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小説

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基本的にノンフィクションです。己の記憶を削ってます。
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【短編小説】亀田製菓

【短編小説】亀田製菓

■ 6月17日 梅雨が開けようとしていた。雨の中を自転車で走った。

 ハンドルから手が滑った。僕は、転んだ。びしょ濡れの地面に、びしょ濡れの僕が転がった。

 土砂降りの雨が降っていた。そういえば、今日も天気予報に傘マークが出ていた。傘も差さずに僕は、信濃川の堤防を、自転車で走っていた。裾花中学校へ通う、いつもの通学路だった。

 小学校へと向かう小さな女の子が歩いていた。彼女が持つには、大きす

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地方出身のオタクが新宿で人生最初で最後のナンパをした話

地方出身のオタクが新宿で人生最初で最後のナンパをした話

新宿、ビジネスと喧騒が交差する街。

新宿、通り一つ隔てるだけでガラリと雰囲気の変わる街。

新宿、地方出身者が嫌というほど通過するバスターミナルの街。

きっと人それぞれに新宿への想いがあるのだと思う。

あなたは新宿が好きですか?

ある約束夜19時、僕は新宿中央公園のベンチで泣いていた。

それは7年前、2014年の4月3日。大学3年から4年となった僕は、目まぐるしく動く就活狂想曲の真っ只中

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秋葉原の添い寝屋にハマった話

秋葉原の添い寝屋にハマった話

2016年、夏。あの頃、僕は落ち込んでいた。

病んでるって表現はチープだ。なぜって、そんなもん人それぞれだからである。
疾患、パーソナリティ、一時的な抑うつ、ただの落ち込み、気のせい。
病んでるって状態も1か0かの二進数ではなく、長いグラデーションの上のどこにいるか、という話なのだ。

その頃の僕は22歳、新卒2年目。大したことはないが、それなりには落ち込んでいた。

無理もないだろう。

就職

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