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【INSIDE-SPARKLE LEGAL】小幡映未子 弁護士

 本インタビューシリーズは、スパークル法律事務所に所属する弁護士の「ありのままの姿」を紹介する企画となります。各弁護士が普段何を考えているのかどのようなキャラクターなのか、そして事務所の雰囲気をお伝えします。

 今回、登場するのは、小幡映未子弁護士です。小幡弁護士は、会社法やコーポレートガバナンスに加え、証券化・流動化、プロジェクトファイナンスを含む幅広い金融取引法務や再生可能エネルギー法務の経験が豊富です。また、企業の社外監査役としての実績も有しています。


弁護士になるまで・若手時代:金融法務への興味

Q1:いつ頃から弁護士を志しましたか?

 父が弁護士だったので、弁護士という職業は小さいころから身近な存在だったのかもしれません。当時は、名刺に自宅の住所や電話番号まで載せていた時代で、自宅に「先生はいますか」という電話が時々かかってきていました。「学校の先生でもないのに"先生"だなんておかしいな、いったい何をやっているのだろう」と子供心に不思議に思っていました(笑)

 中学・高校の時も、身近だとは言っても、弁護士に自分が絶対なりたいと強く考えていたわけではなかったです。ただ、大学受験の際に、法学部を志望したのは、父がちょっと難しい顔をしながら、興味深そうに法律雑誌を読んでいる姿をみて、「法律って面白いのかもしれない」と思ったことが理由の一つでした。

Q2:大学や大学院時代はどんなことをされていたのですか?

 学部時代も、司法試験を目指していたわけではなく、就職に強い会社法のゼミを取るなど、当初は就職活動をして企業に就職することも念頭に置いていました。ただ、いざ就職するとなった時に、自分は一体何をやりたいんだろうとか、どういう会社に行きたいんだろうと考える中で、資格試験を勉強しながら大学院に行く友人も周囲にいたこともあり、大学院に進学することにしました。

 大学院時代は、民法の研究室に所属しつつ、司法試験の勉強をしていました。修士論文のテーマは、将来債権譲渡でした。今は、債権法改正で明文化(民法466条の6)されましたが、当時は、将来債権譲渡の有効性や債権の特定について白熱した議論がされており、興味深かったため、研究テーマとして選びました。

Q3:弁護士になった後は、どのような業務をされていたのですか

 弁護士になった後、最初は、金融法務、特に、当時、ブームの真っただ中であった債権・不動産などの多種多様な証券化案件に注力している事務所に入所しました。代表的な債権の証券化スキームでは、債権譲渡が利用されており、大学院で学んだ知識が少しは役に立ちそうだと思ったのが入所の理由です。

 その後、事務所の拡大化に伴い、私が取り扱う業務の範囲も広がり、金融法務のみならず、企業法務M&Aといった案件にも携わる機会を得ました。さらに、英国留学からの帰国後に、太陽光発電事業を行っている企業に出向したこともあり、再生可能エネルギー法務も手がけることが多くなりました。再エネ領域は、2012年に、国が再エネの普及促進のため、FIT制度(再エネで発電した電気を電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度)が設けられたのですが、これによってさまざまな課題が生じ、課題対応のために、度重なる法改正や制度改正が多く行われる領域です。常に最新の制度を把握してアップデートしないとならない点は大変でもあり、変化があって面白いところでもあります。

英国留学時代

Q4:なぜ、英国に留学したのでしょうか?

 元々金融法務に携わっていたということもあり、ロンドンが世界有数の金融街であるというのが大きな理由です。留学先でも、銀行法や担保法、コーポレート・ファイナンスの実践的な講義を中心に履修していました。とはいっても、全く知らない事ばかりという感じではなく、日本の実務もかなり追いついているのだなと感じた記憶があります。

St. John’s Woodの緑多き街並み

 また、英国を選んだ(不真面目な?ただ本人的にはかなり切実な?)理由としては、生活面の利便性もあります。当時小学校低学年の娘と2人で渡航することになっており、多くの弁護士が留学先として選ぶ米国は、都市にもよると思うのですが、自動車の運転が必要になる場面が多そうだなと。これに対して、英国のロンドンは、地下鉄等の公共交通機関で移動ができるのが車の運転が苦手な私にとっては魅力的でした(笑)。

 ロンドンでは、娘と二人ということもあって、治安がいいと言われる St. John's Wood という街に住んでいました。このあたりでは、日本からの駐在員のご家族を中心に日本人のコミュニティができていて、私の授業が遅い時には、娘を見ていただくなど、いろいろとお世話になりました。ご近所のみなさまの助けなしには、dissertation(論文)を書き上げロースクールを卒業することなど到底できなかったと思い、いまだに感謝の念に堪えません。

シャワー故障・修理時に撮影した、英国の100年以上の歴史のある自宅の配管

Q5:英国留学で面白かった点や魅力を教えてください。

 ロースクールの講義は双方向で、学生、特にヨーロッパや中国からの留学生が、議論の際に、当てられていなくても、そして英語が母国語でなく、発音や文法が多少おかしくても(私に言われたくないでしょうが。。。)、積極的に発言して能動的に議論に参加していました。そうした姿をみて、純粋にすごいなと思うとともに、相手の発言に割り込んで話すくらいの熱量がとても新鮮でした。英語力よりも議論や意見の質が重視されているようで、ある教授が、試験(筆記)のときに、アジアの学生はたくさん文字数を書くことはできないようだが、短くても一貫性がありポイントを押さえて書いてある答案であればDistinctionを取れると言っていたのが印象に残っています。

 また、英国の弁護士には、バリスタとソリシタの2種類があり、法廷で訴訟業務を行うのは原則的にはバリスタです。バリスタとして実務を行うためには、バリスタの事務所で実務研修が必要なところ、この実務研修を受けられる人数が非常に限られていて、とても難関だということです。裁判官やバリスタが、裁判では巻き髪の「かつら」や法服を着るという伝統が今でも生きており、傍聴した裁判でも確か裁判官はかつらを着用していたと記憶しています。かつら一つで、法廷手続にフォーマルさや厳粛さがもたらされ、裁判所が劇場のような異空間と化すことが不思議で興味深かったです。

 英国は、あまりご飯が美味しくないイメージもあるとは思いますが、カリフォルニアロールを売っているような寿司屋や中華料理屋、インド料理屋も豊富にあり、あまり困りはしませんでした。また、ロースクール卒業後に研修をさせていただいた法律事務所の近くにBorough Marketという有名なマーケットがあり、そこの屋台の料理はとてもおいしく、よくランチに利用していました。英国名物のフィッシュアンドチップスは、どこのお店でも似たような味でそこまで感動はありませんでしたが(笑)

マーケットの屋台の様子

帰国後~スパークル法律事務所入所

Q6:スパークル法律事務所入所のきっかけを教えてください。

 帰国後には、弁護士になってからお世話になっていた事務所に戻って、金融法務や再生エネルギー法務を中心に業務を行っていました。その後、プライベートとの両立が必要になり、自分のペースで仕事ができる事務所に移籍しました。移籍先の事務所では、金融や再エネ法務に限らず、一般的な企業法務や一般民事の案件に携わったり、常勤の社外監査役に就任したりと、業務の幅を広げることができました。そのような中で、再び企業法務を業務の中心にしたいなと考え始め、この度、スパークル法律事務所に参画しました。

 三谷弁護士とは、もともと、第一東京弁護士会の会社法研究部会で一緒でした。2023年に第一東京弁護士会で『最先端をとらえる ESGと法務』を出版した際に、私は「ESGとダイバーシティ」の箇所を執筆しました。その際に、三谷弁護士に私が書いた文章をスタイリッシュなこの事務所の内装のように、洗練された文章に修正してもらったのが印象に残っていました。そのようなご縁とタイミングが合い、この度こちらに参画することになりました。

プライベート・今後の展望

Q7:業務以外には、普段、どのようなことをしていますか。

 平日はなかなか食事を作る時間をとることができないので、週末に料理をして作り置きをしますね。食材を大量に買ってきて、土日に料理を作って、平日に消費していきます。例えば、唐揚げを大量に揚げたり、野菜を大量に切ってピクルスにしたりですとか。数年前に、手間をかけずいろいろな料理が作れるというネットでの口コミを信じて、高機能のオーブンレンジを購入したのですが、本当に優秀で、塊のお肉を買ってきて適当に味付けをしてオーブンレンジに入れると、ローストビーフやスペアリブ、サラダチキンができあがります。作り置きメニューの幅が広がり、かなりの頻度で使用しています。

 また、身体を動かすのも好きで、健康維持とダイエット目的で、ジムに通って筋トレをしています。小学生の時には、遅刻に厳しい小学校だったため、家からバス停まで毎日走っており、鍛えられて、昔は結構足が速い子供でした。中学時代は陸上部に所属し、短距離を走っていました。そのせいか、まっすぐな道を歩いていると、走り出したい衝動に時々かられます。とはいっても仕事が忙しくなると定期的な運動をさぼりがちになってしまうので、同じように運動不足を嘆く学生時代の友人と、半分冗談、半分本気で、将来、マスターズ陸上M90(90~94歳)クラス400メートルリレーに出て、金メダルを取ることを目標に頑張ろうと励ましあっています。これが、密かな大いなる野望です(笑)。

Q8:今後、目指したいことを教えてください。

 企業や社会において、より多様な人々が属性にかかわらず能力を発揮できるように尽力したいと考えています。現在、日本政府は「2030年までに女性役員の比率を30%以上とする」ことを目指しています。なぜ30%なのか、30%になったら何が変わるのかと疑問に思われるかもしれません。私も最初はそのように思っていました。しかし、この数字が15%未満の組織では、女性の能力や技能が「女性」という属性と紐づけられてしまう傾向にあって能力を発揮しにくいのに対して、この割合が、30%とかを超えてくると、その傾向が変わりうるという研究結果があるそうです。

 他の女性の社外役員の方々から、男性ばかりの取締役会の中に女性がぽつんと一人でいると、どうしても女性視点での発言が期待されてしまったり、発言しづらかったりするけれども、2-3人になってくると、ようやく自分の専門分野を話しやすくなるという話を聞いたことがあります。社外監査役業務をさせていただく際は、弁護士としての経験や法律の知識を活かして企業様の発展に貢献できるよう努めることを一番の念頭においていますが、30%の数値目標の達成に微力ながら寄与できたらいいなという思いもあります。娘が大人になったときに、皆がバイアスを感じることなく、能力を発揮できる社会になっていることを願ってこれからも仕事をしていきたいと考えています。(了)