パワハラで仕事を辞めた。なんでもできるはずなのに、なにもできない。

今年の5月付で一年半勤めた会社を辞めた。元々私は新卒で入った会社をやりたいことのために9ヶ月で辞めたので、新卒から3年も経たないうちに2社も辞めてしまった。

今回の辞めた原因はパワハラだ。
詳細はあまり気持ちのいい内容ではないので避けるが、少なくとも相談した人が「それは辞めたくなる」と理解を示すような仕打ちをされていた。

昨年の11月に初めてそのような目にあってから、色々な人に相談して解決を図ろうとした。小さい部署で専門性も高く、外から介入も難しい関係性の中でよく頑張ったと思う。あまりの理不尽さに会社のトイレで泣いたことは一度や二度ではないし、今年の2月には激しい腹痛で夜中に救急車に乗ったが、その次の日も休まず会社に出社した。
未経験の業種/職種でとても苦労したが、文句ひとつ言わずに淡々と仕事をしていた。

それでも、上司は私のことを一度だって認めることはなかった。上司の指示で行った仕事に対しても私のミスにされて怒られたし、常に「社会人経験がなく常識がない」ということを言われていた。

あまりにも常識や配慮が欠けているという話だったので、「具体的にどこがダメなのか教えてください」と聞いてみても、上司は答えず逃げるばかりだった。

上司からしてみたら中途100%の経験者揃いの会社に未経験のやつが入ってきてさぞかし不快だっただろう。最初の会社を中途半端に辞めて、かつて上司達が耐えてきた理不尽な環境で働いたことのない私の態度はたいそう癪に障ったのかもしれない。

でも、私からしてみれば採用面接の段階で上司と会っていたしな、という気持ちがある。よくある現場の人間ではない人が採用を決めた状況というわけでもなく、きちんと私が未経験であることを知っていて上に通したのだ。そして私の年齢、経歴全て諸々包み隠さず開示した上で採用されているのに、どうしようもならない点でねちねち言われてもなぁ、と思う。

誰に相談しても、どれだけコミュニケーションを工夫してもどうしようもなくて。最寄駅で上司に似た人間を見て涙が止まらなくなり、パニックを起こすようになってしまい、最後は無理矢理会社を辞めた。

心が無理をしていたのか最初の2週間は布団から出られなくなった。ひどい吐き気で食べ物を身体に入れることができず、無理矢理食べたけれど全部吐いてしまった。心臓が重くて痛くて、重力が何十倍にもなって身体にのしかかるようだった。双極性の症状とは異なっているが身体の拒否反応がひどく、起きられもしないのに泣いているだけのよくわからない人間がそこにいるだけだった。

全身が針を刺すように痛い。熱が出てひたすらに辛くて、1日に起きていたのは3時間程度だった。

夜になると希死概念が強くなり、1人ではいられなかった。仕事をしている夫に何度も迷惑をかけ、起き上がれるようになってから他人と会話をしたり図書館に行ったりして、少しずつ回復した。双極性のうつ状態とは異なる、明確なストレスが身体に現れたのだ、と今になってわかった。

どんなに辛くても、現実は進んでいく。
夫の存在もありもう死にたいとは思わないようになった。退職に先立って必要な保険の手続きを調べたり、もう少し落ち着いたら職業訓練も受けてみようと思っている。一時期に比べたらかなり落ち着いたし、外出や電車に乗ることだってできるようになった。もう働けないかも、と思ったこともあったが、いずれどのような形であってもまた働きたいという気持ちを今は持っている。

狂ってしまったような自分の身体は、本当はただストレスにあてられて一時的にそうなったんだな、と理解できるようになるまで回復した。

身体や心が回復すると、厄介なことに頭まで回復してくる。時間は腐るほどあるのに金は有限だし、奨学金の返済も私を追いかけてくる。
やべえな、どうしようかな、とじわじわ考えていく中で、辞めたことに対しても少しずつ冷たい現実が押し寄せてくるような気がした。

どうすればよかったのか、という答えは未だに見当たらない。3年も経たないまま二つ会社を辞めた私にまともな職業を手にすら可能性はあるのかもわからない。

誰でも仕事をしていたら嫌な思いくらいするだろう。同い年で学部卒の友人は、上司に毎日小言を言われながら5年近く勤めている。毎日朝が来るたびに憂鬱な気持ちになりながら、それでも1日1日と会社に行っている。

それに比べたら自分はなんなんだろうか。
上司の言うことが変わることも、仕事上の有能さと人間性に相関関係がないことも、わかっている。わかっているけれど今の世の中では辞めた私が白い目で見られるのだ。気持ちはわかるしそこに異論はない。

でも、家に帰ってから泣きながら崩れ落ちた自分のことはどうなるのか。自己流のコミュニケーションを押し付け、それ以外は無能扱いする上司の元でどう働けばよかったのか。はたしてこれは気にする気にしないの問題だったのか、よくわからない。

辞める辞めないの交渉を会社とする中で、案外会社はパワハラに関して甘い部分があるし最終的に辞める奴のいうことなんかどうでもいいと思っていることがよくわかった。

会社に勤めている奴も人間なんだからさ、長く勤めている人の肩を持ちたくなるだろうし、パワハラと騒がれたらなんにも指導できないよ、なんて言いたい気持ちもわかる。

あれだけ必死に転職活動してやりたいことを実現できる仕事に就けたのに、思わぬところでつまづいてまた一からやり直しになった。こんな経歴の自分を雇ってくれるまともな場所があるのかわからない。

世の中に対して、わかることもわからないこともたくさんある。だけどこれだけはっきり言えるのは、私が辞めた事実は覆らないし、これから先をどう生きていくのかは未確定要素だってことだ。

仕事を辞めて自由なはずなのに、どうにも不自由に感じてしまう。やればなんでもできたはずなのに、できるのに学歴だけ立派になってその後の仕事では時間が伴わなかった。

いちいち上司の態度に対して気にしたり、倫理観を問いたくなるような気持ちになる自分が疎ましい。虐待を受けていたのだから諦めることには慣れているはずだし、性格も歪み切ってしまってもおかしくないだろうに、相手の態度や倫理観が許せず、我慢もできなかったまっすぐさが憎たらしい。謎に芯が強くて狂いきれなかったこの性格は、正しく回っていない世の中ではあまりにも生きにくすぎる。

それでもどう足掻いても自分と別れることはできない。明らかに私がこの先生きにくいと分かっていても、遅かれ早かれ今の仕事は辞めていただろう。そう思うほど辞めてからの2週間は堕ちていた。

これから先のことに対して、ネガティブにもポジティブにも思うけれど、まあとりあえず自分を安心させられることをしようかな、と考えている。

あと何年生きるのかわからないけれど、どういう形でさえ生きていけるように。