく使ったり、聞いたりしていますけど、まさにコンフォートではない状況が会社に訪れたということですもんね。

(小野さん)
そうですね。

(豊田)
他の方はどうだったんですか?
ワクワクしているのは小野さんだけだったんですよね?

(小野さん)
それにワクワクする人種と、それを傍目で見てうまくいかないやっていう人たちもいるんですよね。
ワクワクする人たちがやればいいじゃないか!ということで当時、そのプロジェクトを牽引していた役員がヤンチャな人ではあって、プロジェクトメンバーが30代ミドルで構成されていて、大型のクロスボーダーの買収を自分たちでデューデリジェンスからPMIまでやるぞということで、失敗しても構わないと。
失敗したらその失敗をどうにかまた戻すのが自分たちのチャレンジであり、この多様なメンバーでワンチームでやるのが本当のコアバリューだから行け!とやってもらったので、すごい面白かったですね。

(豊田)
その時のそういう変化の中から今に至るまでそういう風土や空気は今でも続いていますか?

(小野さん)
そうですね、その時をキッカケにチャレンジすることとか、out of boxという観点ではそこを経験するメンバーが増えてきていますので、やっぱり動かないと何も始まらないという感じに変わってきています。

(豊田)
そういう視点で考えた時に、私の専門であるリーダーシップとかグローバルという点でいうと、リーダーシップ文化の変革、グローバル人材体制の変革みたいな取り組みで小野さんの取り組みを教えていただけますか?

(小野さん)
リーダーシップの文脈でいくと、すごく大事にしている1つのポイントでして、ほとんどの人材開発費用はリーダーシップに充てています。
オーセンティックリーダーってよく言われますけど、日本って自分はどうあるべきかというところがすごい弱いので、そういった部分をリーダーに問い掛け続けないということが前提にあって、コーチングであったりリーダーシップ開発ってものすごくやっているのですが、そこがやっぱり組織の文化に繋がり、それが組織パフォーマンスに繋がるというロジックで全て組んでいるので、そういった意味でもリーダーシップは常に問い続けて、自己認識をし、他者からも認識を受けた上で変わり続けるということを中心にやっています。

(豊田)
それは仕事の中でですか?それとも研修を通してですか?

(小野さん)
基本的には我々スタートしたことが、エグゼクティブクラスがコーチングを体験して、体験を通じて変わるってことを体験してもらうということをまず初めにやったんですね。
そこが良いなって思うと、みんな広めたいと思うので「部下にやってよ!」となり、そこからリーダーシップカルチャーを生み出すような動きが始まったんですよね。

(豊田)
何歳くらいを対象にしているんですか?

(小野さん)
人事の担当役員・部長からスタートして事業側の役員にもどんどんあてていっていまして、今は社長を含めてトップ層もみんなエグゼクティブコーチングを受けたことがある人ばかりですね。

(豊田)
ご存知かどうか分かりませんが、他の会社はどうなんでしょうね。

(小野さん)
このコーチングを導入したいという会社は多いと思うんですよ。
そういうカルチャーが身に付いているところと、なかなかそこにコスト掛けてやるのは難しいという会社があると思うんですよね。

(豊田)
グローバル人材の方はどうですか?

(小野さん)
元々、三井化学もグローバルに展開している会社ではあったんですけど、潮目が大型企業買収でして、そこからグループ会社の従業員がめちゃくちゃ増えたんですよね。

(豊田)
この10年くらいですか?

(小野さん)
この10年くらいですね。
それまでは日本でグローバル人事をセットアップして、日本式をどう埋め込むかということが中心だったのですけど、買収した後にPMIとよく呼ばれている統合プロジェクトプランの中で買収した会社の能力を使っちゃえばいいじゃんって思ったので、一緒にベストプラクティスを作りましょうみたいなことをセットしたんですよ。
海外のメンバーをどんどん巻き込んで、バーチャルな組織体制に変えて、日本からというよりはグローバルチームで新しいものを作ろうとセットアップを変えたのは2014年くらいですね。

(豊田)
そういう時に先ほどの変革の話も変革をワクワクできる人とそうじゃない人、今のグローバルの話もそうですよね?
そういうポジションに就いて、いいね!と思う人と、いやちょっと自分とは違うという人が出てくるかと思うんですが、実際のところ会社の中ではどうでしたか?

(小野さん)
人事の中でも、そういうグローバルって言葉が付くと、僕、グローバル関係ありませんという人もいれば、そういうことやってみたいですという人もいるので、やっぱりどういう風にそこに共感するのかがめちゃくちゃ大事だと思うんですよね。
与えられたものはあまりワクワクしないけど、自分がやってみたいものって自分から進んでワクワクすると思うので、どうやってそのストーリーを作るのかが我々すごく大事かなと思っていますね。

(豊田)
ワクワクする人とそうじゃない人って、どういう要素に違いがあるんですか?

(小野さん)
主体性という観点でみたら、主体性を元々持っている人なのか、リアクティブなのかということはあると思うのですが、それって経験や成功体験を積めばポジティブになっていくと思うんですね。
アセスメントの中でも当社もコンピテンシーアセスメントやポテンシャルアセスメントをやるんですけど、元々持っている性格特性とか動機ってなかなか大きくは変わらないんだけど、なるべくそういうものを持っている人を発掘して、そういう人にはどんどん経験を与えると開発されていくんですよね。
「見極め」と「場を作って経験してもらう」ことを繰り返すことが大事かなと思いますね。

(豊田)
そうですよね。
異文化理解という要素で言ったら、1人1人個性があるのに「〇〇人ってこうだよね」ってステレオタイプに決めちゃいけない部分があるけど、一方で〇〇人の特性ってなんとなくはあるじゃないですか。
同じように明るくない人に明るくなれよ!って言っても明るくなれるわけじゃないけど、でも、ある程度そういう要素があったとしても鍛えるとか色々な経験値が増えることによって、好奇心が刺激されてどんどん高まっていくというのがありますから、やっぱり見極めとそこにどう刺激を与えて色々な経験を積ませていくか、そんな感じのところがあるのかなと思っています。

小野さん自身は元々どういう人なんですか?

(小野さん)
私事ですが、小さい頃は内に籠るタイプで箱入り息子でした。(笑)

(豊田)
お公家さんじゃないですか!(笑)

(小野さん)
お公家さんだったんですけど。
刺激が与えられて、楽しいじゃんって思ったのは学生時代だったのですが、そこからは何やっても死なないし、何やっても大したことないからとにかく色々なことをやろうと思い始めましたね。

(豊田)
なるほど。
とはいえ、最初入ったのはいわゆる日本企業体質のところだったと思うんですね。
でも、今はまさにHRのリーダーとして、各国のHRの人たちと協働してリーダーシップ発揮してやっていますよね。
今でいうダイバーシティマネジメントというところかなと思いますけど、多種多様な考え方を持っている人とのやり取りやマネジメントをする上で意識していることはありますか?

(小野さん)
2つあるんですけど、1つは自分ってなんなんだろう?どういう人なんだろう?ということが分かっていると自己開示もしやすいし、良いところも悪いところも全部オープンに話せますよね。
自分がオープンにならないと、相手もオープンになってくれないという前提に立てば、その文脈でじゃあ相手はどんな人なんだろう?肩書きや〇〇人ということを全部取っ払った時にその人はどんな人?という対話ができると恐らく基本的には異文化理解や他文化理解はしやすくなると思うんですよね。
そこが1つ目で、あとは共通の目標を作って持つということですね。
それに向かってやっていこうよってなると、道のりは違っても同じところに向かうじゃないですか。
その2つさえ意識していれば、問題はあれど自ずと同じ方に向かっていくのかなと思いますね。

(豊田)
ちなみにその自分を知るというところ、よくセルフ・アウェアネスとも言われているから私も分かっているつもりなんですけど、どうやって自分を知るというところに結びつけるんですか?
先ほど言っていたコーチングみたいなところもそうですか?

(小野さん)
コーチングによる気づきってあったり、ジョハリの窓でいう自分の見えない自分っていますので、そういう機会を大事にするということが根底にあるかなと思っています。
昔、アメリカ人のコーチを付けたことがあったんですね。
その人に自分の企業変革の中でこういう課題がありますって課題をいっぱい言っていたら、お前は何をするんだ?なんでやらないんだ?何を恐れているんだ?と言われて、恐れているのかなぁと思ったら、たしかにこういうことをすると何か問題が起こりそうだなってことに対する恐れがあったので、それを自覚して恐れを解くために何しようかっていって考え始めることができるので。

(豊田)
今の話を聞くとやっぱりそれを言われて素直に聞く心があったんだなと思いますけどね。
あとは他人に開示するオープンマインドもあると思うんですけど、そういうのがない人もいますよね、壁を作っちゃうとか。
やっぱり知るってすごく重要だけど、その大前提としてそれを受け入れられるとか、それを他人に開示できるのかというのもコーチングをするんですか?

(小野さん)
恐らくそうだと思うんですけど、人によって考え方が違うのですが、人って必ず変われると思っているんですよ。

(豊田)
私もそうだと思います。

(小野さん)
変わるには「愛」が必要かなって思っています。

(豊田)
愛、必要!
愛は結構なキーワードだと思いました。

(小野さん)
どんなに縮こまっていても寄り添う人とか、ちゃんと向いてくれる人がどこかにいると、心開いたりする時が来るのかなって思うので、人事は「愛」かなって。

(豊田)
人事は「愛」ですね!
僕はグローバルも「愛」だと思っていますから!
例えば海外で仕事をする時に駐在員さんの赴任前研修で異文化理解をやったりしますけど、異文化理解なくても、その国のことを知らなくても、そもそも愛とかリスペクトがあれば全く問題なくいけると思いますね。
インドで会社を始めた時、私1人で乗り込んで向こうで始めました。
もちろんインドの本をたくさん読んでいたけど、I love India, I love spiceって言ったらガンガンサポートしてくれましたし、自分の国のことが好き、スパイスが好き、それで何かやりたいって言っているこいつを助けてやろう!みたいなことがありましたから、やっているうちにどんどんどんどん異文化理解が広まって、この国はこうなんだって事前にインプットしなくても「愛」かなと小野さんの話を聞きながら自分の話に持っていってしまいましたけど、それはすごく思いましたね。
それは仕事でも言っていますか?スライドに「愛」って出して言ったりしてるんですか?

(小野さん)
時々しますけどね。

(豊田)
本当ですか?

(小野さん)
TPOはわきまえますけどね。
「愛」って、反対は「無関心」であって、基本的に愛を持っていると関心を持つじゃないですか。
上司、部下も同じなんですけど、結局今コロナ禍でリモートでなかなか分かりませんというのは、関心を持って対話を主体的にしていき、自分のできることをやっていかないといけないと思うので、そういった意味で関心を持つというのを「愛」と称してやっていけば良いんじゃないかなと思いますね。

(豊田)
今日は素敵な話をありがとうございました。
最後、愛で落ち着いたのが結構ヒットしました。

さて、HR-Xではこれからも「人事」と「トランスフォーメーション」というキーワードで、様々なゲストをお呼びしてお届けしたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

小野さん、今日はどうもありがとうございました!

(小野さん)
ありがとうございました。

豊田圭一(株式会社スパイスアップ・ジャパン 代表取締役)
上智大学を卒業後、清水建設に入社。約3年の勤務後、海外留学コンサルティング事業で起業。以来、25年以上、グローバル教育事業に従事している。
現在、国内外で「グローバルマインドセット」や「変革マインドセット」を鍛える研修を実施する他、7ヶ国(インド、シンガポール、ベトナム、カンボジア、スリランカ、タイ、スペイン)にグループ会社があり、様々な事業を運営している。
2018年、スペインの大学院(IE)で世界最先端のリーダーシップ修士号を取得。
2020年に神田外語大学グローバル・リベラルアーツ学部の客員教授に就任。
著書は『とにかくすぐやる人の考え方・仕事のやり方』『ニューノーマル時代の適者生存』など全19冊。
早稲田大学トランスナショナルHRM研究所の招聘研究員、内閣府認証NPO留学協会の副理事長、レインボータウンFMのラジオ・パーソナリティも務めている。

豊田が2020年6月に出した著書『ニューノーマル時代の適者生存』

株式会社スパイスアップ・ジャパン
 公式ウェブサイト  https://spiceup.jp/
 公式フェイスブック https://www.facebook.com/SpiceUpJP/

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