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藤井風 the piano U.S. Tour at the Apollo’s Historic Theater ライブレポ(6月2日)

藤井風さんから考える興味の発生論について

僕が藤井風さんの存在を知ったのは、何年か前に関ジャムでこのアーティストがすごいみたいなコーナーで紹介されていたのを見たのがきっかけだったと思う。

その時は、記憶が正しければ「罪の香り」が紹介されていたと思うが、すごい良い曲だなと感じたのを覚えている。

そこからの人気の火の点き様はご存知の通りで、出す曲出す曲ヒットの連続。ただ、僕は藤井風さんの音楽をよく聴くものの、直接ライブに行って聴きに行こうというまでの衝動のようなものはなかった。

それは上記でも触れた通りなのだが、今考えると、人が何かに猛烈に惹かれるためには自分と対象との間に「きっかけ」「ひっかかり」「フック」が存在した状態で、何かの拍子に外部ではなく、内部発生的なエネルギーが必要なのではないだろうか。

「興味」というのは、その対象について少しでも何かを知っていることが必要であると何かの書籍で読んだことがある。この少し知っているという状態を足がかりに、何かの拍子に猛烈に惹かれるというフェーズに移るのではないかと思ったのである。

アポロシアターの場所

アポロシアターはハーレム地区にあり、タイムズスクエア付近から地下鉄で20分くらいの距離である。ハーレムというと治安が悪く近寄りがたいイメージが漠然とあったが、アポロシアター自体は大通りに面しており、これと言って危険な様子は感じられなかった。

入場列

入場〜開演まで

入場列に並ぶと、驚くほど日本人の方が多かった。僕の感覚では半分くらいは日本人だったのではないだろうか。もう半分は諸外国いろいろという感じだった。

そして、3人くらいの日本人に「この待機列は何なんですか?」と聞かれた。二手に別れていたので、どちらに並べばいいかという意図である。

日本にいてもだが、ニューヨークに来てからも、僕はアメリカ人にも日本人にもよく道を尋ねられる。全く「何なんw」だ笑

僕は「こいつなら何でも知ってそうだな〜」という顔をしているのかもしれない...

そうこうしている間に、入場が始まる。律儀にも飲料の持ち込みが禁止されており、入り口で「Take out!」と言われた。Ticketmaster を Wallet アプリに移し、そのバーコードを読み取ってもらう。スクリーンショットはダメという仕様だった。

アポロシアターのスタッフの方は、ヤル気満々でとても親切だった。席の場所を聞いたら、丁寧に教えてくれて、さすがアポロシアターだなと思った。

2階への階段に歴代アーティストの写真
バルコニーにかっこいいポスター
1階オーケストラ入口付近
1階後方から
僕の座席から

1階の後方座席でも見えやすく、2階は行ってないので不明だが、会場の大きさから考えると、どこの席でも楽しめる素晴らしい造りだった。

僕の座席はありがたいことに K 列だったので、11列目の信じられない近さだった。僕が藤井風さんを目視で認識できるほどで、表情の動きも分かった。

座席につくと、後から来た方が「そこ私の席なんですけど?」と英語で食い気味に言ってきたので、「あっ、僕が間違えたんだな〜」と思って、「Sorry~, Sorry~」と連呼していたのだが、座席を確認すると、やはり僕の席だった。相手の方を見ると、気まずかったのか何も言わず、そそくさとどこかに行ってしまった。

アポロシアターの座席は、隣同士の番号が1個ずつではなく、2個ずつズレていたので、微妙にややこしかったのもあったのだろう。

これを見ていた隣の女性が英語で「あなたの席でしたね〜」的なことを言ってくれたので、それをきっかけに喋ることができた。

隣の女性がどうもアジア系の顔つきだったので、失礼とは思いつつ「May I ask where are you from?」と質問すると、「I’m Japanese.」と返ったきた。

僕は一瞬、「???」となったが、僕も日本人であることを告げると、開演まで少しだけ喋った。どうも、アメリカで育った日本の方で、普段は英語しか話さず、日本語を現在勉強中とのことだった。勉強中といっても、もうほとんどペラペラで世界には凄い人がたくさんいるんだなーと感心した。

セットリスト

  1. Lush Life / Billy Strayhorn

  2. 調子のっちゃって

    MC

  3. Arthur's Theme(Best That You Can Do)/ Christopher Cross

  4. へでもねーよ

  5. もうええわ

  6. 帰ろう

  7. ガーデン

  8. きらり

  9. You Don't Know My Name & If I Ain't Got You / Alicia Keys

  10. damn

  11. Workin’ Hard

  12. 何なんw

    MC

  13. 満ちていく

  14. 死ぬのがいいわ

  15. まつり
    Eh, Eh / Lady Gaga

僕の感じたこと

僕が注目したのは、ピアノが「YAMAHA」だったこと。
僕はニューヨークの街中にもあったというのもあり、てっきり STEINWAY & SONS だと思っていたので、日本の「YAMAHA」だったことがまず感動してしまった。

そして、いよいよ風さんの登場。
会場からの歓声がとてつもなかった!
その空間にいるだけで、肌がゾワゾワっとする感覚が押し寄せる。

衣装は上下黒のセットアップに深紅のシャツをインナーに挿したスタイル。とんでもなく似合っていて、スタイリストさんなのか自ら選んだのか気になるところ。

そして、観衆はその指から放たれるピアノの一音目に注目するように静寂する。

ピアノが奏でられると、このアポロシアターの会場が呼応するように、音の共鳴がとてつもなくよかった。風さんのブレスの音も心地いいくらいに聞こえ、ビブラートとその後に残る余韻が日本では経験したことがない響きだった。

僕には風さん、会場、観衆が凄まじいシンクロ度で三位一体となっていたように感じる。その三位一体の程度というのは、観衆が後からどんどん呼応してきて、最後の曲になればなるほどボルテージが上がっていく。

ただ、これは誰にでもできることではない。

風さんがクラップと足踏みのリズムを促し、観衆を煽る。
そして、そのリズムをもとに風さんがピアノを弾く。
これにまた観衆が呼応する。それがどんどんどんどん大きくなっていくのだ。彼は、ピアノの鍵盤を見るのではなく、時折観衆の様子を見ながら笑顔を見せる。観衆はそれを見て、笑顔になる。

リズムが速いと見れば、観衆に「Slow down.」と促し、このスローテンポの曲がとんでもなく気持ちいいのである。

また、風さんのMCがとてつもなくいい。
時々、おちょけた様子を見せたり、会場からの「I love you, Kaze!!!」に「クゥッーー笑」と笑ったりと本当に楽しそうにしている。そんな風さんを観衆も大好きなのがひしひしと伝わってくる、いわば「愛、LOVE」そのものな空間が醸成されていった。

MCの中で、「interesting word」と説明している箇所があり、確か「何なんw」についてだったと思うのだが、風さんが「言葉」というものをとてつもなく大事にしていることを感じた。これはこのMCで感じたというわけではなく、その感覚は序盤の方から聞こえてくる歌詞からも伝わってきていた。

(ドラム、ベースというリズム隊がいない)ピアノと歌だけというシンプルな編成にも関わらず、僕はどんどん体がリズムを帯びているのを感じた。どんどんどんどん自然に体が乗ってくる。グルーヴ感が出てくる。この感覚はこの上ない悦びだった。

このピアノと歌だけに加えて、大きくない会場ということもあって、観衆の大合唱もとてもよかった。僕は「何なんw」と「まつり」の時の大合唱が好きで、その情景を思い出すきっかけにもなっていくだろうと思う。

僕が個人的にめちゃくちゃかっこいいなと思った部分は、「何なんw」の落ちサビで「裏切りのブルース...ババラババラベベレン...」のところ。ここは毎回違うのか不明だが、音源とは違う感じで、その時の感情も何重にも乗っかって風さんのエネルギーがブワァーっと溢れ出していて、僕は鳥肌が立ってしまった。もし戻れるなら、この数秒に戻りたい。

いよいよ最後の曲になり、ピアノではなくキーボードがセットされ、「まつり」を歌い出すのだが、キーボードの固定が弱かったせいか、曲の途中でキーボードが落下するトラブルが発生した。

キーボードが落下した時、一瞬会場はざわついたのだが、本当に一瞬で次の瞬間には観衆と風さんが一緒にアカペラで大合唱して曲が再開するという事態になり、これで僕の興奮も最高潮になった。みんな立ち上がり、手拍子をしたり、足踏みでリズムを取ったり、とにかく会場が一つになった。

この間スタッフがキーボードを直そうとするも時間がかかりそうだったので、キーボードを地べたに置いて、座ったまま演奏するという即興ぶり。全てが凄い公演となった。

そのまま「Eh, Eh」までその興奮は続き、一緒に合唱して終演という運びとなった。

僕が藤井風さんから学んだこと

僕は風さんを見ていて、分かったことがある。

それは

「素のままの自分をさらけ出している」
「自分自身を愛している」

ということ。(僕の決めつけかもしれないが)

僕も含めて、なかなか素の自分を出すことができず、本当の気持ちを偽って生きてしまっている人が多いのではないだろうか。

ここで言う「素」というのは、「本来の自分に回帰」という感じとは少し異なり、うまく言えないが、自分に自信がないから、皆どこか誰かに合わせて生きてしまっているのではないかという感じ。

この自信がないから、誰かに合わせてしまうというのは、土台として「自分自信を愛せていない」からではないかと感じた。言語化するのがとても難しいが、自分自信に対して「ありのままの自分でいいんだよ。」と認めてあげるというか。自分に優しくしてあげる。そんなイメージが「ガーデン」を聴いていて感じた。

僕がこれからやりたいこと

僕は風さんを見ていて、やりたいことの方向性が少し見えた。

それは

「人と人の心の共鳴」

に近いかもしれない。

「心」が共鳴する。

それは、自分が自分を愛していて、その上で相手に対しても愛し、それがお互いを行き来するような状態ではないだろうか。

ということを一人一人が実践していく。目の前の人を笑顔にしていく。
そうしていくと、僕の最終的なゴールは「世界平和」という優しい世界の実現というとてつもない大きなテーマになりそうである。

これを実現するために、僕は何ができるのだろうか。
これから見つけていきたい。

今、これを書きながら、風さんの曲を聴いているが、このライブに参加する前と後では体の感じ方全く違うものになっている。これも発見である。

Fin.

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