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#11 宇宙ヘルスケアとQOL

Introduction

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先日JAXAの宇宙飛行士健康管理グループの担当の方とお話しする機会がありました。

担当の方とお話しさせて頂いて、宇宙飛行士の歯科管理の現状はおおまかには僕のこれまでの認識と同じであることが確認できました。

共有すると、

・宇宙飛行士は年に1度の健康診断(年次医学検査)を実施しており、その中に歯科検診も含まれる。

・歯科検診は、JAXA医師ではなく外部の歯科専門家の方が担当されている。

・歯科検診の内容は特別な内容は実施しておらず、地上で我々が受ける内容と大きな違いはない。

・検診の内容はISS搭乗の任命を受けている・なしにかかわらず同様。

これはおそらくJAXAのHP上に公開されていることだと思います。

現状のISSでの運用や直近ではこの対応で問題ないという判断なのだと思います。


ギャップ

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現在世界中で、今後の月面有人探査に向けた宇宙医療の取り組みとして、月面探査においてどのような医学運用が必要なのか、という議論が国際間で始まっています。

JAXAにおいても、
有人探査活動(月面・月周辺、火星表面・火星周辺)における宇宙飛行士の健康管理問題について日々取り組みがなされています。

そこで、現在の国際宇宙ステーション(ISS)で行っている健康管理運用と比較し、有人探査活動では技術的に足りないと思われる課題を

「技術ギャップ」

としてリストアップしています。
https://iss.jaxa.jp/med/partner/200207_health.html

技術ギャップは、最新のもので166個あるのですが(第2版 2020年2月)、
たとえば、
技術ギャップNo.12
「心停止の診断」
【根拠(リスク)】 宇宙環境では不慮の事故などにより心停止となるリスクがある。心停止の原因診断が必要となる。
【具体例・備考】 心電図、エコー、血液ガス分析

という項目があります。
【根拠(リスク)】」というのは、宇宙でこんなトラブルが起きるかもしれないよね、というトラブル項目です。
【具体例・備考】」はそれに対して考えられる対策です。
しかしこれは、地上だったらこうです、という地上での対応がベースで書かれていて、医療技術的にも、設備的にも実際に宇宙でこれができるとは限りません。

また、技術ギャップの表にはギャップの項目ごとにカラーコードが設定されていて、リスク評価が一目でわかるようになっています。
今回のこのNo.12ですと、月が黄色、火星が赤色になっています。

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すなわちこのNo.12の技術ギャップは、
火星は早急に対策が必要、
月でも火星ほどではないけど対策が必要、
といったニュアンスで理解してもらえればいいと思います。

つまり、
この技術ギャップの166個の項目が、JAXAにとって、

これらの項目、お手上げなんだけど、なんかいい解決策ない?
という項目です。

世界を変える何かを


有人宇宙探査活動はインターナショナルに行われます。
国同士がお互いに協力し合って実施されるものです。
つまり宇宙船にはいろんな国のクルーが搭乗します。

もし日本からこの技術ギャップを埋められる革新的なアイデアや製品を出すことができれば、それは世界中で受け入れられていくでしょう。
今後の地球低軌道(LEO)等における民間活動および地上医療への波及効果も当然期待できます。
宇宙飛行士にとっていいものを作れば、それは当然地上から宇宙を見上げる人たちにとってもいいものなはずなのです。

地上と宇宙はボーダレスになっていく。

宇宙で良いモノは地上でも良いモノ。

これが宇宙ヘルスケアを考える基本なのかもしれません。

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