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curry menu archive 19 イタリアカレー

19皿目はイタリアカレーです。

突然ですが、「イタリアカレー」を想像してみてください。
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(/・ω・)/

どんなカレーを想像しましたか?

ヨシフジから「来週はイタリアカレーを作る」と聞いたときに、私は、炙りチーズのチキントマトカレーとか、スパイスアヒージョカレーとか、サイゼリヤっぽいものを想像しました。

脳内でサイゼリヤへ出かけて、メニューから適当にエッセンスを拝借し、「それっぽいもの」を考えたわけです。

それがパクリかどうかはさておき、アイデアとして安易なことは間違いありません。
自身のセンスのなさに呆れるしかありませんが、皆さんはどうだったでしょうか。

「自分だったらどういうカレーにするか」を少し考えてから、izonのカレーを食べるとなかなか面白いと思います。

ほぼ100%裏切られます。

izonでカレーを食べる方の中には、「裏切られるのを楽しむ」という崇高な方も既にいらっしゃるようです。

既定路線からの逸脱、意外性を伴った伏線の回収、などを面白がるのは、映画やドラマならば一般的だと思いますが、カレーはどうでしょうか。

毎日スパイスカレーを食べる人は別として、一般的な日本人であれば、

1.実家のカレー
2.ココイチなどのチェーン店のカレー
3.個人店のスパイスカレー

というような順番で”ベタ”なカレーから離れていくのだと思います。

1.実家のカレーが既定路線から逸脱すると、落胆や怒りといった感情が芽生えるのではないでしょうか。
意外性を伴った伏線も、そんなんいらんねん、と一蹴するでしょう。

2.ココイチなどのチェーン店のカレーは訪れた人が自由にトッピングすることでベタな人はベタに、逸脱する人は予定調和的に逸脱できるようになっています。

3.個人店のスパイスカレーは、そもそもカレーの質が1.や2.とは違います。
小麦粉とバターでとろっとさせるという欧風カレーのテクニックは使わないので、市販のカレールウからかなり離れます。

店に行く時点でそのあたりはわかっている人がほとんどでしょうから、スパイスカレーに対して実家のカレーを投影して怒り出す人はいないでしょうが、スパイスカレーなりの既定路線はやっぱりあるわけで、そこを裏切られるのはなかなか痛快です。

3.の次の4.は、?ですので自分で定義しなければいけません。
それが「ごっつストレス」の人もいるでしょうから、「楽しい」という人は崇高な方、奇特な存在だと思われます。
新しい価値を認めることができる心の広い方です。

ご来店される際には「そんな遊びもあるのね」と取説的な感じで覚えておいていただけると幸いです。

前置きが長くなりすぎました。

京都ライフさんの取材の予定があったということで、気合を入れて作ったイタリアカレーです。

『アクアパッツァのスパイス炊き込みご飯、チキンカラヒ、ダルボナーラ、バジリコラッサム、スパイスカプレーゼ、バルサミコカンチュバ、ティラミスライタ、焼きズッキーニのポルチーニソース、ンドゥイヤ風ハムのペースト。

今日も熱くなりそうですが、イタリアの風🇮🇹感じに来て下さい。』

と、当時のインスタに書いてありました。

誤:熱く 正:暑く だと思われますが、「俺のハートが今日も熱くなりそうなので、イタリアの偏西風(熱波)をカレーを通じて感じてほしい」と読むこともできます。

真相はやぶの中に置いといて、メニューを解説していきます。

アクアパッツアのスパイス炊き込みご飯はスズキとタイを使いました。
アクアパッツアは、オリーブオイルで魚に焼き目をつけて白ワインと水で煮込み、塩で仕上げるイタリア料理です。

独自にスパイスを調合して米と一緒に炊き上げ、他のカレーとのバランスを考えて薄味に仕上げました。
ピンクペッパーとバジルを後乗せして彩りをプラスしています。

チキンカラヒはチキンとトマトの煮込みカレーです。
カラヒを調べてみると、パキスタン・インド北部あたりでよく使われる鍋の名前でした。
日本でも”鍋”というと、道具としての”鍋”と料理としての”鍋”のダブルミーニングになっているように、カラヒも道具と料理の両方を表す言葉のようです。
今回のチキンカラヒも味付けはカラヒ的な工夫がされているようです。
フレッシュのバジルがいい感じですね。

ダルボナーラはカルボナーラのだじゃれです。
開店当初からよく登場するダルカレーをカルボナーラ風にアレンジ、チーズの効いたクリーミーなダルカレーになりました。

バジリコラッサムはバジリコを使ったラッサムです。(そのままだ)
ラッサムに関しては前回の韓国カレー2で紹介していますのでそちらを参考にしていただければと思います。
タマリンドとバジリコがマッチした酸味の効いた香り高いスープです。

スパイスカプレーゼはモッツァレラチーズとトマトとフレッシュバジルのカプレーゼにスパイスを調合しています。(そのままだ)

バルサミコカンチュバはなんでしょうか。
カンチュバは聞いたことが無いので調べてみると、サルサ的な東南アジアのサラダのようです。
イタリアカレーということでバルサミコ酢を使ってさっぱりしたサラダに仕上げています。
(追記:カンチュバ→カチュンバが正しい名前でした)

ティラミスライタはティラミスのヨーグルト和えです。
ライタは高知福岡カレーを参照していただければと思います。
クッキーをコーヒーに浸してココアパウダーをかけたティラミスとヨーグルトを合わせています。
ティラミスといえば甘いデザートのイメージですが、追加の砂糖などの甘味は使わず、かなりビターな感じでした。
ワンポイントのアクセントです。

焼きズッキーニのポルチーニソースは正統派のイタリア料理を踏襲して、ポルチーニ茸でソースを作っています。
そんなことしてお金は大丈夫なのかと心配になります。

ンドゥイヤ風ハムのペーストはなんでしょうか。
ンドゥイヤについて調べてみるとイタリア南部発祥のサラミの一種で、豚のくず肉とスパイスを合わせたペーストのようです。
日本でのモツ煮のようなポジションでしょうか。
現地ではソーセージにしたり、パンに塗って食べるということですが、izonではハムを使ってカレーのお供になりました。
塩味が効いておいしかったです。

ざっと紹介しましたが、これらを頭の中で考えて、木曜の朝にぶっつけ本番で1回目の仕込みをして提供しているのですから、驚きしかありません。

全体を総括するとイタリア料理を世界のスパイス料理で作り直して、ワンプレートカレーにまとめているという感じです。
文字にしてみると、そもそもカレーってこういうことじゃなかったような気がしてきていよいよ訳がわからなくなってきますが、食べてみるとカレーでしたしイタリアの風(暴風)は間違いなく吹いていました。

そんなことをして何の意味があるのかといえば、カレーのおいしさを追求するということとは関係がないですから、味を重視する場合には特に意味はないのかもしれませんが、てんでばらばらに吹っ飛びそうな素材がサーカスのようにワンプレートに収束する驚きはあるわけです。

もちろん不味いと成立しませんので、おいしさも追求した上での取り組みですが、誰にも言わずに勝手にやっているところにヨシフジらしい狂気を感じます。

枝雀師匠の「らくごDE枝雀」の落語のサゲの分類の中に「ハナレ」というのがあります。
予定調和から離れていくことにもカタルシスはあってサゲになっている、オチていないようで緊張の緩和は発生するから笑いが起こるんだ、ということだったと思いますが、「ベタから離れていくことも一興」とizonのカレーを楽しんでくれる人が増えることを願っています。

イタリアカレーを食べた記憶のある方からのコメント、ご連絡をお待ちしております。
リアルな感想が発掘できれば随時追記予定です。

最後まで読んでいただいてありがとうございました。
つづく。

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