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努力 vs 才能?努力のヒーローがいちゃだめか?

パブロ・ピカソが生涯に何点の作品を残したかを知っていますか?

答えは、およそ15万点です。

およそ1万3500点の油絵と素描、10万点の版画、3万4000点の挿絵、300点の彫刻と陶器を制作し、最も多作な美術家であると『ギネスブック』に記されている。(Wikipediaより)

有名な話なのだと思いますが、私もこれを知ったときは驚きを超えて動揺してしまいました。

15万点…?ピカソは91歳と長寿な人でしたが、それにしても、10歳からカウントしてる数字だったとしても毎日平均5点以上作っていたことになるんです。

絵画だけではなく、65歳から陶芸も始めるというあくなきチャレンジ精神を持っていました。

もう、彼にとっては「創造すること」と「生きること」は同義だったんですね。

彫刻の森美術館のピカソ館には、彼の遺したこんな言葉が飾られています。

私の宿命は仕事をすること、
息つぐひまもなく
仕事をすることである。
私は行動であり、
しばしば創造には
熱狂が乗りうつる。

私はピカソのこの生き様を知ったとき、なぜだか“努力すること”そのものの価値を教えられた気がしました。

よく人々の賛否両論を巻き起こす話題に、「努力すれば成功するのか?それともやっぱり生まれつきの”天才”には勝てないのか?」というものがあります。

私個人としては、努力が結果に繋がらないとは思わないのですが、自助努力以外の部分で結果を出す人はいる、とも思っています。それがいわゆる”天才”と言われる人。

ピカソは典型的な例かなと思います。彼は自身でも「子どもの時にはラファエロのように素描ができた」と言っているように、幼少期から描写力が凄まじく、そこには努力の結果以上に彼の生まれもった才が垣間見えます。

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(ピカソ15歳当時の作品)

では、ピカソを世界一偉大な画家たらしめたのは、彼のこの”生まれもった才能”でしょうか。数々のコンクールで金賞をかっさらったことでしょうか。

私は決してそれだけではないと思うんです。幼少期からピカソと同じくらいの描写力を持ち天才あるいは神童と言われたような人は、世界を見回せば他にもいます。それでもピカソが芸術家として一線を画す存在であるのは、やはり彼のその生き様ー圧倒的に他者を凌駕する努力が、人々の心を震わせたからではないでしょうか。

ピカソという人物を知らずに見る「ゲルニカ」と、彼の人生における思考総量(この世のありとあらゆる疑問を考え尽くしたうえで生み出した作品であること)を知ってから見る「ゲルニカ」は、やっぱり心への響き方が違うのです。

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少なくとも私は、人が何かに没頭している姿や、好きで面白くてもっと発展させたくて、寝食忘れて打ち込んでいるような姿を見ると、それが結果に繋がったり周りの評価を受けるか否かに関わらず、胸が熱くなります。自分のやる気にも変わります。

「努力しても結果が出なきゃ意味がない」という考えは、ある種「努力 vs 才能」の対立構造を生みます。あるいは自分が到底超えられそうもない壁(他者の才能)を目の当たりにしたときに、「こんなに頑張ってる自分がばからしい」と感じて、努力することの足枷になったりします。

週刊少年ジャンプの三代原則は「努力・友情・勝利」。最近でこそ変化しつつあるのかもしれませんが、過去の名作と言われる作品のストーリーは、最初の主人公の力では到底敵いそうもない最強の敵がいて、仲間と切磋琢磨しながら数多の困難を乗り越えた結果、その敵に打ち勝つというのが定石です。それは「努力が勝利を導く」という希望を少年たちにもたらす役割を担っていると思います。

希望を持つのは必要なことだと思うのです。けれど成長する過程で現実に直面したときに、誰しもが依然として少年漫画の教えを信じ抜き、自分の努力を否定し、絶望しなければいけないのでしょうか。

努力と結果(勝つ、夢が叶う)は延長線上にあるものではなく、パラレルだって考え方があってもいいのかなと。

勝てなかった。目指してたゴールに届かなかった。自分の方があの人より時間を費やして努力したと思うのに、超えられない壁があった。それはとてもとても悔しいこと。

けれど周りの誰にも負けないくらい努力した。それならば、その人は努力のヒーローであり、努力したくてもなかなかできない人にとって、憧れの存在であることに変わりはないと思います。


ちなみに当然、結果を出す人だって絶えぬ努力を積み重ねていることも事実ですから、その人たちの努力を逆否定したいわけではないのですが…伝え方が難しいな…(と感じたままこの記事を出すことをお許しください)

これからの時代の人々の努力観はどう変わっていくのか。はたまた変わらないのか。どう変わったとしても、努力が人間を人間たらしめる、苦く美しいものであることは変わらないのかなと感じています。


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