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【ライブレポ】 山下達郎 「PERFORMANCE 2024」 7/27(土)大阪フェスティバルホール

※本記事は完全ネタバレ含みます。

僕が達郎さんのライブに行くのは、2022年のフェニーチェ堺、23年のフェスティバルホールに続き、これが3年連続3回目となる。

齢71歳(本人は古希プラスワンと表現)になる達郎さんだが、相変わらずの人気で当選確率も低いはずなのだが、幸運なことに毎年1回はライブに行くことができている。

本記事は、僕の感じたことを中心に記録しておこうと考えている。そのため、披露された楽曲などにも触れるので、まだ知りたくないという方はご遠慮いただきたい。

ちなみに、僕は現在32歳の唯のにわかファンである。

開場

会場入りすると、まず客層がここ2年と少し違うことに気づいた。

22年23年は空前のシティポップブーム真っ盛りということもあってか、若い方もちらほら見かけた印象だったのだが、今年は40代以上のおじさんおばさんが大多数を占めていたように感じた。

そのように感じたことは的を得ていたようで、ライブ中の MC で達郎さんが「今年は何だかお客さんの雰囲気が変わった、上品だ」と言及している部分が何度かあった。初めて来たという方も例年に比べ少ないようだった。

また、フェスティバルホールのキャパシティは2700席なのだが、言わずもがなの超満員で、1つも空席を見つけられないという盛況ぶりだった。

ここで僕は会場を眺めていて、ふと思うことがあった。

それは、自分が若い時に聴いていた歌手の音楽を、歳を重ねた今でも、未だ生で聴くことができる幸せについてである。

達郎さんはシュガーベイブでデビューしてから今年で49周年で、来年50周年を迎えるという。(ちなみに、貰ったパンフレットには布施明さんが来年デビュー60周年と書かれていた...)

正直、20代前半でデビューして、約50年という途方もない長い期間活躍できるということが、僕からしたら信じられないし、その技術や魅力が未だ衰えておらず、幅広い層のお客さんが会場に足を運んでくれている状況にも驚愕である。

いい意味で化け物である(笑)

一方、現在活躍している若手の筆頭株である藤井風さんや米津玄師さんなどが、70歳を過ぎても歌い続けているかと想像しても、どうも僕にはそういう未来を描くことができない。

そう考えると、自分が年老いていくとともに、歌手側も一時活動休止や解散などの紆余曲折もあるとは思うが、再結集であったり長く活動してもらえるのは、ファンにとってはこの上ない喜びなのではないだろうか。

このように思うのは、僕が「音楽は過去に戻れるタイムマシーンの側面を持っている」と考えているからである。

当時聞いていた音楽とその周りの環境というのは、密接に脳に記憶されている。普段はすっかり忘れていたとしても、ふとその楽曲を聞けば、あの時の様子の断片を思い出し、郷愁に浸ることができる。

世界は日に日に断片化されており、賞味・消費期限が恐ろしいくらい短くなってきている。一度飽きられてしまうと、二度と戻ってきてもらえない可能性すらもある。

そういう世の中で、時代に逆行する形で「長さ」という価値が重要なのではないかと僕は感じている。

LIVE

開演前 BGM

開演前の BGM はドゥーワップを選曲しているとのことで、曲名こそ不明だがお洒落な雰囲気だった。

マニアは開演前の楽曲を調査しているらしく、「何曲か分からない曲がある」とラジオに送ってくるそうで、一時期いじわるして身元不明な楽曲も流したことがあるそうだが、曲が綺麗じゃないという理由でやめたそうである。

舞台セット

舞台セットのテーマは、ニューヨークの街並みのような印象だった。背景にはニューヨークを彷彿とさせるビル街と公園を思わせるフェンスと街灯が映し出されており、手前には BAR や CAFE、CLUB の模型が実設営されていた。また、DIGINN という看板であったり、Upper Gate という標識など細部までこだわっている様子が感じられた。

出演者

出演者は山下達郎、伊藤広規(Bass)、難波弘之(Pianoforte)、柴田俊文(Keyboard)、鳥山雄司(Guitar)、宮里陽太(Sax)、小笠原拓海(Drums)、ハルナ(Chorus)、ENA(Chorus)、三谷泰弘(Chorus)の計10名と豪華。

印象に残った楽曲

1曲目はやはり SPARKLE である。
暗闇から現れる達郎さんにスポットライトが当たる。
この日のシャツの色はスカイブルーのようだった。

そして、ギターのカッティングが始まる。
もう誰もが SPARKLE で始まるのが分かっていて、素人も玄人もこれを聴かないと来た甲斐がないくらいの楽曲になっている。

まだ雰囲気に馴染めていない客層でさえも、この曲が流れてしまえば、一気に大歓声と拍手がドワァっと湧き上がる。

2曲目は LOVE’S ON FIRE である。何気に生で聴くのが初めてでテンションが上がったのを覚えている。シンセサイザーで始まる楽曲だが、とにかくシンセのリフがめちゃくちゃ良かった。ずっと背後で主張してくる感じ。あと、MV の河合優実さんを思い出した。

4〜6曲目は夏の曲3連発と題したセットリストである。昔は夏といえば、山下達郎だと言われたと MC でも語っていた。

僕は特に Sync Of Summer がとても良かった。これは初めての感覚かもしれないが、僕は夏が好きかもしれないと思わされた。4〜6曲目を聞いていて、蒸し暑さの中にも言葉では表せないどこか甘酸っぱさがあるように感じた。

帰宅してから、Sync Of Summer の MV を見返すと、去年リリースされた時に観たものと自身の感じ方が違うことに気づいた。

「海」「男女の恋物語」「月日の流れ」「切なさ」などがテーマとしてるのかなと感じたが、まさに僕が今感じていることに近いことが全て詰まっているような気がした。

おそらく、僕が今後間違いなく後悔するだろうことは、これまで恋愛をほとんどしてこなかったことになるだろうと思う。そういう現実を突きつけられた。

日本には四季がある。春夏秋冬。季節ごとに何かしらのイメージが定着しているが、4つの季節が移ろいながら、人々の感情も変化していく風流さというか豊さというか、そういうものが日本の素晴らしいところなんだと気づかされた。

昔の歌人がどうして季語というものを入れるのか、ようやく理解できたような気がする。

7曲目の Paper Doll は、この日一番良かった楽曲かもしれない。楽曲自体落ち着いているムーディーな曲調なので、各楽器の技術の高さが分かりやすい。BPM も遅い上、グルーヴィーなので、めちゃくちゃ気持ちいい。

僕は特に、小笠原拓海さんのドラムに目を奪われてしまった。何だか分からないが、ベースの伊藤広規さんも然り、リズムの正確さが凄い。普段、ドラムが気になることはあまりないのだが、言葉には表せない何か魅力がそこにはあった。

おそらく、音楽とはリズムや音程の正確性が基礎としてある上に、そこを基点とした強弱、高低、アレンジなどの崩し(≒遊び)が入ることで成り立っているのではないか。つまり、基点を把握しているからこそ、ズレることができ、そしてまた戻ってこれるという凄みのようなものを感じた。

14曲目のさよなら夏の日は、再び夏に帰ってきたような感じを受けたが、途中お客さん自作の「山下達郎うちわ」に気づいた達郎さんが、それを客席から受け取り、終始煽ぎながら歌唱する場面があった。何気ない場面だったが、会場は何かほっこりとした優しい雰囲気に包まれた。

15曲目のメリー・ゴー・ラウンドは、Paper Doll とともにこの日一番良かった曲だった。僕は昔ベースを少しだけかじったことがあるのだが、メリー・ゴー・ラウンドはよく練習していた曲だった。そのため、この曲のベースラインはある程度把握している。

このメリー・ゴー・ラウンドは、何と言っても伊藤広規さんのベースがめちゃくちゃかっこいい。言い換えると、この曲はベースが肝な曲なのである。ベース曲である。

伊藤さんのベースはサムとプルのアタック音が強く、歪んだ音が出る。それは決して後ろで控えることなく、ちゃんと主張がある。かといって、強すぎるわけでもなく、その塩梅が丁度いいところで抑えられているのがいいなと思うポイントである。

Paper Doll が「静」とするならば、メリー・ゴー・ラウンドは「動」の曲である。同じグルーヴィーでもタイプが異なり、こちらは威勢よく体が乗ってくる感じ。立ったまま聴けなかったのが残念ではあったが、着席でもめちゃくちゃノリノリになった。

21曲目の Ride On Time は毎度お馴染みではあるが、達郎さんのマイクなしの発声がとてつもない。71歳のおじいちゃんが腹からあれだけ大きい声を出せるとは到底信じられない。発声できる ≒ 健康 という因果関係を勝手に見出した。

また、フェスティバルホールは音の響きがとても心地良い。ちなみに、本公演でフェスティバルホールは通算94公演目だそうで、今年は後4回あるので、来年100回公演に到達するらしい。

22曲目の恋のブギ・ウギ・トレインは、昨年に続き2年連続だったが、途中の達郎さんのカッティングは永遠に聴いてられる。この時間があまりに長いので、伊藤さんのベース(8分と16分2連のリズムが続く)がとてつもなくしんどそうなのだが、飄々と弾いてしまうのが毎度感心してしまう。

後から思い返せば、9曲目のシャンプーも良かったなとかいくらでも書けるのだが、この辺りでやめておく。

果たして、来年は観に行けるのだろうか。

セットリスト

1:SPARKLE
2:LOVE'S ON FIRE
3:人力飛行機
4:夏への扉
5:僕らの夏の夢
6:Sync Of Summer
7:Paper Doll
8:ポケット・ミュージック
9:シャンプー
10:ONLY WITH YOU
11:I LOVE YOU
12:クリスマス・イブ
13:蒼氓
14:さよなら夏の日
15:メリー・ゴー・ラウンド
16:今日はなんだか(SUGAR BABE)

メドレー
17:LET'S DANCE BABY
18:THE THEME FROM BIG WAVE
19:アトムの子

アンコール
20:パレード
21:Ride On Time
22:恋のブギ・ウギ・トレイン
23:YOUR EYES

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