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その優しさで得をするのは誰?④

さてその週もサークルに行き、5人くらいでご飯を食べました。たしか夢庵だったと思います。一人暮らしだと魚、特に生魚はなかなか手を出せない代物なので海鮮丼を食べ、20時くらいに電車勢とはお別れしました。

残ったのは私と同学年の男の人。バスケがうまく、数少ない古株のサークルメンバーです。どうやら私が二十歳になったのを覚えていたらしく、近くのトリキで飲もうか、そんな話しになりました。

その人と2人きりで話すことは初めてでしたがなんとなく話題が弾み、その後も何回か2人で飲みに行くようになりました。その人のいいところは気を他の人より遣わなくていいところです。なにより、痩せた後も態度が変わらなかった数少ない友人です。

時々家に来たがること以外はとてもいい人でした。

その日もなんとなく鶏肉が食べたくて、そうしたら相手からも連絡が来て二つ返事で居酒屋に行きました。いつものように好きなものを頼み、いつものように下らない話をして、お酒が進みます。楽しかったのですが、いつもより相手のお酒のペースが早いのが気になりました。

因みに私はお酒に弱いです。ですが体調によって何杯飲んでも平気な時があります。その日は本当にたまたま平気な日でした。私は運がいいです。

そうこうしているうちに、相手が分かりやすく静かになりました。珍しく水も頼みます。時間も遅くなったので店を出ようとすると、相手が何故か全額出してくれました。

普段は割り勘なのに。

半分出そうとごねる私を制し、代わりにその人は言いました。

「ごめん酔って帰れないから泊めてくれない?」

まじかよ。

最初に浮かんだのがその一言でした。もしかして全額出してくれたのは宿泊代の前金ってやつでしょうか。しかし,勝手に飲んで勝手に酔って「泊めて」はないでしょう。公衆トイレで寝ゲロでもしてればいいのです。今なら思います。

ただ、その時はそのような思考には至らず心配していました。奢って貰った手前断りにくいというのもありましたが、

酔っている人を放置して帰れない

というシンプルな罪悪感があったので、葛藤の末初めて家に招き入れることにしました。酔っぱらっていれば多分すぐ寝てくれるでしょう、という淡い期待を持っていたのです。

適当に寝具をセットし、水を飲ませ、適当な着替えを貸しました。※身長が近いのとそれだけ太ってたのでできた代物

さて寝ましょうか,となった時に「酔いすぎて眠れない」と言い始めました。本当は眠かったけれど話し相手に付き合ってあげていました。最初は実に中身のないくだらない話でしたが、元々話していたのと時間帯もあって恋愛の話になりました。

そこで初めて、彼女がいるということを明かされました。

衝撃でした。あれだけ警戒していたのに、私は彼女持ちを自分の家にあげてしまったのです。いや悪いのは勝手にいないと思って確認しなかった自分なのですが、知ってしまうと落ち着いてはいれません。

今まで彼女に確認せず二人で遊びに行ったり、家にイレギュラーとはいえあげてしまって申し訳ないと話すと、「別にいいよ、好きかわからないし」という答えが返ってきました。

私はその言葉に覚えがありました。

「その優しさで得をするのは誰?⑤」へ続きます。

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