誰を主役にするかでエッセイは決まる？

一つのテーマに沿って書いていく。そんなことを私は創作でやってきました。ひとつの作品の中で訴え続けたいテーマだとか、最終的に見えてくるテーマだとか。魅せ方はたくさんありました。

勉強していく中でエッセイとは「このテーマを一番印象的に見せるのなら」ということを考え、テーマを主役にする感じなんだろうかと感じたのです。

まずは分析から入ってみる

「エッセイを書かなくては」と気負いするようになって思ったことは、自分をよく見せたいという気持ちとはまた違った感情なのだなということでした。自分をよく見せたいとはつまり、いい文章に見えるようにしたいという気持ちです。

読みやすいだとか流れるようにとか、表現はいろいろあります。けれども私にとって共通していたのは、主に美しい作品になるような文章を書きたいという気持ちでした。

その美しい文章にしたいという夢半ばにして、今回のエッセイという新しい道筋に入ってきてしまった訳ですね。

まだ探索中ですが、「エッセイを書かなくては」なモードになる時に気を付けていく形式というものがあるようです。それが今までと全く違っていて、これがマスターできたらと思うようなものが少し見えてきています。それはどう発展させたら、どうつなげたら面白く見えるかということじゃないかと思います。

エッセイとは「料理」

そんなことをひとり考え始めていたら、ねむさんの書いたこのnoteフェスのレポートを読むことになります。ここには岸田奈美さんにとってエッセイと小説とはどこが違うのか、という点について語られています。

この図がとても分かりやすかったのでそのまま引用させて頂きました。

ありのままの自分では

ねむさんによって描かれたこの図を見て一番最初に思い出したのは、美輪明宏さんがかつて「ありのままの自分を愛してほしい」という相談に対してした名回答でした。うろ覚えなのでそのへんは申し訳ないです。

ありのままの自分を愛してほしいっていうのは
収穫したばかりの泥だらけの大根を
「そのまま食べて下さい」っていうのと同じ
ちゃんときれいに洗って、料理して出さないと

これを聞いた時、何だか自分の中の固定概念のようなものが一気に砕け散ったかのような気持ちになったことを覚えています。もちろん、ありのままの自分を受け入れてほしいという気持ちが私にもあるうえでです。確かに何も手入れしていない自分を渡しても、じゃあ受け取ろうという気持ちにはなかなかならないでしょう。

それに誰かに好かれたいときにはおしゃれなど、自然と自分を良く見せようとする気持ちが出てきます。相手の好みの外見にと努力したりするのは、よく聞く話です。それが料理したりうまく味付けをするということと同じではないかと考えました。

ここで、ふと「エッセイとはテーマを主役にする」ということに対して何かが似通っていることに気付きます。それはおそらく「誰を主役にするのか」ということなのではないかと。つまり誰に食べて欲しいかということですね。

誰を主役にするか

創作には主役がいます。自分のことを語るのならそれは作者の自分であるし、小説や物語なら主人公というものです。「自分の言いたいこと」を根底に据えて文章を組み立てていきます。これが私のずっと小説でやってきたことでした。といっても、何も考えずに書きたいからとりあえず書くということも多かった気がします。

それが、エッセイというのは「相手を楽しませることを主役にする」ということなのではないか――私はそんなことを思ったのです。これは他の人から見て自分の文章は綺麗に見えるか？ということや、こういう言い方をしたらわかりやすいか？ということとは少し違います。それは完成度というものに入ります。

誰かに何かを届けたいと思ったとしても、書き方や伝え方を工夫すること。

工夫することなんて自分ではやっているつもりでした。けれども本当に必要なのは完成度の中にあるものではなく、もっと内側にあるものだったのです。それは創作とは違う意味の着眼点であって、ある意味では大衆的な目線だったのかもしれません。それが編集、脚色という具体的なテクニックで描き出されていくのです。

noteで好きなクリエイターさんを見ていて感じていたことが、岸田奈美さんのシェフに例えた表現によって一気に実感を持てるようになりました。やはり人気のあるクリエイターさんはこういったセンスを持っていたのだということに気付かされたのです。

私は元々創作畑の人間なのでモードを変えるのに、まだまだ感覚がついていかないことがあるのでしょう。今はまだ翻訳作業中というところでしょうか。正直エッセイという未知の領域に本格的に踏み込んだばかりなのでおっかなびっくり進んでいます。

ここまで読んで下さってありがとうございました。