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急成長企業Fastlyのイベントマーケティング変革〜イベントのオンライン化における勝因とは?〜

セミナーや展示会、リアルイベントはマーケティングにおいて非常に強力な手段でした。イベント告知によって認知拡大し、セミナーやセッションへの参加によって理解促進が進み、個別相談によって商品やサービスの検討にまで至るケースもあります。

今、この「イベントマーケティング」にも大きく変革が求められています

企業向けのコンテンツ配信ネットワークソリューションを提供するFastlyでフィールド マーケティング マネージャーを務める冨田さんもその変革に挑戦する一人です。

今回は、Fastlyのイベントマーケティング施策「Yamagoya」の取り組みにフォーカスしながら、イベントのオンライン化への挑戦、見えてきた課題と今後の展望について、冨田さんにお話を伺いました。

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(上:Fastly株式会社 Field Marketing Manager 冨田 華奈子さん、左:スペースマーケット ビジネス開発部 堀田、右:スペースマーケット プロデューサー 中村)

「外資企業の日本チーム1人マーケ」として何でもやる


----Fastlyはどのような会社ですか?

冨田:Fastlyは、いわゆるコンテンツ配信ネットワーク(CDN)のサービスを提供しています。世界のデジタル企業が高速かつ安全、スケーラブルなオンライン体験を提供し、利用者の期待に応え続けるためのサポートを行っています。2011年に創業したFastlyは、国内では日本経済新聞社、メルカリ、クックパッド、サイバーエージェント、海外ではVimeo, Pinterest, The New York Times, GitHubといったサイトで採用されています。私の所属するFastly株式会社はその日本支社です。


----実はスペースマーケットのサービスでも利用させていただいているんですよね!

https://blog.spacemarket.com/code/fastly-meetup2/
(約2年前にスペースマーケットのエンジニアがFastlyさんのMeetupでLTしたときのブログ)


----冨田さんの担当されている役割、業務範囲を教えていただけますか?

肩書きとしては「フィールド マーケティング マネージャー」で、今は日本専任のマーケティング担当として働いています。日本のマーケティング担当が私一人なので、基本的にマーケティングに関わると思われることは全部やる感じです。(笑)

業務範囲は結構広くて、プロモーション、イベントやPRはもちろん、専門外ではあるのですがプロダクトマーケティングやデザインにもにも関わっています。


----デザインにも関わるんですね!幅広い...。

そうですね、本国(アメリカ)のデザインチームが作った素材データをもとに自分でIllustratorを使って編集したり、日本向けのイベントの看板やリーフレットを自分で作ったりしていました。(笑)
どうしても本国のデザインチームに日本向けのデザインをお願いすると、フォントや文字の改行など、細かい部分でどうしても修正が必要になるケースも多いんですよね。だんだんとIllustratorの使い方を独学しながら、自分でやるようになりました。


----主なマーケティング業務としてはどのようなことをやられているんですか?

Fastlyの国内での認知向上から、リードの獲得、セールスへの接続まで地道に活動しています。Fastlyの日本での認知度はまだまだ低いので、まずは知って、理解を深めてもらうところからですね。イベントやキャンペーン、インタビュー記事の配信などさまざまな活動を行っています。

Fastlyでのマーケティングの特長としては、商談成立までの期間が長くなり、1年以上かかるケースもたまにあるんです。なので、単発の打ち上げ花火的な施策というよりは、継続的にコミュニケーションしていくことが重要かなと思っています。

イベントを通じて「山小屋」のような知の交差点を作りたい

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(2020/11/25,26開催のFastly主催Yamagoya Traverse 2020イベントページより抜粋)

----Fastlyが主催するイベント「Yamagoya」について教えてください。

「Yamagoya」は2017年から年に1回開催していて、今年で4回目になります。「Yamagoya」のイベントを通じて、「Fastlyを既にご利用のお客様の知見を、これからご利用になる方々と共有する場」とすることを目指しています。

「Yamagoya」は文字通り、登山で行く「山小屋」が名前の由来になっています。「山小屋」って、これから山頂を目指す人と、山頂から帰ってくる人の交流場所になってるんですよね。そこでは「山頂付近は吹雪いているから気をつけよう」「こっちの道は険しいから注意しよう」みたいな会話が登山経験者と初心者の間で行われていると思うんです。「登頂する」という共通の目的をもった人たちが、お互いにフラットに知見を共有し合う場。
Fastlyが主催するイベントも、山小屋のような、知見が共有されてコミュニティが自然に広がっていく場にしたいな、と思って「Yamagoya」の名前をつけました。


----なるほど...!素敵な由来ですね!今回は初のオンライン開催だったんですね。

これまではコミュニティづくりを重視したいという想いがあって、参加者同士が対面で会う時間を作りたかったため、リアルイベントとして開催していました。毎年セッションの後に懇親会を設けていたのですが、終了時間になっても、多くの方がまだ残って話し込んでたりするくらい盛り上がっていたんです。

今年も、もともとはリアルでの開催を予定していました。開催3~4ヶ月前くらいまでは、できればリアルで開催したくて、イベント会場も抑えていたんです。ただ、8月頃になってもコロナの状況がなかなか好転しないのを鑑みて、オンライン開催にしよう、と決断しました。11/25,26が本番だったので、オンラインイベント自体の準備時間は3ヶ月くらいでした。

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(イベント参加者の皆さんとの記念撮影)


----スペースマーケットに今回のオンラインイベントの企画運営をご依頼いただいたきっかけは?

もともと、スペースマーケットさんがFastlyのお客様なので、つながりはできていたんですよね。

これまでのリアルイベントは、ほぼ私一人で運営していたのですが、200名ほどの規模感におさえていたのでなんとかまかなえていました。ただ、オンラインイベントとなると、一人では到底難しいなと...。撮影や配信の業務など自分ではわからない部分も多いので、パートナー企業さんを入れてやりたいなと考えました。

最終的には3社からイベント企画のご提案いただいて検討しました。そのなかでも、スペースマーケットの中村さんにご提案いただいた、「Yamagoya Traverse」というイベント名とコンセプトにすごく惹かれました。「あえてオンラインだからこその強みを生かしたイベント」という提案内容が良かったなと。

※Traverse : 縦走(じゅうそう)とは、登山の方法のひとつで、一般的には山頂に立ったあと下山せずそのまま次の山へ向かうことを指します。

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(スペースマーケットからのイベント提案資料から抜粋)


具体的には、オンラインだとリアルに比べて仕事の時間と組み合わせて自分のペースで配信を見たい人が多い。そのため1日に詰め込むよりも2日間開催にして、集客対象を分散させて効率よくコンテンツを見ていただける形式にする、という提案内容でした。
こういった最新のオンラインイベントの参加動向に対する示唆をいただけたのもよかったです。

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(イベントページから抜粋)

オンラインでも参加者との「つながり」をつくるために、郵送でご自宅に送るノベルティも用意しよう、というご提案内容にも納得感が高かったです。
「2日間ともイベントのコンテンツを“Traverse”(縦走)してもらいたい」という想いも当日のイベントのLPで表現しました。


オンラインだからこそ地方の方々と繋がれた

----これまで実施されてきたようなリアルイベントと、オンラインイベントの違いは感じましたか?

「音」に関して最初は心配でしたね。事前にオンラインイベントに関するウェビナーで情報収集していたところ、オンラインイベントにおいては「音」がすごく重要で満足度にも大きく影響する、ということを聞いたんです。

今回、感染予防対策の方針でスタジオに登壇者を集めて配信することが難しく、それぞれご自宅から登壇いただくHome2Homeの形で配信しました。なので、「音」の安定性はネットワーク環境や周囲環境など、ご登壇者の方々の環境に依存してしまいます。
ただ、最終的には、今回はご登壇者がみなさんテクノロジー関連の仕事をされているのもあって、ご自宅の環境面では心配はなくなりました。

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(当日のオンライン配信の様子)


----リアルイベントとオンラインイベントで参加者の層に変化はありましたか?

これまでのリアルイベントでは、ほぼ100%東京近郊からの参加でした。
それに対して、今回の「Yamagoya Traverse」では地方からも参加いただけたのが、すごく良かったです。
日本全国からご参加いただけて、これまでに接点をもつ機会のなかった方々にFastlyのことを知ってもらえました。まだまだ東京以外での活動をそこまでできているわけではないので、これから各地域への情報発信もしていきたいなと思っています。


----実際にオンラインイベントを開催されてみて、反響はいかがでしたか?

ありがたいことに集客が上手くいき、結果的には300名以上の方にイベント登録していただきました。イベント登録から参加までの歩留まりも80%以上と想定以上に良く、登録したほとんどの方にご参加いただくことができました。


----想定よりも多い参加者となったんですね!具体的にどんな集客施策を行ったんですか?

昨年までは、私一人でイベント運営していたこともあって集客施策に手が回っていない部分もありました。今回はその反省も活かして、PRチームと連携してプレスリリースを配信したり、Twitterでの告知を定期的に行ったり、情報発信の量を増やしました

また、スペースマーケットさんにエンジニア向け記事共有サービスの「Qiita」からメルマガ広告を配信していただきました。エンジニアのなかでもさらに業種や職種で細かくターゲティングして配信できるので、これまでリーチできていなかった方々にアクセスできました。結果的にメルマガの開封率も非常に高く、集客につなげることができました。


オンライン配信でも「人」感を出したい

----参加者アンケートで印象的だった反応はありましたか?

国内外含めて「事例を聞けてよかった」の声が一番多かったです。「知っている人が知らない人に知見を共有する」はもともとの「山小屋」のコンセプトとしてもやりたかったことなので、それが実現できて良かったなと思います。

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(Yamagoya Traverse 2020当日配信の様子)

特に「Yamagoya Traverse」のコンテンツとして、事前に収録していた米国のお客様の事例ウェビナーの動画に字幕をつけて配信する、ということを行いました。「海外事例をタイムリーに知ることができる機会は多くないので貴重だった」と高い評価をいただきました。


----イベント内容でこだわった部分は?

今回こだわったポイントとしては、事前収録した動画をただ配信するのではなく、ライブでの登壇者Q&Aコーナーを作ったことです。実際に登壇者にもオンライン配信に参加してもらい、Slidoでリアルタイムに質問を募集し回答していただきました。

オンライン配信はどうしても一方通行になってしまうので、人同士のコミュニケーションを生むためにどうしても実現したかった部分でした。オンラインでも「人」感を出したいんです。オンラインであっても時間を共有している以上、「ライブで見る」ことの価値は「人」と「コミュニケーション」だと思うんですよね。結果的にはアメリカから弊社のCEOやスタッフから今回登壇いただいたほぼ全員に参加してもらえたのもあり、すごく満足度が高かったです。


----今後に向けた課題は?

やはり、コミュニケーションが課題かなと思います。オンラインだと、参加者同士、参加者と登壇者、参加者とFastlyメンバーの双方向のコミュニケーションがなかなか生まれづらい。

リモートでの懇親会やイベントに自分も参加していて、一人だけ話して残りの人が聞いている構造になってしまうこと多いんですよね。どこまでリアルに近づけられるか?そもそもオンラインにコミュニケーションを求めているのか?も考える必要はありますが、来年に向けてテクノロジーや企画で解決する方法ができている気もするので、改善していきたいポイントですね。


----今後に向けて挑戦したいことは?

昨年のリアルと今年のオンラインの両方に参加された方に、アンケートで「リアルとオンラインどちらが良いですか?」と聞いてみたんです。その結果、ちょうど50%:50%くらいだったんです。

コメントとして多かったのは、「思ったよりもオンライン開催がすごく良かったので、リアルでやるとしてもオンラインとのハイブリットでやってほしい」という声です。

なので、理想としては、「リアルとオンラインの同時ハイブリッド開催」ですね。予算や工数的な制約もあるので検討は必要ですが、来年に向けて検討していきたいと思っています。

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いかがでしたでしょうか?

イベントマーケティングに携わっている方の中でも、イベントのオンライン化を検討されている方もいらっしゃると思います。

今回ご紹介した冨田さんのように、リアルとオンラインそれぞれの強みと弱みは何か、強みを活かして弱みを補完するためには何ができるかを考えることが重要でしょう。

スペースマーケットでは、今回Fastly様と実施したような「番組型ウェビナー・オンラインイベント」の開催支援サービスを提供しております。

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