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今の調理場で、一日何百本ものスキャンピーをむけるだろうか?

文・撮影/長尾謙一 

ニュージーランド産スキャンピー加工品 
(素材のちから第40号より)

1. 分割スキャンピー

尾付ムキテール/ムキミ/カダイフ巻き/ボイルヘッドセット/カダイフ巻きセット

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スキャンピーの鮮度を保ちながら一本一本手作業でむき、旨みを逃がさず生食できる品質に仕上げている。

スキャンピーはその甘みとやわらかな身質でとても人気が高い海老だ。たとえば、一皿に3本のスキャンピーをつける料理を50人前提供するとすれば150本をむかなければならない。しかし、これを毎日毎日むくとなると、それだけでも結構大変な作業だ。時間がかかれば鮮度も落ちる。「ニュージーランド産スキャンピー 加工品」は、こうしたスキャンピーをむく面倒な作業を省いてくれる加工品だ。

2. 今の調理場で、一日何百本ものスキャンピーをむけるだろうか?

調理場に時間を生み出すスキャンピー

スキャンピーを下処理したことがある方ならお分かりいただけると思うが、スキャンピーの殻はとても硬く、生のムキ身を殻から取り出す作業は相当に手間がかかる。とてもバナメイエビやブラックタイガーのようにはいかない。さらに尾を残した尾付ムキにするには慣れが必要で、ハサミの入れる場所を間違えると尾は残らない。

はたして、今の調理場はこれを一日に何十本、何百本と下処理する手間と時間を持っているだろうか。やってできないことはないかもしれない。しかし、同じ手間と時間をかけるなら優先すべきものは他にあるはずだ。

こうした時に「ニュージーランド産スキャンピー 加工品」は力を発揮する。原料はニュージーランド産を使用。原料の買い付け時にはロットごとに検品し鮮度を確認。これを日本へ運び、原料鮮度を保ちながら時間、品温を厳格に管理し加工を進める。

身溶けしたものや破損したものは外し一本一本丁寧に加工、これを真空包装して凍結させている。10尾ごとの真空包装のため解凍ロスも防げ、袋のまま解凍すると味が流れ出ない。

「尾付ムキテール」「ムキミ」に加えて、「尾付ムキテール」に丁寧に手作業でカダイフを巻いた「カダイフ巻き」がある。その他、ヘッドの味噌を掃除しボイルした後、左右の腕を差し戻した飾り用のボイルヘッドとセットした「ボイルヘッドセット」、「カダイフ巻きセット」もあるので、料理に合わせて使い分けができる。

それでは「ニュージーランド産スキャンピー 加工品」を使ったフランス料理をご覧いただこう。

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3. むく手間をすべて省けることは、レストランにとって大きなメリットです。

「ニュージーランド産スキャンピー 加工品」を使った料理を使って、フランス料理「ラ クレリエール」の柴田シェフに料理をつくっていただいた。

今回は「シェフがお客様に料理を説明する」という設定で、それぞれの料理を楽しむポイントをシェフの声でご紹介しよう。各料理にリンクしてある〝シェフのプレゼンテーション〟を聞きながら、そのおいしさをイメージしていただきたい。

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オーナーシェフ 柴田 秀之 さん

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フランス料理 ラ クレリエール
東京都港区白金台
「ラ クレリエール」の料理は、真っ白な空間の中ではじまる。真っ白なテーブルにゆっくりと提供されるフレンチの一皿。なぜこの素材を選ぶのか、なぜこの技法を使うのか、そして、なぜこのお客様にはこの料理を用意するのか。「ラ クレリエール」はフレンチが論理性の構築だということをあらためて感じさせ、この空間で過ごす時間もその要素の一つだと教えてくれる。

4. 「ニュージーランド産スキャンピーのムキミ」 竹の子 ホワイトアスパラガスのカクテル 柚子風味のジュレ添え

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シェフのプレゼンテーション (1皿目)はこちら

身のやわらかさと甘みは早春のイメージにふさわしい海老

「ニュージーランド産スキャンピー 加工品」を使った料理の1皿目は〝「ニュージーランド産スキャンピーのムキミ」 竹の子 ホワイトアスパラガスのカクテル 柚子風味のジュレ添え〟。コース料理のスタートを飾る春の息吹を感じさせる一皿だ。

ガラスの器の一番下にホワイトアスパラガスのムース、その上に一度焼き色をしっかりつけて焼いた「スキャンピーのムキミ」を冷たくして中に入れ、その上に鶏の出汁、昆布、日本酒で炊き上げて味を染み込ませた竹の子と山菜を切ってのせる。最後に「ボイルヘッド」を香ばしく焼き、これをミルポワと一緒に鶏のブイヨンで煮詰めてとった
フォンでジュレをつくりカクテルに仕上げている。「ボイルヘッド」は味噌を掃除してあるためゼリーに透明感があり美しい。

スキャンピー独特の身のやわらかさや甘み、香りは、これこそ早春のイメージにふさわしい海老だと思わせる。

竹の子の皮から現れたグラスには、冬から春へと移り行く季節が表現されている

スキャンピーのジュレからは、黄柚子が香り冬のニュアンスを感じさせる。やがて竹の子、山菜が現れ、さらにスキャンピーの香ばしい味わいへとだんだん冬から春になっていく、季節と味わいのグラデーションが素晴らしい。

5. 「ニュージーランド産スキャンピーのムキミ」のラビオリと山栗のニョッキ トリュフ風味

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シェフのプレゼンテーション (2皿目)はこちら

次は〝「スキャンピーのムキミ」のラビオリと山栗のニョッキ トリュフ風味〟である。「スキャンピーのムキミ」を炒めた玉ねぎとベーコンにトリュフ、マデラ酒、生クリームを加えて仕上げたものと一緒に餃子の皮で巻いて軽く茹で、ソースペリグーとスキャンピーの泡のソースを添えている。そして、トリュフのラメルの下には山栗でつくったニョッキ、そしてうるいを飾る。

口に入れた途端、完全に閉じ込められていたスキャンピーの香りと旨みがバンと弾ける。スキャンピーの食感ともち粉の入った餃子の皮のプリッとした食感は、おいしさをさらに弾けさせるようだ。

6. 「ニュージーランド産スキャンピー尾付ムキテール」のヴァプール サフラン風味 ペコリーノロマーノの淡雪

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シェフのプレゼンテーション(3皿目)はこちら

尾付ムキテールが料理に映える

次は、「スキャンピー尾付ムキテール」をヴァプールした一皿だ。軽く塩をしておいた「尾付ムキテール」をバットに適切な間隔で並べ、オリーブオイルを少しふり、スチコンで1分半ヴァプールする。

じゃがいものピューレを敷き、その上にジロール茸、そら豆、そしてニンジンとポロねぎを細かく切って炒め鶏のブイヨンで炊いたものをのせ、さらに塩茹でしたそら豆にオリーブオイルと塩をしてのせる。そこにヴァプールした「尾付ムキテール」を置く。ソースはノイリー、タイム、エシャロット、マッシュルームをグッと煮詰め、アサリの出汁を入れ、もう一度煮詰めて生クリームを入れる。

ここにサフランとトマトを入れて仕上げたものを流し、フィーヌゼルブという細かく刻んだハーブを最後に上からかけている。ペコリーノロマーノの泡は淡雪に見立てた。

ソースはさらっとしているが、食べ進めるうちにじゃがいものピューレが合わさりとろりとしてくる。ヴァプールして甘みを増した「尾付ムキテール」にこれが絡み、味の濃さがさらに増す。スキャンピーのこの甘さがたまらない。料理の見た目も尾付を使うことでさらに映える。

この皿は100人のバンケット向けに、魅力あるフランス料理をよりつくりやすい調理工程で考えていただいたものだ。「尾付ムキテール」は大量調理に大いに役立つはずだ。

7. 「ニュージーランド産スキャンピーカダイフ巻き」ラ クレリエールのコンディマン

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シェフのプレゼンテーション(4皿目)はこちら

コストを下げて付加価値をつけることを考えた料理

最後に「スキャンピーカダイフ巻き」を調理していただいた。

あらかじめ数種類のスパイスやハーブを合わせたコンディマンを皿に敷いて準備しておく。

オーダーが入ったら「カダイフ巻き」を揚げて3つに切ってマリネしておいたトマトと一緒に盛り、マヨネーズ、サフラン、生クリームでつくった黄色のソースを添えてできあがりだ。「カダイフ巻き」を揚げただけで皿が完成する。さらに見た目も綺麗でお客様も引き込まれるだろう。

コンディマンはこうして準備する。皿にセルクルをおき、セルクルの中に刷毛で薄くレモンオイルを塗る。そのままセルクルを外さないで、ラ クレリエールのコンディマンの要素を順番に何層にも重ねていく。10人前ならこれを10皿用意しておいて揚げた「カダイフ巻き」を盛り付けるという段取りだ。忙しい調理場の中でこうした準備しておけるメニューがあると時間的には実に助かる。さらに、「カダイフ巻き」を1本しか使わないことに注目したい。食材のコストを下げ、どこで付加価値をつけるかを考えた料理なのだ。

こうして試作していただくと、下処理された質の良いスキャンピーが調理の現場に時間を生み出し、料理の付加価値を高めるのがよく分かる。一本一本丁寧に手作業でつくる「ニュージーランド産スキャンピー 加工品」を上手に使いたい。

〈ラ クレリエールのコンディマン〉
柿の種をフードプロセッサーで回したおかき粉、パルメザンチーズ、エルブドプロバンス、燻製パプリカパウダー、セルフィーユ、エストラゴン、アネット、セージ、バジル、パセリ、ブラックペッパー、ピンクペッパーなど


協力/お問い合わせ:株式会社大水

(2021年3月31日発行「素材のちから」第40号掲載記事)

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