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<大地を最大限に活用する 根圏のデザイン>


<大地を最大限に活用する 根圏のデザイン>

狭い面積で多種多様な植物を栽培する家庭菜園では、コンパニオンプランツを活用して畝の上を全て野菜やハーブだけにする方法がオススメだ。マルチをうまく利用すれば、雑草の草刈りの頻度も量も減るし、食卓に並ぶ食材の栄養バランスも整い、見た目の美しさも増す。もちろん、無農薬・無肥料栽培の助けとなる。

コンパニオンプランツにおいてのよくある失敗例や活かせていない事例は、その組み合わせではなく根圏を意識していないために起こる。生物多様性の力を引き出すには、組み合わせも大事だが間合いはもっと重要である。

植物には主根の縄張りとなる根元根圏、側根の縄張りとなる自立根圏、その外側にある共存根圏がある。根元根圏は植物の根元から5~10cm程度でこの範囲内には他の作物はもちろん、雑草も生やさないようにする。水分の競争をさせないことはもちろん通気性をよくするためだ。自立根圏はその種によって範囲は大きく変わる。自立根圏の計算方法はタネ袋の裏に記載されている栽培方法を見れば分かる。そこに「株間30cm」と書いてあれば自立根圏は30cmである。

ただし、自然農の場合は1~3割り増しの根圏を取るのがオススメだ。自立根圏が被らないように配慮したものが株間で、育種農家たちからの愛のこもったメッセージである。自立根圏内も基本的に他の草は生やさないようにする。光合成、風通しなどを考えながら夏の間はこまめに草刈りをしたい。またマルチの工夫で草が生えてこないようにするのも大切だ。

太陽の角度から畝の上を観察するとお互いの野菜の緑が被らないイメージ。森林内で上を見上げたとき、隣り合った木々の葉が被らないように太陽の恵みを無駄なく受け止めるようにデザインしよう。自然界では寒いほど乾燥が強いほど、自立根圏は広くなる様子が観察できる。逆に暖かいほど水が多いほど自立根圏は狭くなっていることが分かる。太陽光と水が植物の成長にとって重要なのだということがよく分かるパターンだ。

畝の上にどうコンパニオンプランツをデザインするか考えるには、まずメインとなる野菜を決めて、株間を意識して配置する。その自立根圏の外側にコンパニオンプランツを配置する。もし、コンパニオンプランツもメインの野菜と同様に多く収穫したい場合は自立根圏が被らないように配慮しよう。特にハーブやマメ科は生育が強いので畝の端や肩に植えてもよい。共存根圏では他の植物がいることでお互いにメリットを生む。緑肥はもちろんのこと、ハーブ類や雑草を生やしておこう。畑が狭い場合は自立根圏の際にコンパニオンプランツを配置するのもありだ。その場合はメインの野菜の成長を邪魔しないように、こまめに収穫と根切りを行いたい。

地上と地表のデザインと同様に、地下空間もまたコンパニオンプランツでは重要となる。植物たちが茎葉や枝葉でうまく空間を棲み分けて光と空気を利用するように、植物の根の形は様々であり、太さも違えば深さも違い養分・水分を利用する。また植物によっって積極的に取り込む栄養素も違う。たとえ団粒構造の土ができたとしても、使わなければ微生物がすべて分解しきってしまうか雨水で地下深くに流れていってしまう。

これらをうまく利用することで地下空間の養分も水分も最大限に活用することができる。コンパニオンプランツの組み合わせはこの根の組み合わせも考慮されているので、はじめは特に意識する必要はない。
最終的には雑草が空いた隙間を活用しようとして生えてくるから、あまり難しく考える必要もない。野菜の成長の邪魔をしていなければ、排除する必要はなく、邪魔になってきたら草を刈って敷けば雑草が得た養分を大地に還元し、それで野菜が育つ。

多種多様な植物が共生する森林では、似たような深さに根を張る植物ばかりではなく、被らないように根の深さを変えて養水分の獲得競争を回避する。また葉をつける位置や形もさまざまにして、太陽光の獲得競争を回避する。それが結果的に養水分を効率的に利用し、狭い範囲に数多くの植物が生育することにつながる。それはさらに土壌の崩壊を防ぐ源となり、さまざまな個性を持った動物たちを受け入れる。

それぞれの個性やニーズのささいな違いが、それぞれの生息する時間と空間を分けつつ複雑に絡み合い、衝突がない中立的な時空間もも生まれる。その無駄な競合は避けられ、棲み分けが行われる様子はまるで「神様のデザイン」と言いたくなるほど、神秘的で玄妙さ溢れる。


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