今までで母が一番喜んでくれた花
いきなりですが、うちの母にはプレゼントをしないことをおすすめします。一応もらってはくれますが、あんまり喜んでいないというか「自分が欲しいもの」以外にはどこか塩対応です。子供たちはそのことで長年寂しい思いをしてきました。
そんな中、諦めずに何度も挑戦し続ける勇者がいます。それは私です。私は喜んでもらえるものを何とか見つけようと試行錯誤を重ね、その結果「母を毎日笑わせる」という必殺技を見つけることができました。
思うに母は基本的に尽くし体質であって、受け取り下手なのです。
花を飾ることへの情熱
私と弟は小学生の時によく帰り道にある野の花を摘んできてはプレゼントしていました。具体的に花の名前を言うなら、タンポポ、ハルジオン、ネジバナ、ホトケノザ、シロツメクサなどです。
母は「あら、おみやげね」「ありがとうね」などとさらっと言って、なんだかんだ言いつつも飾ってくれていました。
弟が学生時代のころまで、毎日花を飾っていました。もらいものだけではなく自分で買ったりもしていました。そんな母にとって一番好きな花とはフリージアで、季節になるとたくさん買ってきていました。香りが特に好きだそうで、その時期の玄関はとても華やかだったのを覚えています。
ひっそりと咲くガーベラ
飾らないことが多くなった今もたまにお花を頂くことがあります。そうすると母はこっそりと私の部屋に花を飾ってくれます。それは私の好きなガーベラを中心とした花でした。
他にもラインナップはあるのですが、その組み合わせが多いです。私はその花瓶を窓際に飾って何度も眺めていました。やっぱり花があるという生活は瑞々しくて素敵だと思います。
最近気づいてしまったことなのですが、私の部屋に飾られている花と玄関にある花とが違うことがありました。それとなく聞いてみたのですが、なんとガーベラは私のために追加して買ってきてくれていたらしいのです。
さすが私の母だと感じました。
お母さんたちってすごい
やはり母は相手にプレゼントする方が好きなようです。母は普段から誰かのためにと、本人が知らないところで何かしています。押しつけにならないように気を付けているのかもしれません。
おそらく見返りを求めていないのでしょう。これが大人になった私にはすごいことだとわかります。見返りを期待せず、他の人のために何かするのはとても難しいことです。見返りがないことで苦しむという人もいるくらいです。
もちろん誰にでも同じように接することが出来るわけではないでしょう。そのことで見返りを期待せず、子供を育てている母親というのは偉大な存在だとわかりました。私は全ての「お母さん」という人たちを尊敬しています。
ようやく思い出したこと
ガーベラの件を知ってから、母に対して何かできないかと私は考え始めました。そのうち、一つ重要なことを思い出しました。それは「私が描いた花のイラストを見ると、母は毎回手放しで褒めてくれる」ことです。
いつだったか、美術の授業で絵手紙を書くというものがありました。その時に私が描いたホトケノザのイラストを気に入ってくれたのを思い出したのです。今も大切にしてくれていると知ったときは驚きました。
他にも、私が授業中に暇つぶしで書いたサギソウのイラストをものすごく褒めてくれたこともあります。
どうしてこれまで思い出さなかったんだろうと思いました。
なんたって、母に喜んでもらえる贈り物の条件は「自分が欲しいもの、気に入っているもの」です。簡単なイラストならいつでも描けるし、時間も大して掛かりません。
私は急いで作業に取り掛かりました。ネットにある花の画像でよさそうなものを見つけて、模写をして色を塗っていきます。時間にして30分と少しくらいでした。イラストだけでは寂しいので、私からのコメントを添えておきます。
フリージアの奇跡
「なんか香りまでしそう!」
それが受け取った母の最初の一言でした。今までで一番喜んでもらえたのでとても驚きました。母は満面の笑みで「額に入れて飾りたい」とまで言いました。
そんなにうまくもないし、色塗りのテクニックもありません。こんなに喜んでもらえるのならまた描こうかなと思いました。今度100均のお店に額縁を探しに行く予定です。
また、フリージアの香りのする香水が実際にあるらしいので、そちらの購入についても考え始めています。このエッセイの企画をきっかけに大切なことを思い出すことができて本当に良かったと思いました。
大成功?
こうして「母を何とか喜ばせたい作戦」は無事大成功に終わりました。実は子供の頃に私が母の日にプレゼントした、折り紙のカーネーションにずっと勝つことが出来ず、弟とともに悔しい思いをしていました。
弟は修学旅行にて買ってきた漬物を「知らないメーカーだから」と遠回しに断られたことがあります。私は遠足で奮発して買ってきたイルカのリングをなくされてしまったままです。
どうしたら、どういうものを選んだら、母に折り紙以上に喜んでもらえるのだろうと二人でしのぎを削った日々は忘れません。
何かを「手伝ってあげる」と言ってもすぐに「いいよ」と断られます。そんな母の背中が、いつも私たちにはどこか無理して見えていました。
フリージアが大好きなので何度かプレゼントしたことはあったのですが、反応は普通でした。それが「私が自分でイラストとして描く」ということでこんなに喜んでもらえるとは。
そんなことを考えていたら、今日戸棚の中に私の好きなお菓子が入っているのを見つけました。チョコ味のバウムクーヘンです。数日前に買ってくれていたそうです。またしても先に嬉しいことをしてくれていました。
基本的に尽くし体質であって、受け取り下手。
そんな母をこれからも大切にしていきたいと思います。
ここまで読んで下さってありがとうございました。
このエッセイはともきちさん、yuca.さん主催である
「お花とエッセイ」コンテストのために書き下ろしました。
企画をきっかけに大切なことに気付くことが出来ました。
審査員のつる・るるるさんを含め、お三方を応援しています。
素敵な企画をありがとうございました。
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